地域と歩む|信州大学地域戦略センター
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今春、信州大学と伊那市は共同で、ヤマブドウワインの試飲会を開催する。原料のヤマブドウは、「信大W-3」という名称で種苗登録申請中(平成22年末に申請)。連携協定に基づき伊那市から研究費支援を得て、信大が育てた品種だ。現在は農学部の農場の他、伊那市でワイン用ヤマブドウを栽培する3軒の農家だけが栽培している(ただし、試験用として他市町村でも少量栽培している)。このヤマブドウをワインに醸造するのは今回が初めて。農学部OGも勤めるワイナリーに委託し、昨秋仕込んだ。今は、樽が開けられるのを待つばかりだ。「信大W-3」を育て、ヤマブドウプロ新たな特産品づくりワイン用ヤマブドウの新品種を登録信大W-3の果実。農学部の農場で植栽されていた「五一アムレンシスⅡ系」(チョウセンヤマブドウ系)の自然交雑種子から育成・選抜。有名なワイン用ヤマブドウ=「ヤマソービニオン」(ニホンヤマブドウが交配親)に比べ機能性、実用レベルの品質特性が優れる。信大発の飲食物=〝おいしい信大〟の目玉商品。農学部構内のステーション(農場)で育てたヤマブドウを10月に学生が実習で収穫し、塩尻市の五一ワイン(㈱林農園)で醸造した。こちらの品種は、五一アムレンシス。昨年の12月14日から農学部直売所などで販売されている。ジェクトを先頭で進めてきた農学部アルプス圏フィールド科学研究センターの春日重光教授は、「この品種は酸の抜けが非常に速いので、フルーティーな美味しいワインができるのでないかと期待しています」と笑顔で話す。ワイン用ヤマブドウを栽培する3軒の農家は、皆、遊休農地を活用した新たな作物栽培の道を探ってきた人たち。自宅近くの農地の耕作が放棄され、次第に荒地と化していくことに心を痛めてきた。春日教授が取りまとめ役を務めるヤマブドウ研究会の会員だ。この共同プロジェクトの始まりは平成18年。遊休農地の拡大を食い止めるために、特産品としてヤマブドウワインを作り出すことを目指してスタートした。地球温暖化の影響で、ブドウの栽培適地が山梨県から長野県に移ってきているという事情もあった。最初は栽培適地の選定とヤマブドウの機能性の研究。ヤマブドウには一般のブドウより、体に良い働きをするといわれるポリフェノールが多く含まれることに注目した。次はワイン用ヤマブドウの調査研究。ヤマ中山間地の農業が抱える様々な問題を実践的に解決する道を探ることも、伊那市と信州大学の連携事業の大きなテーマだ。遊休農地の有効活用を目指すヤマブドウの栽培、山間集落の農業による活性化のためのアマランサスやその他雑穀の栽培普及と商品化、深刻な被害をもたらしているニホンジカなどの鳥獣害対策などを共同で進めている。(文・毛賀澤明宏)ブドウのどの系統が栽培に適し、ワインに向いているかを調べつくした。そして、その粘り強い研究の上に3年ほど前から、新品種「信大W-3」の実用レベルでの栽培に着手した。平成21年には、ヤマブドウワインづくりの機運醸成の意味も込めて、農学部で「ヤマブドウを活用した地域おこしのための農商工連携人材育遊休農地の有効活用を目指して中山間地の農業の発展を目指して─参26伊那市と進める里地・里山キャンパスづくり信大NOW No.73地域と歩む。

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