2013繊維学部研究紹介
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市川研究室丸めて持ち運べるテレビ、照明になる天井…空想上の未来を有機ELが叶えてくれる市川先生が行っているのは、次世代のディスプレイや照明としての利用に期待が高まる有機EL(有機LED)の研究開発です。非常に薄い上に自ら発光するなど、現在主流となっている液晶にはない多くの特性を持っています。海外の大手企業も注目し、市川研究室と協同しているこの技術。実現すれば、天井や壁全体を照明にすることや、テレビやパソコンのモニタを紙のようにクルクルと丸めて持ち運ぶ、なんてことも可能に!現在は消費電力量の削減が大きな課題ですが、SF映画にでも出てきそうな未来の生活が、有機ELによって始まろうとしています。有機ELの研究において市川先生が消費電力削減と同時に取り組んでいるのが、原料の選定。現状ではレアメタルや貴金属といった希少元素を使用することが想定されていますが、もっと容易に入手できる、炭素のような元素を原料にすることをめざしています。またこの有機ELの研究に加えて、有機半導体や有機太陽電池等の研究も活発に行われ、豊かで持続可能な社会の実現に向けて期待されています。卒業後の進路としては、素材メーカーや化学メーカー、材料メーカーに就職する学生が多いのが特徴。もちろん電機メーカーへの就職もあります。また有機ELの開発は印刷会社でも行っているため、大手印刷会社へ就職した学生もいます。市川結教授宇部興産株式会社高分子研究所研究員、信州大学繊維学部助手、准教授を経て、2013年より現職。有機半導体デバイスや有機光電子材料といった機能材料・デバイスや物理化学が研究分野。機能高分子学課程化学・材料系研究から広がる未来卒業後の未来像これが有機EL。導電性高分子である有機ELはLEDと違い、薄い膜のような形状で発光する点がポイントだ研究室で開発した有機半導体材料を溶剤に溶かし基板に塗り、トランジスタが完成。特性を生かした活用例を生み出す研究を行う小駒研究室生体物質を工学に応用するバイオセンサーや新素材を目指して疾病の時に処方される薬は肝臓で分解される。その肝臓において中心的な役割を果たしているのが、CYPと呼ばれる酵素です。薬の効き方は、人によって様々であり、副作用の強く出る人もいます。我々の研究室では、このCYPを電極に固定し、適切な薬の投与量を簡便に見極めることを目指したバイオセンサーの開発を行っています。また、珪藻という植物プランクトンはシラフィンというタンパク質を使ってシリカの殻を形成しています。このシラフィンの構造を模倣した高分子を用いることで、新素材としての様々な形状のシリカの作成に成功しています。生体を構成しているタンパク質などの生体分子は多種多様であり、様々な生理機能を発現しています。また、タンパク質だけでも数万種類あり、未解明の機能もたくさんあります。従って、どの生体分子を選び、どのように活用するのかは、無数の組み合わせが考えられます。このように生体物質を工学に応用することで、新しい概念のもとで、新素材などの開発が可能になると確信しています。化学素材、医療機器などが就職先として比較的多いですが、学生が興味を持ったどの分野の企業にも対応できるような教育を心がけています。小駒喜郎准教授信州大学大学院繊維学研究科修了後、東北大学にて博士(理学)の学位を取得。1999年から現職。この間、2001-2002年ドイツケルン大学に留学。専門は生体高分子工学。機能高分子学課程化学・材料系研究から広がる未来卒業後の未来像-1.00E-07-5.00E-080.00E+005.00E-081.00E-07-0.7-0.5-0.3-0.10.1Current(A)Potential(V)基質なしリドカインテストステロンニフェジピン薬物の種類によって異なる電流電圧応答を見せたCYP固定化電極(バイオセンサーへの活用例)ポリマーの添加による様々な形態のシリカの生成(新素材への活用例)基質なしリドカインテストステロンニフェジピン

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