地域と歩む|信州大学地域戦略センター
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「水の里の旅コンテスト」で大賞に輝いたプランは、3,000メートル級の山々が連なる大町市を舞台に、「水」をストーリーの軸にして、地域の豊かな資源に関連性を持たせ、大町・北安曇地域の全体を楽しんでもらうことを狙ったものだ。従来から、「大町の水の豊かさ」に触れる観光ガイドブックなどもないわけではなかった。だが、「水」をキーワードにして、黒部ダムから豊かな森林や美しい湖、心和む温泉、さらには人々の生活が息づく街並みや産業・食にまで総合的に視点を広げたことが一つの特徴。立山黒部アルペンルートや大町温泉郷など一つずつを取り出せば、それぞれ素晴らしいポテンシャルのある資源が多い大町市だが、それに比して「大町市」の認知度・知名度は相対的に高くなく、誘客の機会喪失や非効率につながっていた。これを、「地域を売る」「地域を消費してもらう」という「地域ブランドづくり」の視点から打開しようと考えた。もう一つの特徴は、水文化や旅行に馴染みが薄く、関心があまり高くない「若者」をターゲットにしていること。「水文化」「山岳」と言えば、とかく「視察」「体験」が前面に出た堅苦しいイメージのものになりがちだが、その点を、大学生の若い感性を活かし、「ファッション」を切り口にして受け入れられやすいものにした。「山歩き」を「山のファッション」とともに楽しむ「山ガール」ブームの根底にある発想だ。「地域資源の活用を技術的アプローチではなく社会科学的なアプローチから考えてみました。そこに若者の感性を活かし、新たな層を惹きつける方法を生み出そうとしたのです」とプロジェクトの担当教員である林靖人研究員は話す。“点”から“面”へ̶個別資源の消費から地域の消費へ「ファッション」通じて旅・水文化へ─ターゲットは若者層─「めぐるり! 信州大町うるおいの2日間」のコース信州大学―大町市地域ブランド共同研究プロジェクト担当教員。産学官連携推進本部研究員。人文学部文化情報論講座非常勤講師。プランを作成した学生たちは8月22日、そのコースを自分たちで楽しむ「セルフモニターツアー」を実施した。特別天然記念物のカモシカやライチョウも、大町市と信大の共同の研究テーマの一つだ (写真:大町市提供)地域と歩む。信州大学其の弐めぐるり 水の旅 地域ブランドを 若者の目で林 靖人(はやし やすと)黒部ダム(写真:大町市提供)セルフモニターツアー※「めぐるり」とは、「めぐる」と「ぐるり」を掛け合わせた造語です。※ 昼 :「黒部ダム」カレーで腹ごしらえ午後:アルペンルート入り・黒部ダムで「水の旅の始まり」を実感夕方:大町温泉郷で「もう一つの水の里」を満喫 夜 :ログハウスに泊まり仲間とワイワイ午前:山ガール/山ボーイファッションに身を包み、   仁科三湖周辺でトレッキング 昼 :街を流れる「湧水」と人々の暮らし・食を訪問午後:香水工場を訪ね「水を活用する」喜びを知る1日目2日目写真:上から、黒部ダムカレー、「山ガール」「山ボーイ」のファッションに身を包んでアルペンルート入り、黒部ダムの見学、街中の湧水を利用した施設や香水工場の見学。172011.09.30 掲載

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