農学部研究紹介2014|信州大学
36/47

機能性分⼦解析学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像藤田智之教授日本テルペン化学株式会社研究員、大阪府立大学農学部助手、大阪府立大学大学院生命環境科学研究科助教授を経て、2006年より現職。研究分野は食品化学、生物有機化学。加工した素材中の有用成分の組成や成分量の変化を解析する写真の装置を使えば、有用成分の化学構造を知ることができる植物やキノコなど天然素材の中には各種疾病の発症予防や軽減化に寄与する未知の成分が含まれています。それらの素材の中から、酵素の働きを制御することのできる新しい有用成分を探し出し、人の健康維持に役立つ新食品素材の開発を目指して研究を行っています。また、100メガパスカル(水深1万メートルの水圧に相当)までの加圧が可能な高圧処理装置を用いて、食品素材の新しい加工方法を探究しています。これまでに玄米や玄麦に加圧処理すると、ヌカやフスマの抗酸化性成分が精白米や小麦粉に移行することを見出しています。天然素材に含まれる有用成分を純粋に取り出して、その化学構造を明らかにする技術は、食品分野だけでなく、生薬の分析や生物間で作用する生理活性物質の探索研究にも活かすことができます。そのため他分野の研究者と共同で研究を進めることが少なくありません。研究室で発見した成分や新たに開発した技術などをシーズ(種子)として、有効性の高いテーマは企業と共同で商品化に向けての検討を進めています。本研究室では、食品中の有用成分に焦点を当てて研究を行っています。卒業生は食品企業だけでなく、香料や化成品などファインケミカルズと呼ばれる製品群を扱う業種の開発職として就職されているそうです。⾝体に良い新⾷品素材の探求-天然素材は可能性を秘めた宝物ー機能性⾷料開発学専攻⾷料機能解析学分野)⻘果物機能学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像果物や野菜は、収穫された後も生き続けています。どのように取り扱うかによって、生命活動が変わり、栄養価や有用成分も変化します。本研究室では、地域の青果物(特にカリンやマルメロ)を材料に、どのような有用成分を含むか、どのように保存や加工をすればその特徴や有用成分を活かせるかを研究しています。また、野菜は一般に採りたてが最もおいしく、「つくって食べる」が最高の贅沢。安全・安心と環境共生を実現できる自然農型自給菜園でいかに品質のよい生産物ができるか、についても研究が始まっています。果物・野菜は人にとって最も身近な生き物かつ食品であるといえます。彼らの生物的特徴や食品機能の特徴をよく知ることは、これからの私たちの健康的食生活を考える上で極めて重要です。現代社会は、人の健康に有益な食品開発と同時に、生物多様性保全などの環境共生が重要な課題となっています。サプリメントとは異なり、食卓を彩る機能もある果物・野菜を彼らの能力を活かした形で栽培・利用する研究は、人と環境にやさしい持続的社会の構築に寄与できるでしょう。卒業生は、果物・野菜を扱う流通業や、ジャム・ジュースなどを扱う青果物加工業をはじめ、その他の食品製造業に多数就職しています。また研究者派遣の業界に入り、企業の研究チームに参画して活躍している人もいます。濵渦康範准教授大阪府立大学大学院農学研究科博士後期課程修了、1996年より信州大学農学部勤務。専門は園芸食品利用学。青果品質保全学、食料機能解析学などを担当。抗酸化成分の変動を主に研究。自然農型栽培による自給野菜生産と品質の調査を実施(左)薬用果実(カリンなど)の有用成分を活かした加工も研究(右)各品目に特徴的な機能性成分の調査とともに、おいしさなどの品質にかかわる成分の貯蔵・加工に伴う変化を追究している果物・野菜を知り、活かす。品質と有効利⽤の科学機能性⾷料開発学専攻⾷料機能解析学分野3435

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です