農学部研究紹介2014|信州大学
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植物病理学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像サリチル酸は世界を救う!?〜植物の病にもヒトの病にも効きます〜加藤新平准教授日本学術振興会特別研究員(DC1/PD)ならびに海外特別研究員を経て2008年11月より信州大学農学部。植物が病原体(糸状菌、細菌、ウイルス等)から身を守る機構を解明し、病気に強い植物を創ることが目標。本研究室では“サリチル酸”という化合物に注目して研究が行なわれています。皆さんはサリチル酸をご存知でしょうか?サリチル酸は代表的な解熱鎮痛薬であるアスピリンの有効成分です。それでは、サリチル酸はどこから来たのでしょう?サリチル酸は植物に含まれる薬理成分として発見されました。植物において、サリチル酸は病原体と戦う抵抗反応を誘導する重要なシグナル物質です。植物がサリチル酸を合成する機構が明らかになれば、病気に強い植物や次世代型の農薬、食べる解熱鎮痛薬の開発に応用できるかもしれません。本研究室が研究対象としているサリチル酸は、植物の病気にも我々人間を含む動物の病気にも有効な生理活性物質です。研究室では、「植物が長い・長い進化の過程で発明したこの生理活性物質を有効利用できれば、植物の病気あるいは動物の病気を防ぐ新たな方法を開発できるかもしれない」と考え、植物がサリチル酸を合成する分子機構やサリチル酸が植物の病気を防ぐ分子機構の解明に日々取り組んでいます。OHCOOH(左)サリチル酸の構造(右)普通の植物(A)は病気に勝つが、サリチル酸を合成できない植物(D)は病気に負けてしまう(PlantCell11:1393–1404、1999)サリチル酸多くの学生は卒業後も大学院に進学し研究を続けます。大学院修了生は、学んだ専門知識を生かして、主に農園や食品会社で活躍中です。研究室の方針が“自主性を重んじる”であるため、常に自分で考えて行動することが求められますが、その分卒業時には論理的に考え、自主的に行動する能力が備わります。サリチル酸生合成/機能の分子機構の解明に日々挑戦している⾷料⽣産科学科農学分野9⾷料⽣産科学科農学分野雑草学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像渡邉修准教授草地試験場・岐阜大・農研機構研究員を経て2005年4月より信州大学農学部。外来植物、雑草の分布・生態調査をベースにした植生管理技術に関わる研究を行っている。山岳域の植生管理に関する研究にも従事している。雑草学研究室では、外来植物の地理的・空間分布の解明に関わる研究に取り組んでいます。グローバル化が進み海外との人的・物質的移動が頻繁になると生物の移動も国家を超えて生じます。外来植物はすでに数多くの種類が国内に定着し、雑草化して農業や生態系に被害を出しています。また、国立公園など自然度の高い環境でも雑草侵入が問題となっています。雑草学研究室では雑草の分布状態を簡易に把握する方法を確立し、発生のモニタリングと蔓延防止技術につながる研究に取り組んでいます。身の回りにどのような植物があるのか、我々はほとんど意識しないまま普段過ごしています。外国から来た植物は、日本人に馴染みがないため、多くの場合、嫌われ者となっていますが、その生態や分布を理解していません。一度侵入した外来生物は、多くのコストや人手をかけても根絶することはできません。根絶できないのであれば、共存するしかありませんが、農業生産や生態系に被害が出ないうちに、早めに見つけ出して、対策することが必要です。雑草学研究室では、外来植物のモニタリング調査を通じて問題となる植物を早期に発見する研究を、UAVなど最新機器を使いながら行い、汎用性のある観測技術を作りたいと考えています。(圃場観測用UAV(小型無人ヘリ)を利用した雑草観測)(GPSカメラを利用した雑草発生マップの作成と利用講習会)フィールドにおける雑草調査を通じて、農業生産の現場で問題になってる生産阻害要因について整理し、生産効率を下げずに持続的な農業を行う技術を身につけます。国や県、自治体と連携し、雑草問題解決に向けた取組を行うことができる人材を育成します。農業⽣産や⽣態系に影響を与える外来植物のモニタリング9

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