2013繊維学部研究紹介
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寺本研究室天然素材から作る体に優しい材料。高分子材料は体の修復の手助けもできる!?私たちは本来有している治癒能力では修復不可能なくらい大きな障害を受けてしまったら、その部分を代替えする物を使って修復しなければなりません。人工的な材料は生体にとって異物として認識されるため、生体はそれを体外に排除したり、無毒化しようとします。実際の医療に用いられている多くの高分子材料もまた生体には異物であり、生体にとって優しいものではありません。生体に、より適合した新しい高分子材料を考え開発することは、様々な疾病の治療を行うためにもとても重要なことです。体の中で組織細胞はたくさんの生体高分子が絡み合った細胞外マトリックス(ECM)と呼ばれる高分子集合体に囲まれて存在しています。体の器官を修復させるためには、細胞だけでなくこのECMを作り出すことが必要です。私たちは天然物であるタンパク質や多糖類を素材として人工的なECMの開発を試みています。この様な素材は再生医療などの臨床への応用が期待されます。卒業後の進路としては、様々な業種へ進んでいますが、主として材料メーカー、化学メーカーなどへ就職しています。医療器具メーカー、再生医療のような臨床応用を指向した企業で活躍している人もいます。寺本彰准教授民間乳業会社研究員、信州大学繊維学部教務員、助手等を経て、2008年より現職。研究分野は細胞培養用基材の開発、培養細胞の機能評価など。セルロースをナノファイバー化した不織布上で増殖しているマウスの骨芽細胞無菌状態を維持できる装置中で、作製した素材を敷き詰めたシャーレを用いて組織細胞を長期間培養し、機能について検討を行う機能高分子学課程化学・材料系研究から広がる未来卒業後の未来像荒木研究室ネックレス状の「超分子」とセルロース・キチンウィスカー補強材料荒木研究室では大きく2つのテーマで研究を進めています。1つめは「ポリロタキサン」と呼ばれるネックレス状の超分子を作り、様々な化学修飾を施して、ゲル・繊維・フィルムなどの機能性材料を作ろうとしています。2つ目は、木材や植物から取れる「セルロース」やカニ・エビの殻に含まれる「キチン」の微結晶粒子を使った実験です。これらの微結晶は天然由来でナノサイズ、さらに1本の弾性率や強度は鋼鉄よりも強く、さらに生分解性がある魅力的な材料で、フィルムや繊維の補強材料として応用を進めています。ポリロタキサンと、セルロース・キチンの微結晶。どちらも形や性質が興味深く、大学の学術的な研究対象としても興味深いのですが、将来様々なところで役に立つ可能性も秘めています。ポリロタキサンを混ぜた塗装は、傷がつきにくい携帯電話の塗装として既に実用化されています。また、セルロース微結晶を補強材料として使うための特許出願に向けた研究も進められています。当研究室で自分の興味深いテーマを追求しながら発見した新しい材料が、社会で広く使われるようになることでしょう。設立したばかりの研究室でまだ卒業生が少ないですが、化学メーカー・材料メーカーを中心に先輩方が就職しています。在学中の研究のみにとらわれるのではなく、理系の研究職として社会に出たときに何を求められるか、を身につけて修了してもらうよう指導しています。荒木潤准教授科学技術振興特任研究員、JST-CREST研究員、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社技術顧問、2007年信州大学国際若手研究者育成拠点助教を経て、2012年より現職。専門は超分子科学・多糖類科学。ポリロタキサンは幅1ナノメートルの“ナノサイズネックレス分子”フィルムに成型することもでき、携帯電話の外装にも使われた左は植物中のセルロースウィスカー。ナノサイズのファイバーは鋼鉄よりも強い弾性率を持つ。さらに偏光板の間で光る液晶にもなる機能高分子学課程化学・材料系研究から広がる未来卒業後の未来像

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