農学部研究紹介2014|信州大学
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植物遺伝育種学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像南峰夫教授長野県中信農業試験場を経て、1984年より信州大学農学部。ソバを中心として他殖性作物の遺伝と育種に関する研究をフィールドワークからバイオテクノロジーを駆使したラボワークまで広く展開している。21世紀の⼈類の⾷を⽀えるブリーディングサイエンス国連によれば世界人口はすでに70億人を超え、食と環境の問題が人類にとって21世紀最大の課題となっています。この食料問題を解決する唯一の方法が多収性品種の開発なのです。たとえば日本で明治時代に水稲の育種が開始されてから今日までに面積当たり収量は4倍近くに増加しています。植物育種は植物の持つ能力を遺伝的に改良する科学技術で、最新のバイオテクノロジー技術も取り入れながら発展を続けている先端科学分野なのです。本研究室では培養技術を用いた種間雑種の作出を通じて画期的な新品種を開発し、21世紀の人類の食を支えることを目指しています。専攻研究を通じて身につけた植物遺伝育種学の知識と技術を活かすために、国公立の農業試験場あるいは民間の種苗会社の品種開発部門で多くの卒業生が活躍しています。また、海外調査に参加して国際感覚を養う機会もあることから国際協力関係に進む人材も多数輩出しています。植物遺伝育種学研究室では、国内外のフィールドにおける植物遺伝資源の収集から始まり、ラボでの遺伝子のDNA分析まで、幅広い研究を展開しています。海外の研究機関との共同研究を実施しており、海外調査に学生が同行する機会も多く国際経験を積むこともできます。右上のロゴは研究室での勉学を土台として、学生が広い視野と国際性を兼ね備えたグローバル人材として成長することを象徴しています。ブータン王国における植物遺伝資源の収集と農民への聞き取り調査胚珠培養により世界で初めて作出した稔性のある普通ソバとダッタンソバの種間雑種フィールドワークからラボワークまで機能性⾷料開発学専攻機能性⾷料育種学分野植物遺伝育種学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像トウガラシなどの機能性を有する園芸作物、香辛料作物の新品種開発を目的として、1)それら有用形質のDNAレベルの遺伝解析、2)有用形質に着目した選抜のための分子マーカーの開発、3)胚培養等技術を用いた種間雑種作などを実施すると共に、長野県はじめとした国内はもとより、ブータン王国など海外において、有用植物資源および遺伝資源の探査、収集、保全に関する研究からそれらの民族植物学的な研究までを実施しています。さらに、これらのうちトウガラシ遺伝資源についてはDNAを用いた系統分類も実施しています。高齢化、獣害の増加などの様々な問題を抱える中山間地域において、トウガラシ在来品種の活用、新品種の導入などを進めることにより、同様地域におけるこれら問題を解決し、農業および食品産業の活性化を図ることが出来ます。また、様々な有用植物資源の探索、分類等をおこなうことは、地域資源の利活用につながり、これら植物資源の地域内での利用・保全を進めることができれば、生物多様性の保全に貢献できるとともに、これら植物に関する伝統的知識の伝承や保全が促進されます。植物の遺伝学育種学分野の研究、学習が中心になりますが、それらを実施するためには、それらの栽培、病害虫防除、さらには加工流通から文化的背景に至るまでの分野に関しての検討が必要となることから、幅広い視野を持った人材の育成に繋がります。また、卒業後は、公務員、食品会社、種苗会社、農業関連企業で活躍できる人材になります。松島憲一准教授農林水産省国際部係長、九州農試研究員、農村振興局専門官等を経て、2002年より信州大学農学部。トウガラシの遺伝解析、品種開発、在来品種の保全等の他、国内外の有用植物資源、遺伝資源の探索も実施トウガラシ等の新品種開発および在来品種の復活等で、地域の農業と⾷品産業を活性化左;新品種開発のための胚培養技術を用いた種間雑種作出右;産地の地域特性や利用法に併せた新品種の育成海外での有用植物資源調査事例ブータン王国東部のタシガン県ビカールゴンパ村で食用利用されている野生植物(2006年4月実施)機能性⾷料開発学専攻機能性⾷料育種学分野3233

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