農学部研究紹介2014|信州大学
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動物⽣理学研究室米倉真一助教米国国立衛生研究所、東京都神経科学総合研究所を経て2010年1月より現職。研究分野は動物生理学。特に乳腺、筋肉組織発達の分子機構や健康長寿を支える食資源に関心がある。骨格筋、脂肪、乳腺の培養細胞で得られる形質は、生体内で起きる現象を反映している。図右は骨格筋分化過程にある細胞。(写真一枚or複数枚組み合わせ)マウス、キイロショウジョウバエなどの生体モデルが、乳腺発達機構や神経変性のメカニズムを探索するために役立てられている。分⼦・細胞の世界から⾷と健康⻑寿の未来を切り拓くOHHOOOHOHOHOHOHHOOOHOHOHprodelphinidinB3ACB活性あり分化0日目分化4日目培養動物細胞を用いた研究乳腺神経動物生理学研究室では、普段私たちが口にしている「食」の付加価値を高める研究を行っています。アルツハイマー病など難病疾患に対しては、医学的治療だけでなく予防的アプローチも重要であると考えられます。神経変性疾患モデルを使った研究では、食資源の持つ疾患予防機能を見出すことが期待されます。また、乳や食肉の安定的供給には、生体内現象やストレスの解明が新たな飼料技術・飼養方法の提案に不可欠です。このように産業の入り口に立ち、今まで不可能だったことを解決する糸口が探索されています。動物の体をつくる様々な組織は、独自の発達機構や恒常性維持システムを持っています。神経はどのようにして情報を伝達するのか?筋繊維はどのように発達するのか?生命現象に対する多数の問いが、今日まで生体内に対する理解を深めてきました。そして、多数の生理学的知見が再生医療や疾患治療、畜産業の応用に役立てられています。動物生理学研究室では生命現象の分子機構に着目し、組織構成単位の細胞から実験動物まで幅広い観点から研究を行っています。機能性食資源の探索や、乳腺・筋肉などの分子基盤解明が未来の食を創造します。日々の実験を通して、データの見方や考え方、考察力などの論理的思考力が養われます。また、プレゼンテーションの習得にも重点を置き、説明能力に優れた人材が輩出されています。卒業生は主に、食品会社などで活躍しています。研究から広がる未来卒業後の未来像⾷料⽣産科学科動物⽣産学分野動物⽣体機構学研究室渡邉敬文助教北海道の大自然で牛と馬の獣医さんを経て2010年より信州大学農学部勤務。食欲を調節する消化管ホルモンと、動物に特異的な蛋白質であるコラーゲンに興味を持ち、形態学的な手法を中心に研究を行っている。⾒えないものを観る!写真は100年残る仕事、それが解剖学者の醍醐味です!!動物生体機構学研究室は、誰も見たことのない動物体内の組織構造を様々な染色や特殊な顕微鏡、そして確かな技術を携えて観て発見し、たった一枚の写真に収める、まさに宝探しの冒険をする研究室です。研究の基盤となる解剖学の最大の特徴は学生時代の教授と現在の学生の教科書がほぼ変わらないことです。新規の発見は不変な真実の発見を意味し、それこそが「写真は100年残る仕事」と言われる理由です。100年後の学生が学ぶ姿を想像しながら写真撮影を行っている現在のテーマは次の2つです。①GLP-1受容体の消化管における局在部位の解明②コラーゲン摂取が食肉の弾力に与える影響研究から広がる未来卒業後の未来像⾷料⽣産科学科動物⽣産学分野(左)コラーゲンを投与して育てたニワトリ骨格筋の組織切片像(右)弾力などの物理学的特性試験の風景ニワトリのランゲルハンス島の三重蛍光免疫染色像:鳥類ではGLP-1受容体がδ細胞に局在する(人はβ細胞)消化管運動や血糖値を調節する物質としてGLP-1と呼ばれるホルモンがあります。このホルモンはヒトの糖尿病治療薬や肥満治療薬として使用されていますが、このホルモンを受け取る受容体の局在部位は未解明な部分が多くあります。この解明は、GLP-1刺激を利用して効率よく動物の摂食行動を調節し、健やかな動物の成長を可能にすることを期待しています。また、動物組織に特異的な蛋白質であるコラーゲンを食べることが骨格筋の構造を変化させることが分ってきました。これは、動物が健やかに体を動かして年齢を重ねるための栄養学に繋がる可能性を含んでいます。目標にたどり着くために最初にすべきことは豊富な情報収集です。次にそれらの中から有用なものを選択して方法論を確立し、不変な真実を発見する力が必要になってきます。これまでの卒業生は食品会社や高校の教員など様々ですが、情報収集と選択して決定する思考回路はどのような分野に進んでも役立つと信じています。重ね合わせ像δ細胞(ソマトスタチン)β細胞(インスリン)GLP-1受容体1414

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