農学部研究紹介2014|信州大学
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森林環境学研究室安江恒准教授科学技術特別研究員(森林総合研究所)を経て2000年4月より信州大学農学部。木材組織学、年輪年代学的手法を応用して、樹木の肥大成長を制限する要因の解明に迫りたい。森林環境学研究室の取り組み森林環境学研究室では、今後生じるであろう気候変動に伴う影響を評価するため、以下の課題に取り組んでいます。1)肥大成長メカニズムの解明:成長期を通じた観測を通して、木材成長量や材質に影響を及ぼす要因(植物季節、環境、遺伝的要因)を明らかにします。2)環境が肥大成長に及ぼす影響評価:年輪情報を用いて、気候応答解析や将来の樹木の成長予測を行います。3)過去の環境変動の復元:年輪情報を用いた1年単位の気候復元や人間社会の適応を明らかにします。国内各地の山岳域をはじめ、ロシア、カナダ、アラスカ、モンゴルなどの周極域でも調査研究を行っています。研究室に閉じこもっていては見えてこない事象を間近に観察することで、気候変動に対する各地の森林の応答の個性と普遍性を明らかにしていきたいと考えています。フィールド調査からラボでの計測・解析に至る広い視野と共に、自ら立案し試行錯誤を重ねながら研究を進める力が身につきます。また、木材の形成から利用に至る知識を身につきます。卒業後は森林に関わる公務員や木材・住宅業界等で活躍出来る人材になります。気候変動と森林・樹⽊成⻑の関係を探るカナダでの森林調査髄樹皮180017701780179010 mm温暖化したら樹木成長はどうなるの?森林科学科森林環境科学分野研究から広がる未来卒業後の未来像⽊材利⽤学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像森林とバイオ研究(ラボワーク)、全く無縁な両者のように思いがちですが、森林を構成する樹木の目に見える個体レベルでの活動は、細胞・遺伝子レベルでの活動と密接にリンクしています。当研究室では、樹幹中に木材を形成するという樹木特有の仕組みの解明や、植物にとって最も重要なイオンであるカリウムイオンを細胞内外に輸送する膜タンパク質(膜輸送体)をコードする遺伝子の解析を主なテーマとして、樹木の生命活動の仕組みや生命活動により生み出される木材の性質について細胞・遺伝子レベルで研究を行っています。樹木を対象とした細胞・遺伝子レベルでの研究は、シロイヌナズナ、イネをはじめとする草本植物に比べて大きく立ち遅れています。特に、針葉樹に関してはほとんど研究が進んでいないのが現状です。当研究室では、樹木の木材形成や環境応答の仕組みについて細胞・遺伝子レベルで解明し、得られた知見を樹木個体レベルでの仕組みに結びつけることを目指しています。将来的には、分子育種による成長、環境ストレス耐性などの形質に優れた樹木の開発や、開発された樹木を用いた砂漠や塩害地の緑化などにつながるものと期待されます。建材・住宅関連企業をはじめ、様々な分野の企業に卒業生を輩出しています。研究室で得た知識、技術、そして経験を活かし、民間、公務員を問わず幅広い分野で活躍することが期待されます。また、本学または他大学の大学院に進学し、研究職を目指す選択肢も考えられます。細尾佳宏准教授新潟大学自然科学系助手、信州大学ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点助教を経て、2012年より現職。主な研究分野は、樹木を対象とした細胞生物学や分子生物学。森林でバイオ研究ー樹⽊の⽣命活動をミクロなレベルで科学するー針葉樹では世界で初めてK+膜輸送体をコードする遺伝子(CjKUP1)を単離し、その機能や発現特性を明らかにした野外で生育する樹木または人工気象器内で栽培した苗木から試料を採取して実験室に持ち帰り、様々な解析を行うスギNH2COOH細胞膜細胞外細胞内スギのカリウムイオン(K+)膜輸送体:CjKUP1の膜貫通構造CjKUP1は細胞内へK+を取り込む機能を持つ樹木の遺伝子解析実験森林科学科森林環境科学分野1717

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