地域と歩む|信州大学地域戦略センター
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地域に深く根差す食品加工業や、地元農業の柱をなすキノコ栽培から生まれる食品残さや廃培地も多い。こうした長野地域ならではの地域資源を、バイオマス資源として利活用する点が大きな特徴だ。その利用方法やシステムづくりに信州大学の研究シーズが活かされてきたのだ。このように地域特性のある資源を利活用することは、同時に、地域に新たな産業と雇用を生み出すことにつながり、中山間地の活性化への貢献度も高い。長野市は、広域合併を通じて、山間部にある旧町村部を広く持つ広大な市域に広がった。この山間部集落の活性化の視点からもバイオマス事業が位置付けられ、推進されているのである。「長野市には、非常に熱心にバイオマス資源の利活用を進めていただき、現在は『バイオマスタウン構想』をまとめるにまで至りました。これからはこれをもとにして、さらに民間企業の積極的な参加の輪を広げていくことが課題です。継続可能な民間の事業として確立していくことが重要なポイントになると思います」と天野教授。間伐材やキノコ廃培地を使ったペレット事業は技術的にほぼ確立することができたが、ボイラーの設置台数を増やし、使用量を増大させることが事業化の課題となっている。食品残さからのメタンガス利用や、廃食用油利用のバイオディーゼル燃料の製造は、技術的な研究課題も多いという。さらに、木質バイオマス資源から、直接、液状燃料をとり出すシステム開発もさらに研究を加えるべき工学上のテーマとしてある。「それらを進めるためには、今まで以上に強力な産学官の連携と、いっそう広範な市民の協力が必要だと思います。これからも長野市はじめ地域の皆さんと力を合わせてがんばって行きたいと思います」。天野教授は力を込めた。連携広げ、民間参入の拡大へ─〝バイオマスタウン〟に向けた課題現在、キノコの廃培地を使ったペレットと、長野森林組合と協力した間伐材利用のペレットを製造しています。製造過程で出る熱を、工場に隣接する高齢者賃貸住宅「よかろう園」の給湯設備に利用したりもしています。以前よりキノコの栽培用培地を製造・販売する仕事をしてきましたが、使い終わった培地をどのように処分するかが大きな課題でした。天野先生とはキノコ培地に関する研究で知り合い、その後、協力してバイオマス利用の研究を進めてもらいました。キノコ培地だけでは十分なエネルギー効果が出ないので、間伐材などとどのくらいの配合率で混ぜるのか?まぁ、いやになるほど試験を重ねてきましたね。地域農業と共に生きるバイオ産業㈱イトウ精麦 中村通好工場長兼任 地域共同研究センター センター長工学博士1982年 信州大学工学部卒業1984年 信州大学大学院工学研究科 修了バイオマス利活用(BMU)研究会会長、長野市バイオマスタウン構想推進協議会会長など、信大と長野市・地域社会との連携のキーマンとして活躍する。キノコ廃培地から木質ペレットを製造するための炭化熱利用乾燥プラントの一部=自熱式炭化装置。左が(株)イトウ精麦の中村工場長、右は天野教授製造されたキノコ廃培地利用のペレット。配合率がカギを握ったという。燃え上がるペレットボイラーの炎。食品残さや間伐材をエネルギー源に、地域循環型社会を。保科温泉に利用されているペレットボイラーの炉の状況がわかる窓 間伐材や建設廃材などをチップにして利用している長野森林資源利用事業共同組合の 「いいづなお山の発電所」天野 良彦 教授あまのよしひこ信州大学工学部物質工学科512012.05.31 掲載

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