農学部研究紹介2014|信州大学
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⾷品化学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像片山茂助教北海道大学で博士号を取得後、カナダ・ゲルフ大学博士研究員を経て、2008年10月より信州大学農学部。食品機能性成分のニュートリゲノミクス(栄養ゲノム学)に関心がある。研究室では「学生中心主義」と「世界に通用する人材育成」をモットーに研究指導されており、研究室全員が楽しく学べるよう努めているとのことです。卒業後は、食品・化粧品・製薬系の企業などに就職し、専門知識を活かして活躍しています。昨今、高齢者における認知機能の低下や認知症の発症が大きな問題となっています。また、医療費の増大や介護力の低下が深刻な問題になりつつあります。このような背景のもと、脳機能維持に貢献する機能性食品の開拓ニーズが高まっています。食品化学研究室では、老化促進モデルマウスを用いて食品成分の脳機能保護効果に関する研究を進めており、アンチエイジング(老化予防)が期待される機能性食素材の開発に向けて、企業との共同研究を行っています。研究成果は、健康栄養や医療などさまざまな分野への貢献が期待されます。機能性⾷品が超⾼齢化社会を救うはつらつ⻑寿の実現に向けて修士課程久志本尚子さん国際会議での受賞(USA)右は世界的に著名な研究者Dr.シャヒディ氏食品化学を専門とする研究室であり、女子学生も多く在籍している。研究成果は国際会議で発表し、高い評価を得た研究発表に対しては優秀発表賞などを受賞している修士課程近藤葉月さん国際会議での授賞(Canada)食品化学研究室では、生体調節機能をもった機能性食素材の開発および分子設計に関する研究を行っています。具体的には、認知症予防効果、アンチエイジング(老化予防)、花粉症や食物アレルギー改善効果、肥満・糖尿病など生活習慣病の予防効果をもつ食素材の開発に取り組んでいます。超高齢化社会を迎えた我が国では、高齢者がいつまでも“はつらつ”と輝き活躍する社会づくりが求められており、食品化学研究室では、健康長寿社会の実現に寄与する新たな機能性食品の創出をめざして研究を行っています。大豆ペプチドを摂取したマウスでは、脳海馬において神経栄養因子の産生が促進されている。モリス水迷路試験では、記憶学習能の改善効果が示されており、大豆ペプチドの脳機能保護効果が明らかになっている応⽤⽣命科学科応⽤⽣物化学分野26信州・長野県には古くから伝承されてきた独自の地域資源が数多く存在します。これらの伝統的な地域資源を、これまでには無かった新しい組み合わせにすることで新規な機能性食品を開発することができます。右図の「発酵キョウバク」は、「ソバ」と「漬け物」という地域資源の新しい組み合わせで、これまで知られていなかった降圧作用を創り出した一例です。現在、日本だけでなく世界的な高齢化が進行しています。健康長寿社会の実現は、今や世界的な課題です。信州発の新しい機能性食品を開発し、健康長寿社会に貢献したいと考えています。「発酵キョウバク」は、他の食品よりも少ない量で効果を発揮するため、安価で多くの人に利用してもらえる高血圧予防食品としての実用化を目指しています。高血圧患者は、日本では4730万人、世界では10億人以上と推計されています。今後、世界的な高齢化によって、高血圧患者はますます増加します。高血圧は、脳溢血や心臓病など重大な病気の危険因子です。「発酵キョウバク」で高血圧を予防し、これらの重篤な病気の予防に役立てたいと考えています。当研究室では、機能性食品実用化のために必要な、有効成分の同定、分析、動物試験での有効性確認、機能解析、安全性試験という多岐にわたる知識と技術を身に付けることができます。卒業生には、これらの専門知識と技術を活かせる医薬品や食品企業での研究開発、品質管理などの技術職で活躍してくれることを期待しています。中村浩蔵准教授日本学術振興会特別研究員、JST科学技術特別研究員を経て2002年より信州大学農学部。伝統的な地域資源をリバイバルして、新しい機能性食品を開発し実用化する研究に取り組んでいる。健康⻑寿社会の実現に向けて地域資源を活⽤した機能性⾷品の開発信州・長野県の地域資源であるソバは、実だけでなく茎や葉も古くから食されてきた。すんき漬は、塩を使わない信州の伝統的な乳酸発酵食品である。そこで、ソバスプラウトをすんき漬の製法で加工したソバの漬物「発酵キョウバク」を製造したところ、優れた降圧作用が生まれた。「発酵キョウバク」に含まれる降圧成分として特定されたペプチドこれらの有効成分が、生体内で血圧を上昇させる酵素の働きを弱め、血圧を低下させると考えられるOH2NONHOHOH2NNHNHOH2NOOOHONHONHOHOHONHNH2HNONHOHNHHOONHNHH2NOH2NONHNHNHOOHOOONHNH2HNOHOOHNH応⽤⽣命科学科応⽤⽣物化学分野⾷品分⼦⼯学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像26

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