2013繊維学部研究紹介
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登録有形文化財信州大学繊維学部講堂(旧上田蚕糸専門学校講堂)信州大学繊維学部の前身である上田蚕糸専門学校は、全国唯一の官立蚕糸専門学校で、養蚕・製糸に関する研究と、指導者育成のための高等教育施設として、明治44年(1911)4月に開校しました。当時の上田は高品質な蚕種・生糸の生産と、三吉米熊らによる人材育成により、近代日本の主要産業であった蚕糸業の発展に大きく貢献し、「蚕都上田」と称されていました。この講堂は、文部省の柴垣鼎太郎の設計により、昭和4年(1929)に完成しました。建物は洋風の木造2階建てで、建築面積は延べ562㎡あります。屋根は切妻造(きりづまづくり)で、瓦棒鉄板葺(かわらぼうてっぱんぶき)、外壁は下見板(したみいた)張りです。外観は正面に切妻破風(はふ)を2段に重ね、三角の張り出し窓を付けた特徴ある構成をとっています。内部は大きな吹き抜けとなっており、天井は折上格天井(おりあげこうてんじょう)です。2階は前後に控室を設け、側面と後方はギャラリーとなっています。細部の仕上げは、床は寄木張り、壁は木摺打漆喰大壁(きずりうちしっくいおおかべ)で、腰板張り、窓は2連の上げ下げ窓で、天井は格縁内を板張り、他の天井は木摺打漆喰としています。建築様式は木造ゴシック系の建物ですが、時計回り、三角張り出し窓、入口の持ち送りなどの意匠には、直線による構成で機能性や合理性を重視したセセッションの様式が採用されています。この建物で特筆すべきは特徴は、蚕糸にちなんだ桑・繭・蛾の意匠が内部の各所に付けられている点です。入口天井の換気口には繭と蛾、ステージの柱には桑、アーチの縁飾りには蛾と桑、演台には蛾と繭、脇台には桑が使われています。この講堂は、ほとんど改変を受けることなく建築当初の姿を残しており、現存する近代の中・高等教育施設の建造物としては屈指のものです。また、信州大学繊維学部に受け継がれている上田蚕糸専門学校の建学精神と、「蚕都上田」の歴史を象徴する貴重な建物です。平成10年9月2日登録文化庁☆現在は,ガイダンス・卒業式などの会場として,又,映画・ドラマのロケ地としても使われています。

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