地域と歩む|信州大学地域戦略センター
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信州大学がリポジトリの登録を始めたのは昨年の秋。それから1年も経たずに、1,640件もの遺跡発掘調査資料を公開するなど、他と比べても著しい成果をあげている。それは長野県が八幡一郎氏*、藤森栄一氏*ら傑出した考古学の研究者を輩出していること、また14,600ヶ所という多くの遺跡、そして特筆されるべき貴重な調査報告が、その基盤としてあったからではないだろうか。遺跡の中でも八ヶ岳西南麓の遺跡群は圧倒的だ。「縄文王国」と呼ばれるほど遺跡が集中しており、この時代、日本列島で最も栄えていたといわれている。ここからは、国宝で最も古い「縄文のビーナス」(棚畑遺跡)や、重要文化財の「仮面のビーナス」(中ッ原遺跡)など、美しい縄文土器や石器がたくさん出土している。これらの縄文のムラの遺跡は、黒曜石土の中に埋もれていた古代の品々や遺構は、私たちに何を語ってくれるのだろう。遺跡発掘調査の報告書を収録した「遺跡資料リポジトリ」は、インターネット上で公開されている電子書庫。信州大学附属図書館は、全国の「遺跡資料リポジトリ・プロジェクト」(国立情報学研究所の最先端学術情報基盤整備委託事業)に参加し、長野県におよそ3000冊ある発掘調査報告書のうち1640冊を登録し、公開中だ。遺跡資料は格段に利用しやすくなった。文:中山 万美子長野県は埋蔵文化財の豊富なところ八ヶ岳西南麓は、列島で最も栄えた「縄文王国」だった。千田遺跡調査風景(長野県中野市)ホームページ:http://rar.nagano.nii.ac.jp/連絡先E-Mail:library-soar2@shinshu-u.ac.jp八ヶ岳西南麓の遺跡群(参考:長野県富士見町井戸尻考古館作成図)●中越●雨堀●俎原●尖石●中ッ原棚畑●阿久●曽利●金生●寺所第2●藤内●●安道寺●釈迦堂●桂野●上の平●井戸尻●酒呑場●前尾根八ヶ岳須玉川釜天竜川無川笛吹川●平出梨久保●諏訪湖殿村●熊久保●花上寺●荒神山●●甲ッ原千田遺跡縄文土器◎行動する、信州大学附属図書館の地域貢献~古代の暮らしからメッセージを見つける~~古代の暮らしからメッセージを見つける~「長野県遺跡資料リポジトリ」登録件数1640件*八幡一郎:1902~1987年。東京国立博物館考古課長、東京教育大教授、上智大教授、日本考古学協会委員長を務めた。登呂遺跡の発掘指導など。 藤森栄一:1911~1973年。在野で多彩な著述を通し、考古学の魅力を一般に広めることに貢献。長野県考古学会会長を務めた。14信大NOW No.71plus+plus+地域と歩む。

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