地域と歩む|信州大学地域戦略センター
44/76

発電した電力は上流部に設置されたパワーコンディショナで100Vに変換され、水路沿いに設置・埋設された電線を通じて公衆トイレに供給される。竣工セレモニーでは信州大学の三浦義正理事が、「設置することが目的ではなく、社会実装にむけたモデルケースづくりが重要」と挨拶。信州大学RISTEX研究プロジェクト社会技術イノベーション政策のための科学研究開発プログラム水資源の保全・活用に新たな一歩(文・奥田 悠史)水資源の保全・活用に新たな一歩栄村秋山郷で小水力発電システム稼働開始近年、水の資源としての価値が見直され、その保全と有効な活用方法の確立に注目が集まっている。信州大学でも、信州の豊富な水をエネルギー資源として利活用する研究を長年進めてきた。しかし、こうした技術を地域社会の中で実際に活用・運用していくためには、水利権を始めとする社会制度や法的面の問題を整理し、解決の方法を提示する必要もある。地域住民の意思形成や合意をいかに取り付けるかなども考察すべき課題だ。また、実際の運用のためには、小水力発電の技術面においても継続的なブラッシュアップが必要だ。自然環境の中で実際に長期運用することで生じる様々な問題を具体的に解決していくことで、発電装置はより実用的なものになる。例えば、栄村は日本有数の豪雪地帯であり、冬場の積雪が発電システムに及ぼす影響などを調べることが重要な研究テーマになる。このような、実際に運用する際に生じる社会的また技術的な課題・問題を、文理融合の多角的な視点から包括的に検証し、解決の道を探ることが、〝実装実験〟を掲げる同プロジェクトの重要なテーマである。湧き水を利用した小水力発電システムの竣工セレモニーが10月18日、長野県北部地震の被災地・下水内郡栄村で開催された。同村の島田茂樹村長や信州大学の三浦義正理事ら関係者約40人が同システムの稼働開始を祝った。この小水力発電システムは、栄村小赤沢地区に設置され、学問領域を超える文理融合でスタートした「信州大学RISTEX研究プロジェクト」が中心になり管理運営、研究を進める。同プロジェクトは、水資源の保全とエネルギー源としての利活用、さらに総合的な水利マネジメントや新しい制度化などの社会システムを形成することを目的としており、地表水の活用のモデル地区として栄村が選ばれた。地下の水は安曇野市をフィールドとして研究が進められる。安曇野市に先行して、栄村での実証実験が始まった。小水力発電の社会実装のモデル作りへ44信大NOW No.84plus+信州大plus+地域と歩む。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です