2013繊維学部研究紹介
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塩見研究室高性能なセンサーを逆手にとる!昆虫の生態解明で可能となった害虫駆除方法とは?昆虫の持つセンサーについて研究している塩見研究室。実は、昆虫は温度や日の長さをセンサータンパク質が受け取り、訪れる季節を察知しています。このおかげで秋に生まれた卵は餌のない冬を避けて春に孵化したり、夏には遠くへ飛ぶための翅を獲得できるのです。この高性能なセンサーの中には、天然成分の化学物質に反応するものがありました。この新発見を応用すれば、害虫や駆除すべき外来種に対し、自然にやさしい薬剤を散布することで、卵を冬に孵化させたり翅のない成虫を羽化させたりすることが可能です。自然や人に無害な害虫駆除として、注目を集めています。昆虫の休眠時期のコントロールは、害虫駆除だけでなく生態系の保護にも役立ちます。ここ数年、ミツバチの個体数が全世界で減少し続けていますが、このような希少昆虫を卵の段階で保存し、将来の安定供給につなげることも可能なのです。また、昆虫の生態には未だに謎の部分も多く、それらを解明することで地球規模の環境問題や食糧問題、医療問題などに役立つ結果が得られると考えられています。食品会社や製薬会社、自然を相手にするような環境系企業等に就職する学生もいます。また研究室での経験を生かして、遺伝子解析などを行う企業にも卒業生を輩出。他にも、貿易関連の検査に携わるといった将来も考えられます。塩見邦博准教授信州大学繊維学部助手を経て、2007年より現職。研究分野は昆虫の休眠や変態、季節的多型といった環境分子昆虫学や応用昆虫学。生物資源・環境科学課程応用生物科学系研究から広がる未来卒業後の未来像アカボシゴマダラの幼虫。こんな昆虫が塩見研究室には沢山いる。学生も昆虫の神秘に魅了された「虫好き」が集まってくるのだとかサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦7.8cm昆虫のセンサー遺伝子を導入した培養細胞を観察するチョウ目昆虫のもつ有用な遺伝子のクローニングエビガラスズメ緑色幼虫。エビガラスズメは日本の至る所に生存する大型のチョウ目昆虫。サツマイモの害虫でもある白井研究室昆虫の優れた能力と生存戦略を追究し、日々の生活に活かす!普段目にする「むし」の何気ない現象にも未知の機構がいっぱい。白井研究室では、そんな昆虫の持つ優れた能力を研究することで、将来、私たち自身の生活に役立てようと考えています。例えば、アオムシの色。アオムシは昔から緑色と決まっていますが、ではどうやって緑色になっているのでしょうか?研究を続けると、私たちヒトの様々な疾患の原因ともなる、タンパク質の分泌制御機構が関わっていることが分かってきました。近い将来、昆虫から学んだ知見から人間の病気を治すヒントが得られるかも。タンパク質分泌の制御機構は、現在最も注目されている研究分野の一つです。ペプチドホルモンなどの分泌制御機構の破綻は、昆虫のみならず、我々ヒトにおいても極めて重大な影響を及ぼすことは想像に難くありません。しかし、その分子機構の解明は意外なほど進んでおらず、未だに多くの謎を残しています。白井研究室ではアオムシの緑色の研究を通じて、哺乳類細胞の研究とは少し違った角度から、この現象にアプローチしています。将来、糖尿病などの疾患の克服に、昆虫の研究が役立つことを期待しています。卒業後の進路として、一番多いのは食品や薬品のメーカー。卒業生の多くが大学で学んだ知識を基礎に、日夜新しい商品開発に励んでいるそうです。また、公務員として、国や県などの研究機関に就職している卒業生が多いのも、この研究室の特徴です。白井孝治准教授農林水産省蚕糸・昆虫農業研究所COE特別研究員、信州大学助手等を経て、現職。専門は昆虫および昆虫細胞を用いた生理生化学および分子細胞生物学。幼虫の真皮細胞から抽出した色素結合タンパク質。このタンパク質にタンパク質分泌制御のヒントが!生物資源・環境科学課程応用生物科学系研究から広がる未来卒業後の未来像

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