2013繊維学部研究紹介
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谷上研究室サブミクロンの微粒子を整然と並べフォトニッククリスタルへ谷上(たにがみ)研究室はものづくりの研究室です。サブミクロンの大きさを持つ粒径のそろった微粒子を合成して,電気泳動堆積法で粒子を規則正しく並べています(コロイド結晶)。粒子は静電反発が強く,元来並んでくれないものです。そこをいろいろと工夫することが研究の醍醐味です。なぜそれをやるのか。それは,コロイド結晶があまりにも魅惑的な光を放つからでしょう。これを構造発色といいます。色素によるものではありません。量子コンピュータというものが求められています。それを実現するためには,特定の波長の光だけを透過させたり,光を直角に曲げたり,閉じ込めたりする技術が必要です。それを可能にする光学素子をフォトニッククリスタルといいます。光の波長と同じような周期を持つ結晶です。谷上研のコロイド結晶もフォトニッククリスタルに近づける一つの手法です(ボトムアップ法)。現在ややリードしているのはリソグラフィー等を利用するトップダウン法かもしれません。高分子,繊維に係わる化学メーカーに多く就職しています。長野県外が多いです。どういう分野の企業で活躍できるかを認識できるのは4年生になって研究室に配属されてからです。それまでは,あせらず地道に力を蓄えておくことが望まれます。谷上哲也准教授1982年より繊維学部勤務。学生時代はX線を使った高分子の固体構造や物性の研究。中略。今は可視光によるコロイド結晶の研究。共通する言葉はブラッグ反射。応用化学課程化学・材料系研究から広がる未来卒業後の未来像右より無機系のシリカ,有機系のポリスチレン,ハイドロゲル系の各種微粒子を「コロイド結晶」化させる研究を行っています2°15°30°50°2°35°50°θθ光カメラコロイド結晶2°20°角度によって色が変化する材料(ポリスチレン)θθ野村研究室ドライラボ:実験を行わない化学コンピュータを道具に物質の性質を調べる野村研究室では、量子化学に基づいた分子計算を行う事で、実際に実験すること無く、物質の電子的、光学的性質を初めとする様々な性質を調べています。それにより、物質の性質の根源を見つけることができます。例えば、炭素-炭素の二重結合が交互に連なった共役分子において、共役系が長くなるほど吸収スペクトルは長波長側に移動しますが、その理由も明確に説明できます。現在は、主にフラーレンを初めとする炭素を中心とした物質を対象にして研究を行っています。以前は、分子計算の際には、自分でプログラムを組んで、それで計算することが多かったのですが、最近は市販の分子計算ソフトウェアも充実しており、専門家でなくても被確定手軽に計算できるようになりました。そのため、例えば、有機合成をテーマとする論文の中に、反応経路の予測を分子計算で行ったりするものもあります。このようなことがより進めば、効率的な反応を予め計算により調べておくことで、試薬や時間を浪費することなく実験ができるようになると期待されます。卒業後の進路は様々ですが、応用化学課程の他の研究室に比べ、システムエンジニアが多いような感じがします。また、最近では教員や公務員を目指す学生も多く、実際に合格してそちらに進んだ学生もいます。野村泰志准教授信州大学繊維学部助手を経て、平成17年から現職。量子化学に基づいた理論化学。最近は、フラーレン等の炭素材料の電子物性や、ある種の有機分子の蛍光やその消光過程についての研究を行っている。計算対象の1つである、カーボンナノチューブ。グラファイトのように6員環がならんでいるあるフラーレンにおける電子分布と関連する分子軌道の図。赤でも青でも大きな所に電子が豊富にある応用化学課程化学・材料系研究から広がる未来卒業後の未来像

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