地域と歩む|信州大学地域戦略センター
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「環境に負荷が少ない、環境調和型ナノ水車の開発が重要。流れに置くだけで発電が可能で安価なものが必要だ」と池田名誉教授・研究特任教授は話す。日本の技術的・経済的に開発が可能な水力資源(包蔵水力)のうち未利用の部分が約50%もある。この50%を活用することが出来れば、約2億世帯分の電力が賄える。長野県は北海道、岐阜県に続き3番目の未開発包蔵水力を持っており、460万人分ものポテンシャルになるという調査結果がでているそうだ。しかもこの調査では10kwW未満の小規模水力エネルギーは対象とされておらず、「農業用水路などの利用でポテンシャルはさらに広がる」と池田教授は話す。現在、信大では、サボニウス水車、滝用水車、ジェット水車、せき水車の4種類の水車の実証実験、実用化を行なっているが、「色々な河川で用途に応じた水車を用いた多数の実証実験が重要。実証実験と基礎実験を踏まえて、発電システムの最適化を目指すことやコスト削減が課題」と展望を語った。「日本は、地中熱ヒートポンプの普及が遅れている」と藤縄教授は話す。地中熱ヒートポンプとは、地下水を汲み上げ、地上で熱交換し、冷暖房に使用する熱エネルギーを取り出すシステムだ。熱交換した地下水は、再び地下に戻す。地下水というのは、経年を通して、温度の変化が少ないため、地下熱を利用することで、エネルギーの消費を大幅に抑える事が出来るのだ。信大では、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構からの委託事業として、地下水制御型高効率ヒートポンプ空調システムの実証試験を行なっている。「従来システムよりも高効率性を目指し、地下水の有効活用に繋げたい」と藤縄教授は語る。松本盆地には約100億㎥もの地下水があると言われている。しかし、この資源を使い続けていくばかりだ。そのため、強化しながら活用することが重要だ。安曇野市では、遊水池の設置や水田活用などの取り組みを行なっている。保全と活用の両輪を上手く回していく事がキーになりそうだ。伝統的な考え方では、河川は「公水」、地下水は「私水」とされている。この考え方に基づけば、地下水に規制を加える場合には慎重な検討が必要となる。「地下水や水資源活用のイノベーションを進めていても、法の壁にぶつかってしまっては、元も子もない。法律の部分も理解して進める必要がある」と大江講師。今後は、地下水の区分や法制度について考えていくことが重要になっていく。ただし、地方自治体が独自の規制を加えようとしても、国の法令との関係によっては、条例を制定することができない場合もあり、行政指導という形で協力を求めることにも一定の限界がある。また、河川や地下水は、市町村で区切られてはいない。そのため、地方自治体同士も連携していかなければこの問題を解決することは出来ない。「国と地方自治体が連携し、この問題に取り組み、水についての現行法制を考え直すことが大切」と連携の重要性を語った。■開会挨拶  ○信州大学 山沢 清人 学長  ○JST社会技術研究センター プログラムアドバイザー・成城大学社会 イノベーション学部 伊地知 寛博 教授 ■基調講演 「地域のグリーンイノベーションと 水資源利用」○龍谷大学政策学部 堀尾 正靱 教授 ■パネルディスカッション【コーディネーター】○信州大学人文学部 村山 研一 教授・JST-RISTEX採択プロ グラム研究代表者セッション①【テーマ】信州型水利用イノベーションに向けて○信州大学 池田 敏彦 名誉教授・研究特任教授○信州大学工学部 藤縄 克之 教授 ○信州大学経済学部 大江 裕幸 講師【コメンテーター】○東京電力(株) 電力流通本部 工務部 水力発電技術担当・建設部 電源担当 稲垣 守人 部長○信州大学工学部 地域共同研究センター 天野 良彦 教授・センター長○成城大学社会イノベーション学部 伊地知 寛博 教授シンポジウムプログラム信州大学 池田 敏彦 名誉教授・研究特任教授エコ水車の開発と普及地下水制御空調システム水利に関する行政制度・法制度信州大学工学部藤縄 克之 教授信州大学経済学部大江 裕幸 講師パネルディスカッションの様子の検討セッション②【テーマ】地域の水利用・保全と制度課題○長野県環境部温暖化対策課 新エネルギー推進係長 室賀 荘一郎 氏○安曇野市市民環境部生活環境課長補佐 塚田 康春 氏 ○駒ヶ根市建設部環境課 環境保全係長 吉澤 一義 氏 【コメンテーター】○龍谷大学政策学部 堀尾 正靱 教授○国土交通省 水管理・国土保全局 水政課 水利調整室 麓 裕樹 室長■閉会挨拶 ○信州大学 三浦 義正 理事・副学長シンポジウム開催シンポジウム開催主催:信州大学共催:(独)科学技術振興機構[JST]後援:環境省、国土交通省、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構[NEDO]、長野県、安曇野市、栄村、駒ヶ根市 他セッション①「信州型水利用イノベーションに向けて」の詳細43シンポジウム開催シンポジウム開催主催:信州大学20133.4

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