地域と歩む|信州大学地域戦略センター
11/76

飯山市瑞穂地区の小菅集落に伝わる「柱松行事」が2011年1月、文化庁により国の重要無形民俗文化財に指定された。今回の新規指定は6件、全国で合計272件の貴重な生きた文化財だ。飯山市と信州大学とが共同で行う地域の調査・研究は多領域にわたるが、特に、今回の「柱松行事」の重要無形文化財指定は、これまでの10余年にわたる連携・共同の一つの大きな成果と言えよう。「柱松行事」は、小菅集落では「柱松柴灯神事」と呼ばれ、現在では3年に1回、7月に行われる天下太平・五穀豊穣を祈願する行事である。集落の中心部に上(かみ)・下(しも)の2本の柱松を立て、その頂部にさした尾花(=ススキの穂)に、火を付け・集落の上部にある休石に運ぶ早さを競い合う。火を付け運ぶのは、前の晩から小菅神社奥社にお籠りをした松神子(まつご)と若衆で、上が勝つと天下太平、下が勝つと五穀豊穣になるという。松神子と若衆で競い合う点、また、天下泰平・五穀豊穣を祈願する性格がある点に地域的特徴がある。中世に根を持ち、近世から村人によって支えられ、大きな変化を遂げることもなく現代まで受け継がれており、北信の他の地域はじめ全国各地で行われている「柱松行事」の分布や性格を考える上で重要な位置を占めている。地域貢献、地域連携というと、とかく先端技術開発とそれを通じた新産業育成などがイメージされがちだが、信州大学では、この小菅の「柱松行事」のような山間地域の伝統行事や、景観・建物、民俗の領域でも、地域と共に調査・研究を進め、地域振興に貢献することを目指している。今年1月、小菅の柱松行事は国の重要無形文化財に指定された祭りの1週間前に柱をつくる。山から刈り出したナラやブナ、カエデなど広葉樹の枝(ソダ)を心棒に巻きつけ、皆でロープを引いてまとめる柱は小菅神社里宮の講堂前の祭式場に立てられる。こす げはしらま つこす げ地域と歩む。信州大学其の壱はしらまつさいとうしんじ112011.03.25 掲載

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です