2013繊維学部研究紹介
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佐古井研究室暑さ・寒さと熱の科学。衣服や気流を活かして好みの熱環境を体温に影響する環境側の要素には、気温だけでなく日光やコタツなどの熱放射、扇風機などの気流、湿度、衣服があります。特に衣服や気流は環境の温度を変えず、好みに合わせて暑さ寒さを調節できます。研究室では、衣服や気流を有効に活用していくため、身体からの熱・湿気輸送現象の測定、その装置開発や数値シミュレーション、それらを入力として身体の温度分布を予測する数値人体モデルの開発、身体を水の蒸発によって冷やす冷却服の開発、熱中症と衣服や気流の関係の解明などに取り組んでおります。物理的には「熱・湿気輸送」の解明、生理・心理的には「体温や汗と暑さ寒さの対応」の解明に取り組んでおります。部屋全体を暖める、冷やすといったこれまでの暖冷房は、多くのエネルギーを消費してしまいます。衣服や気流により、個々人の周りのみにおいて好みにあう微気候を形成できれば、夏冬のエネルギー需要を無理なく抑制でき、エネルギー不足の解決に繋がります。また、気温が同じでも、湿度や着衣、気流、日射などによって熱中症リスクも異なります。衣服や着衣などを活用し、エネルギー消費を抑制しつつ、良好で安全な居住環境を実現していきます。これまでの卒業生は住宅メーカーや保険会社の大手に就職。研究室では、与えられた研究課題を行うというよりむしろ、社会へ出る準備として、未知の研究課題への取組み、特に考えて工夫することを通じて、自分で考えて行動できる自主性を養うことに重点が置かれている。佐古井智紀講師東京大学生産技術研究所、産業技術総合研究所、信州大学国際若手研究者育成拠点助教を経て、2013年より現職。温熱環境評価や温熱生理反応解析で、3件の空気調和・衛生工学会賞などを受賞。研究分野は温熱環境工学。水分蒸発による冷却を利用した冷却衣服の実験風景。温度が高く風だけでは快適にならない環境でも十分な冷却効果が得られる写真サイズ高さ2.65cm×幅3cm配置位置横0.5cm、縦7.42cm感性工学課程繊維・感性工学系研究から広がる未来卒業後の未来像気流、気温、熱放射、それぞれ効果を測定する装置の開発シミュレーションにより、気温分布や体温分布などを予測写真サイズ高さ4.35cm×幅3.6cm配置位置横15.3cm、縦2.85cm感性工学課程繊維・感性工学系堀場研究室コンピュータシミュレーションにより被服・繊維製品を解析着心地の良い被服を設計するためには、被服と人体の間の物理的な現象を理解することが重要です。しかしながら、着衣時に人体と被服の間に形成される空間は狭小であるため、空間内で起きている現象を観察することは容易ではありません。そこで当研究室ではコンピュータ上に衣服と人体を再現し、人体と衣服の間の力学的・熱的現象を予測・解析する研究(コンピュータシミュレーション)を行なっています。シミュレーションは、実際に観察することが困難な現象を可視化できることから、被服・繊維製品の設計や評価に貢献するものと期待されています。人体と被服の間の物理現象をコンピュータ上で再現する方法を研究する一方で、当研究室では物理現象と人間の感性(快適性)の関係についても研究を行なっています。人体の被服の間の物理現象と感性の関係が明らかになれば、コンピュータシミュレーションにより被服の快適性(着心地)を予測することも可能になると考えられます。卒業後の進路としては、卒業研究等で培った繊維工学、計算工学、コンピュータプログラミング等の知識・経験を生かし、繊維業界、IT業界への就職が大半を占めています。堀場洋輔助教信州大学大学院工学系研究科修了。博士(工学)。2002年より現職。主に、感性工学、計算工学、被服生理学に関する研究に従事。感性工学課程繊維・感性工学系研究から広がる未来卒業後の未来像衣服から加わる圧力をシミュレーションにより予測した結果。動作に伴う圧力分布を設計段階で検討することか可能になる体温と人体周辺の気温の分布を予測した結果。PMV(予測平均温冷感)等の指標を組み合わせることにより、被服の温熱快適性を予測することが可能になる

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