農学部研究紹介2014|信州大学
14/47

動物⾏動管理学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像皆さんは、「ソロモンの指輪」って知っていますか?ソロモン王が動物たちと話すときに使う道具のことです。しかし現実の世界に、そのような指輪は存在しません。ヒトと言葉を交わすことができない動物の気持ちを理解できる唯一のツールが動物行動学です。私たちの研究室では、ウシやヒツジといった農用動物(家畜)、動物園で飼育されている展示動物、農林産物を食い荒らすニホンジカなどの野生動物を対象に、彼らがストレスを感じることなく生活できる環境を提案し、両者の良好な関係が築ける生産、飼育環境、生息環境の構築を目指しています。私たちの暮らしは、様々な点で、動物たちと関わっています。例えば、「HappyCow,HappyLife」で表される様に、幸せな生活環境で飼育されている乳牛は乳量も多く、生産されたミルクの質も高いので、私たちの生活の質を向上します。また動物園では、環境エンリッチメントという手法を駆使して表現された動物たちの生き生きとした姿を見ると、私たちの心は和み、彼らを通して、自然環境への関心、理解度を高め、心豊かな社会に貢献します。一方、農林地や国立公園では、シカの食害が社会問題となり、動物の行動特性を利用した被害防止対策、個体群管理技術の開発により、野生との健全な関係を築くことができます。動物の飼養管理システムの構築は、動物行動学のみならず、多面的なアプローチを必要としています。卒業生は自ずと、目前の事象を多面的に捉える能力を身に付けます。卒業後は、技術指導者、専門機関での動物飼育管理者等として活躍できる人材として社会に飛び立ちます。竹田謙一准教授2000年信州大学農学部助手を経て、2008年より現職。この間、山梨県酪農試験場客員研究員を併任。専門は、応用動物行動学、家畜管理学。動物福祉に配慮した家畜の飼養管理、野生動物管理に興味を持って、研究を進めています。動物の気持ちを理解して、ヒトと動物の良好な関係を築く〜応⽤動物⾏動学の世界〜行動観察から乳牛の肉体的、心理的状態を把握し、調査牧場における乳牛の動物福祉(アニマルウェルフェア)を評価しています。飼育動物という観点で展示動物も研究の対象です。また、野生動物による農作物や希少な高山植物の食害防止も研究テーマの1つです。⾷料⽣産科学科動物⽣産学分野⽣物資源研究室研究から広がる未来卒業後の未来像上野豊助教酪農専門農協勤務を経て、2012年2月から現職。専門分野:動物栄養学、応用微生物学モットー:「昨日の?を今日の!に」わたしを作る細胞より10倍多いわたしの中にいる細胞の役割とは?ヒトは約60兆個の細胞からできていますが、ヒトの大腸には600兆個以上の細菌が存在しています。これらの細菌による群集(腸内細菌叢:ちょうないさいきんそう)は様々な形でヒトの健康に寄与しています。また、ウシは4つの胃を持っていますが、そのうち一番大きい第一胃(ルーメン)にも同様の微生物群集が形成され、エサの消化に役立っています。こうした動物体内に棲む微生物は一種の資源であり、その役割を明らかにすることでヒトや家畜の健康につなげるための研究が行われています。腸内細菌叢はよく、ヒトのもう一つの器官のように例えられます。それほどまでに重要な存在ですが、日常の食生活や生活習慣で簡単に構成が変化し、健康状態にすぐに反映されます。したがって、ふだんからより良い状態の細菌叢を作るためにはどのようにすればよいか?あるいはもし悪い状態になった時にどのようにすれば元通りになるか?そうした調節方法が見つかれば、より健康な日々を過ごすことが可能になるかもしれません。公務員、民間企業(食品、畜産)への就職が主です。腸内細菌叢はすべての人が持っているものなので、学生時代に何を研究したか?について、非常に話がしやすいというのは、役得かも?動物の消化管にいる微生物をどうやって調べる?消化管内容物から遺伝子を抽出すると、細菌由来の遺伝子だけがまとめて得られるので、これを使って群集構成や機能を調べる。世界中の牛を大きく元気に育てる主にアジア各国の牛の第一胃微生物を調査し、より生産性を高めるための作戦を立案中。⾷料⽣産科学科動物⽣産学分野1313

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です