農学部研究紹介2014|信州大学
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野外からのきのこ遺伝資源の収集、組織分離培養、遺伝資源の保存・評価・育種などの過程を経て、優良菌株を選抜しています。4年生は各自の研究テーマに沿って実験を行います。(左)実験の例:プロトプラストの作出(右上)、DNA多型解析(右下)自動収穫機によって根が均一に切断されたホウレンソウ研究から広がる未来卒業後の未来像きのこは、抗腫瘍活性を示す物質や血圧降下物質など様々な生理活性物質を含んでおり、従来の嗜好性食物としてだけではなく、薬理効果の高い機能性食物としても注目されています。応用きのこ学研究室では、我々にとって有益なきのこを効率よく利用するために、生命科学の知見や技術を基盤にして、きのこ遺伝資源の評価やバイオテクノロジー技術を利用したきのこの育種技術の開発研究などを行っています。これらの研究は、きのこ産業で求められているニュータイプきのこの開発や高機能性きのこの育種に繋がります。長野県は食用きのこの生産量が日本一(全国生産量の約1/3)で、様々な種類の食用きのこが生産されています。このような背景からも、新たな特性を保有したユニークなきのこ品種を今後も開発していくことが重要です。現在の研究は、食用や機能性食品素材としてのきのこの価値を向上させるためのものですが、きのこの難分解性物質分解能力や発酵能力などに着目して育種を行えば、バイオリメディエーション(汚染物質分解による環境修復など)やバイオマス返還(きのこを利用したバイオエタノール生産など)にも応用できます。卒業生は、きのこ関連産業だけではなく、食品産業など応用生命科学科の一般的な就職先で活躍しています。研究室での活動を通して身に付けた考察力、問題解決能力、プレゼン力などが社会に出ても役立っているようです。大学院に進学して、研究を継続する人も多くいます。福田正樹教授財団法人日本きのこセンター菌蕈研究所を経て、1991年1月より信州大学農学部に勤務。主な研究分野は、きのこ遺伝育種学。きのこの潜在能⼒を最⼤限に引き出し、「きのこスーパー系統」の開発をめざす応⽤きのこ学研究室2.組織分離培養1.きのこ遺伝資源の収集5.優良系統の選抜3.きのこ遺伝資源の保存4.遺伝資源の評価と育種50 μm組織培養や生化学実験を通して、実験動物の取り扱いやバイオテクノロジーに必要な技術が身につきます。また、自ら立案し試行錯誤を重ねながら研究を進める力を養うことが出来ます。卒業後は製薬会社、食品会社、不妊治療を専門とする産婦人科の胚培養士として活躍出来る人材になります。動物⽣殖学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像高木優二准教授1986年3月鹿児島大学卒、1990年3月東北大学大学院中退、1990年3月信州大学助手、1999年4月より現職専門は動物生殖学。哺乳動物の受精卵の美しさに魅了され研究の世界へ。近年は精巣を中心に研究を行っている。⽣殖細胞を⽤いて⽣命現象に切り込むアニマルバイオテクノロジー動物生殖学研究室では、マウスをはじめブタやウシなどの哺乳動物の卵子や精子、性ホルモンなど生殖や繁殖に関する研究を行っています。特に、精子のもとになる精原幹細胞(Spermatogonial Stem Cell)の様に多能性・多分化能を維持した細胞に関心があり、これらの細胞を用いた基礎研究や応用研究を進めています。また、精子の低温・常温保存技術および卵子のガラス化保存ならびに非凍結低温保存技術の開発も行っています。これら生殖に関する生命現象を解明し、動物生産やヒトの不妊医療への応用を目指しています。ブタ精子の運動性を評価するために、高輝度LEDと超高速ビデオカメラを用いて、精子鞭毛の動きを解析するシステムを開発した。また、同システムを利用しながら精子の保存条件を種々検討している。幼若ブタ精巣の精細管組織の画像。精細管の中で精子が形成される。精原細胞特異抗体により精原細胞のみを染色することが可能だ。精巣細胞を酵素でバラバラに解離すると様々な細胞が得られる。ブタ精原細胞特異抗体で染色すると、生きた精原細胞を蛍光色素で染めることが可能である。FACS分取装置で分離が可能で、精原細胞のみを単離できる。この細胞だけを培養して精子を形成させる研究を進めている。動物生殖学研究室では、生殖細胞をとおして生命現象を解明する基礎研究を行っています。また、得られた知見を応用することにより、人類の発展に寄与することを目指しています。精原幹細胞を、幹細胞の能力を維持しながら自由に増やすことが出来れば、体外での精子形成や、精原幹細胞の精細管への移植により生体での精子生産が可能となり、遺伝子改変など生殖細胞の人為操作がより容易なものになるものと思われます。さらに、ヒト男性不妊の新たな治療法の開発にも貢献できます。精子をはじめ生殖細胞の保存に関する研究の進展により、常温保存など全く新たな保存方法への応用が期待されます。応⽤⽣命科学科⽣物⼯学分野応⽤⽣命科学科⽣物⼯学分野2930

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