農学部研究紹介2014|信州大学
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24当研究室では、世界の穀物の約1/4が汚染を受けるとも言われ、その加害による人や動物への健康被害が問題となっている、カビの産生する毒物(カビ毒・Mycotoxin)の研究を、世界の食品の安全性を向上するために進めています。食品の安全性には、質的な面を中心としたFood Safetyと言われる部分と、主に量的な面に注目したFood Securityと言われる2つの側面が有ります。そしてカビ、カビ毒による穀類等農産物への加害は、この両面に大きな問題を投げかけている問題です。私たちは、この問題に世界の研究者と協力しながら研究を進め、少しでもその被害を防止・低減しようとしています。カビ毒は世界的には1960年に英国で発生した事故(Turkey “X” disease)から研究の始まった分野ですが、日本ではそれより前、1937年に黄変米として研究が始まっている、日本が常に世界のトップを走ってきた研究分野です。近年は農産物貿易の拡大とともに、Codexの場でも各種の規制が議論され、多くの国で食品の安全性を確保するために規制がなされています。このような分野において、より効率的で目的に適合した分析法を開発し、その妥当性を確認し世界に広く使われる方法にしていく、そしてそれらの方法を使って、食品の安全性を向上するための開発を行っていくことで、食品の安全性に寄与していきます。カビ毒の分析法を開発し、それを利用して汚染実態の解明や汚染低減法を検討していく中で多様な分析法を自分のものにするとともに、その基礎にある開発、妥当性確認、日々の精度管理といった、実社会で求められている考え方を身につけ、食品の品質・安全性確保の担い手となっていきます。後藤哲久教授農林水産省(後に独立行政法人)食品総合研究所より、2004年4月に信州大学農学部応用生命科学科。カビ毒の分析法、それを通じての分析法の妥当性確認、さらに分析値の質の保証と、食品の安全性確保の全般に関わる。Aspegillussection flaviのカビたち発がん性の知られているカビ毒の蛍光TLCカビの作る毒素(マイコトキシン)と⾷品の安全性応⽤⽣命科学科応⽤⽣物化学分野⾷品安全学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像小嶋政信教授筑波大学大学院化学研究科博士課程修了(理学博士)。信州大学助手、講師、准教授を経て2001年より現職。LEDの特性を活用する植物・菌類の光応答現象の解明と、その技術応用に関する研究を進めている。実験室には、数種の可視光LED照射装置、化学分析用関連機器、分子生物学研究関連機器が設置されている新型インフルエンザ治療薬「タミフル」の製造原料となるシキミ酸を、ヒラタケ菌糸体内で飛躍的に増加させる光技術を開発した(世界11ヶ国に特許出願中:PCT/JP2012/070017)光制御化学研究室では、信州特産のソバとキノコを研究材料とし、発光ダイオード(LED)の特性を利用して、ソバカイワレの光応答挙動や、ヒラタケ菌糸の一次代謝産物に及ぼす光刺激の影響を解析しています。既に、「カイワレとキノコ菌糸の生長形態形成や代謝産物経路を光刺激により制御し、付加価値を産出させる技術」の開発に成功しています。本研究成果は、今後農業の未来を切り拓くことができる農産物の新規光栽培技術の開発や、医薬及び農薬等の製造原料や生理活性物質となる有用物質をキノコ菌から生産する技術に繋がるものと期待されています。植物・菌類の光応答現象の解明に関わる研究を通して、人工光源としてのLEDの特性や、生物の生育環境因子としての光の影響を詳細に学習することができます。卒業後は、食品製造系会社、化学分析系会社、医薬・農薬製造会社で活躍できる人材として期待されています。野菜やキノコの生長・形態形成・代謝には、光は重要な影響を及ぼす環境因子であることは経験的に理解されています。しかし、光波長・光強度・照射時間・明暗周期を厳密に制御した分子レベルでの研究は、これまで報告されていません。野菜やキノコの光応答現象を、光科学、生化学、並びに分子生物学の知識と技術を融合して解析し、この境界領域研究から学術的新知見を獲得するとともに、その知見を産業上に利用しようとする斬新で将来有望な研究として評価されています。ソバカイワレ菌糸体コロニー応⽤⽣命科学科応⽤⽣物化学分野野菜・キノコの光応答現象を解明し農業の未来を切り拓く光制御化学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像24

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