農学部研究紹介2014|信州大学
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⽣物有機化学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像伊原正喜助教日本学術振興会特別研究員、理化学研究所、東京大学を経て2009年10月より信州大学農学部。蛋白質や酵素を自由自在に改造して、光合成生物の物質生産能力を高める技術開発に興味がある。本研究室では、光合成の力を借りて様々な有用物質を生産する技術の開発を行っています。光合成は、太陽のエネルギーを使って二酸化炭素と水から、酸素と「でんぷん」を作り出すシステムであると、授業などで習ってきたと思います。しかし「でんぷん」のほかにも、「石油」や「水素」のようなエネルギー物質や「プラスチックやゴムの原料」などを作り出すことができます。現在は、収量が低いことや生産コストが高くなることが問題となっていますが、遺伝子や蛋白質の改良など分子レベルの研究に取り組むことで、問題を一つ一つ解決していきたいと思っています。私たちはバイオテクノロジーを駆使して、エネルギー問題などの人類が直面している問題に寄与することを目指しています。現在、化石燃料の使い過ぎによって生じた問題によって、我々の社会は様々な面で行き詰りに来ていますが、光合成微生物や植物は、太陽光と二酸化炭素と水から様々な物質を巧みに合成し、環境を汚すことなく繁栄しています。生物から多くの事を学び、さらに改良していくことが、これからの社会に求められていると思います。遺伝子や蛋白質の設計・調製、化学物質の合成・分析実験を通して多様な実験手法が身につきます。また、チームで研究を行うことが多く、仲間との議論を重ねて研究を進める力を養うことが出来ます。卒業後は化学会社、製薬会社、食品会社等で活躍出来る人材になります。光合成の⼒で次世代エネルギーを作りたい光合成生物による物質生産の未来像とそれを支える遺伝子工学・蛋白質工学無菌操作用クリーンベンチ(左)、光合成微生物の培養(中)、各種分析機器(右)応⽤⽣命科学科応⽤⽣物化学分野27糖質化学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像一ノ瀬仁美助教農研機構特別研究員を経て2014年から現職。糖の名前は、-oseで終わる決まりがある。ichinoseという名前に隠された不思議な縁に導かれ(?)、糖質関連酵素の研究に取り組んでいる。どれも白い粉だが、組成や結合様式は異なる活性染色法では、酵素による多糖の分解を透明なハローとして検出することができる糖類と糖質関連酵素の関係は、鍵と鍵穴の関係です。ある糖と特異的に反応する酵素を使うことにより、糖類を分解したり、糖を付加したり、糖類の構造を自在に変えることができます。しかし、天然素材である糖類は、結合様式が様々で、多くは複数の種類の糖で構成されています。糖質関連酵素も多様性に富んでいて、我々は、糖類を十分に活用できていません。どの酵素がどの糖をどのように認識し、どのような反応を触媒しているのか。糖と酵素の甘い関係を明らかにすることは、決して甘くないのです。研究室では、糖類の用途拡大を目指し、主に微生物由来の糖質関連酵素の解明に取り組んでいます。有機化学、生化学、分子生物学、微生物学等の手法が身に付きます。食品、医薬、化学工業等様々な分野の企業人、教員、公務員等として活躍することができます。決して⽢くない糖と酵素の世界糖類は、衣・食・住の全てに関わっています。研究生活で得た知識は、日々の暮らしに、新たな気付きを与えてくれます。将来的には、獲得した酵素を使って、糖鎖構造を変えた多糖類や新規なオリゴ糖を調製し、物性や機能性の評価を行いたいと考えています。既存の糖類から、新規な素材を作ることができます。酵素の性質を明らかにし、未利用資源を活用し、糖類の新規分野への展開を目指します。ある製品に、あなたが名付けた糖や酵素の名前を目にする日もそう遠くないかもしれません。応⽤⽣命科学科応⽤⽣物化学分野27

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