農学部研究紹介2014|信州大学
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⾷品機能学研究室研究から広がる未来大谷元教授1972年信州大学大学院農学研究科修了後、製薬会社勤務を経て、1976年2月から信州大学農学部教員。多年、牛乳タンパク質を始めとした食品成分の免疫調節機能に関する研究においてよく努め、斯界の発展に寄与したことにより、平成20年秋、紫綬褒章受章。無菌状態から病原菌の多い世界に免疫系が未熟な状態で誕生する新生児にとって、母乳は唯一の食物であり、多種多様な生体防御物質を含んでいます。本研究室では、牛乳を中心にした各種動物の乳がマウスやウサギの免疫系に及ぼす影響について長年研究を行い、顕著な成果を得てきました。最近では、母乳だけではなく、乳酸菌、コメおよびダイズタンパク質、キノコ、果物など様々な食品の免疫系に及ぼす影響の解明に取り組んでいます。得られた成果は、基礎学術分野では学会賞や褒賞として高く評価されると共に、産業分野では特許として評価されています。併せて、それらの成果に着目した企業との共同研究により様々な商品が開発されています。⾷品成分が免疫系に及ぼす影響を動物実験で解明し、企業と共に⽣体防御⾷・飼料を研究開発する当研究室では免疫科学的手法により、食品アレルギーの予防、免疫増強食・飼料の開発、アレルギー予防食品やペットフードの開発に向けた基礎研究を行い、その成果に基づき、企業との共同研究により、人類の健康に寄与する製品開発を行ってきました。当研究室がドイツの学術誌に1991年に公表した牛乳アレルギー予防育児用調製乳のアイデアは、25年後の現在でも用いられています。卒業後の未来像卒業論文や修士・博士学位論文の作成のための実験や勉学を通して、有効成分の分離・精製方法や免疫科学的実験法が身につきます。また、自ら立案し、教員や先輩・同輩たちとのディスカッションをしながら試行錯誤を重ねることにより、研究を進める力を養うことが出来ます。卒業後は食品会社、製薬会社、飼料会社等で活躍出来る人材になります。大谷教授が受賞(章)した学会賞・褒賞等1981年度日本畜産学会研究奨励賞牛乳βーラクトグロブリンの抗原性に関する研究1987年度日本畜産学会賞牛乳蛋白質の抗原性に関する研究2005年度日本酪農科学会賞ミルクたんぱく質およびその部分ペプチドの免疫調節機能に関する研究2008年度日本農学賞、2008年度読売農学賞牛乳たんぱく質の免疫調節機能の探索と利用技術の開発2009年度Animal Science Journal Excellent Paper Award2010年度紫綬褒章:多年学術の分野においてよく努め、斯界の発展に寄与2012年度日本畜産学会功労賞牛乳タンパク質の免疫学的研究の推進と後進の育成研究成果に基づき開発された商品例牛乳アレルギー予防用育児用調製乳(1994年)皮膚炎予防用ペットフード(2014年)過去3年間の取得特許5件:特許第4921499号、第4942831号、第5361132号、第5386696号および第5413760号機能性⾷料開発学専攻⾷料機能開発学分野機能分⼦化学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像真壁秀文教授日本学術振興会海外特別研究員を経て1999年6月より信州大学農学部。顕著な生物活性を持つ天然有機化合物の合成と活性、生命現象の解明を目的としたケミカルバイオロジー的研究に関心がある。(写真)プロシアニジンB3とプロデルフィニジンB3の前立腺癌細胞を用いた抗腫瘍活性試験B環にある1つの水酸基の存在が活性に重要である(写真一枚or複数枚組み合わせ)有機化合物の構造決定には核磁気共鳴スペクトル(NMR)が不可欠本研究室では、抗腫瘍、動脈硬化抑制活性など生活習慣病の予防や治療に関係する「顕著な生物活性を持つ生理活性物質」の合成や創製に取り組んでいます。有機化合物は人間が加工できる最も小さい精密な構造体です。有機合成化学の手法を用いて標的化合物を自在に合成する究極の物づくりを行っています。生理活性物質はごく微量で生物の行動や機能を制御しており、生命現象の鍵を握る存在です。私たちは生理活性物質の活性発現の仕組みや構造活性相関の解明、高度に機能化した分子プローブを創製することで生命現象を解明し、農薬・医薬への応用を目指しています。私たちは有機合成化学の立場から、生命現象をたどり、優れた医薬品や機能性物質を作り出すための基礎研究を行い、人類の健康に寄与することを目指しています。研究の過程では新規反応の開発も行っており、有機化学の発展にも貢献することを心がけています。生命現象には様々な有機化合物が関わっています。本研究室では顕著な抗腫瘍活性を持つ天然有機化合物の合成を行ってきました。その化合物を用いて学内、学外の研究者と活性発現のメカニズムの研究を展開しており、癌を克服すべく研究に励んでいます。有機合成化学実験を通して有機化合物の取り扱い、性質、精製方法が身につきます。また、自ら立案し試行錯誤を重ねながら研究を進める力を養うことが出来ます。卒業後は化学会社、製薬会社、食品会社等で活躍出来る人材になります。OHHOOOHOHOHOHHOOOHOHOHprocyanidinB3OHHOOOHOHOHOHOHHOOOHOHOHprodelphinidinB3ACB活性無し活性ありNMRによる構造解析有機合成化学の⼒で⽣命現象を探るーケミカルバイオロジー機能性⾷料開発学専攻⾷料機能開発学分野3536

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