地域と歩む|信州大学地域戦略センター
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飯山市と信州大学の歩み信大は地域の応援団 ── 飯山市の人々は語る1999年 ・飯山市教育委員会からの要請で笹本教授  が文化アドバイザーとなる。 ・小菅地区の文化財について多角的な研究  活動が推進される。2003年 ・小菅総合調査開始(~2004年)2004年 ・信州大学と飯山市は地域連携協定を締  結する(8月) ・「飯山市小菅総合研究シンポジウム」開催  し(9月)、小菅総合調査の成果を発表する。  翌年、信州大学・飯山市小菅研究グルー  プ編「小菅総合研究シンポジウム 飯山  小菅の地域文化」(しなのき書房)刊行2006年 ・小菅ならびに北信濃の柱松行事について  の調査実施(2007年まで) ・飯山研究集会「文化遺産と森 そしてコミュ  ニティ~自然・文化・歴史から、見つめ直そ  うふるさとを~」開催2008年 ・柱松柴灯神事の公的な報告書「小菅の柱  松」を作成・刊行 ・信州大学土本研究室編『飯山の祭り屋  台』(飯山市教育員会)刊行2009年 ・信州大学土本研究室編『飯山市民課調  査報告書1 大川のくらしとすまい』  (飯山市教育委員会)刊行*以降、毎年3  月に民家調査報告書を刊行 ・「里山シンポジウム2009柄山」開催。 翌  年、土本俊和監修、信州大学山岳科学総  合研究所編『山と建築Vol.2 里山の再生  とその未来』(信州大学工学部建築学科土  本研究室)刊行2011年 ・1月21日文化審議会による答申柱松柴灯  神事(行事)は、国の「重要無形民俗文化  財」として指定される◎現在も、歴史、景観、建築、森林等々の調査活動は 継続されている。私は平成11年6月に飯山市より小菅集落立て直しのため文化アドバイザーになるように求められ、7月6日に初めて小菅を訪れました。それ以来、小菅が私の心のふるさとです。私が小菅に惹かれるのは、素晴らしい住民がいるからです。小菅は景観の美しい集落ですが、それは心美しい人々の営みから形成されています。小菅の人たちは伝統を守り、小菅神社への敬虔の念を維持し、肩を寄せ合って生きています。そこには、私たちが忘れてはいけない大事なものがいっぱい詰まっています。教師として大事なことの一つに、研究フィールドを学生に提供することがありますが、小菅の人たちと交わって、ここを第二のふるさとのように思う卒業生も沢山います。人の生き方を、人の豊かさを、そして厳しさを、学生たちの両親のように見守りながら教えてくれる住民がいる限り、私はこの地に通い続けます。小菅の魅力飯山市には、「柱松行事」の他にも素晴らしい文化遺産があります。その調査・保護といっても、小さな自治体では無理があります。そこに信大に入っていただき、誠心誠意やっていただけたことで、とてもよい関係が生まれたと思います。笹本先生が、市内をよく歩かれて、文化の大切さを説いていただき、先生を知らない人はいないという感じになっています。飯山をフィールドにして、煤まみれになって調査活動をしていた梅干野さん※が、それで博士論文を書き、今では助教になっていることを考えると、蓄積ということは地域にとっても大学にとっても大切なことだと思います。信大には、県外出身の方も教員や学生として集まっていると思いますが、やはり、信州を選び、そこに住んでいるという共通の基盤があります。風土を理解した上で調査・研究に当たられているという点が、信大の強みであり、そのおかげで地域も元気になり守られている気がします。蒲原 義則さん元柱松保存会会長(1998年~2007年)望月 静雄さん飯山市教育委員会課長補佐兼文化振興係長小菅でゼミ生の勉強会仏像等の調査小菅集落はかつて多い時には100戸を超える世帯がありましたが、現在では59戸に減少してしまいました。「柱松行事」だけでなく仁王門をはじめ有形文化財もたくさんあるのですが、少子高齢化の中でどうやって守っていったら良いのか、大きな悩みを抱えていたのです。笹本先生が文化アドバイザーとしてはじめて小菅にお見えになった時、恥ずかしい話ですが、「先生、どのくらいお金を持ってきてくれるんだい?」という質問が飛び出した位です。この時、笹本先生は、「私は文化的なアドバイスはできてもお金を持ってくることはできません」とおっしゃって口論のようになりました。今から思うと、あの一件があって、腹を割って話せるようになった気がします。学生さんとも、最初は「学生に何ができるのか」と冷ややかに見ている面もありましたが、継続的に何回も足を運んでくれるうちに、すっかり地域に溶け込んで、当たり前のようにわが家の茶の間にいたりするようになった。そういう学生さんとは建物調査などはほとんど一緒に行きましたよ。小菅集落・飯山市を元気にしてくれたように思います。人文学部教授・副学長笹本 正治小菅全景※梅干野成央:ほやのしげお。工学部助教(建築学科)地域研究は地域を守る教員・学生との深いつながり132011.03.25 掲載

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