農学部研究紹介2014|信州大学
30/47

⾷品微⽣物⼯学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像本研究室では、代表的な産業微生物であるコリネ菌を題材に最新のゲノム科学を取り入れて、より高性能な発酵微生物の創製を目指しています。主なターゲットは、有用脂質とそこから合成されるビタミン(ビオチン等)です。現在、世界のビオチンはすべて石油から化学合成法で作られています。発酵生産には誰も成功していません。『オリジナルで斬新なアイデア』にこだわりを持って、世界に貢献する世界初のバイオ新技術の開発に取り組んでいます。これまで石油から作られていたものを微生物発酵法で生産する、そんな環境調和型のバイオプロセスが開発できれば、地球環境は美しいままでいられるでしょう。高価なものや希少なものを微生物バイオテクノロジーで効率的に作れるようになれば、より多くの人がそれを享受できるようになるでしょう。そんな未来づくりに少しでも貢献したい、それが本研究室の原動力です。本研究室では、研究力や専門性はもちろん、目的意識をしっかりと持って物事をやり遂げる姿勢を身につけることができます。大学院に進学してさらに研究を続ける学生が多いのが、この研究室の特徴です。多くの卒業生が、バイオや食品関連の会社で研究者や技術者として活躍しています。池田正人教授(左)協和発酵工業(株)の研究者を経て、2004年より現職。研究分野は応用微生物学や代謝工学。竹野誠記助教(右)2005年に同助手、2007年より現職。研究分野は同じく応用微生物学や代謝工学。斬新なアイデアで画期的な微⽣物を創製しよう!ゲノム情報や代謝マップなど、生命のビックデータを活用し、最新のテクノロジーを駆使して研究を行っている独自のアイデアと最新技術で、脂肪酸やビオチンを生産するコリネ菌が初めて誕生した。現在、生産効率を高める研究を行っている野生株脂肪酸生産菌ビオチン生産菌コリネ菌の電子顕微鏡写真応⽤⽣命科学科⽣物⼯学分野分⼦⽣物学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像千菊夫教授1987年6月、信州大学農学部助手に着任。助教授を経て2005年4月より現職。生化学・分子生物学、遺伝子工学、微生物学の手法で、農業バイオテクノロジーに用いられる微生物の生命現象解明と利用に関する研究を行なっている。微生物殺虫剤Bacillus thuringiensisの顕微鏡写真同菌は殺虫性タンパク質を大量生産し細胞内にクリスタルを形成するスエヒロタケ(左)とウシグソヒトヨタケ(右)の子実体これらの担子菌キノコは、シャーレや試験管の寒天培地上でも子実体形成するため、モデル担子菌として用いられている有⽤微⽣物資源を活⽤して豊かで持続可能な社会を創るー遺伝⼦、細胞、物質⽣産ー専攻研究を通して生化学・分子生物学系の実験手法、微生物の取扱い法が身につきます。また、自ら立案し試行錯誤を重ねながら研究を進めることで、課題克服能力を養います。卒業後は食品会社、化成品会社、製薬会社等で活躍できる人材になります。微生物殺虫剤Bacillus thuringiensisに関する研究を進めることは、環境負荷が大きい化学合成農薬の使用量を低減し持続可能な社会を構築することに役立ちます。また、世界人口の増加に伴う食料不足の問題を解決することも可能となります。一方、担子菌キノコの子実体形成に関する研究を進めることは、キノコの大量・迅速栽培の道を拓くばかりでなく、機能性食品や医薬品の素材としてキノコを利用する産業を活性化させます。原核および真核微生物資源を対象として、下記のテーマで分子生物学・遺伝子工学的研究を行っています。(A)微生物殺虫剤の開発グラム陽性菌Bacillus thuringiensis(Bt)は、農業・衛生害虫に対して毒性を有する結晶性菌体内顆粒(クリスタル)を生産することから微生物殺虫剤として用いられています。Btの殺虫性タンパク質および同遺伝子の安全かつ有効な利用を目指して研究を進めています。(B)担子菌の子実体形成機構の解明担子菌キノコは、食品・医薬品産業上重要である一方で、カビ状の菌糸から子実体へと劇的な変化をするため形態形成の見地からも興味深い生物です。遺伝的解析、子実体形成実験の容易なモデル担子菌(スエヒロタケとウシグソヒトヨタケ)を用いて研究を行っています。応⽤⽣命科学科⽣物⼯学分野2829

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です