2013繊維学部研究紹介
17/64

高橋研究室21世紀はやわらかい材料の時代ですー高分子材料の未来の可能性を追求ーものづくりを行ううえで、材料は欠かせません。これまでの材料の主役は金属材料やセラミックス材料など固いものが主流でした、これらに変わって、今後は高分子などのやわらかい材料がますます重要性を増していくことでしょう。高分子材料は,炭素を主成分として、これに窒素や水素などが結合してできる鎖状の長い分子であり、分子の形態がさまざまに変化することから、様々な性質を示します。また、生体に対して無害であることから、工業製品はもちろんのこと、生医学材料としても大きな可能性を持った材料であるということができます。高分子材料には、プラスチックのごみ問題という暗いイメージが付きまとってきたのも事実です。そこで現在は、多糖類など生物から取れる高分子材料の研究が盛んに行われています。このような研究により、将来は、環境にやさしい高分子材料が数多く生まれてくることが期待されています。また、一種類の高分子だけでは、十分な性質が発揮できない場合、複数の高分子材料を混ぜて(ブレンドして)新たな材料を開発するポリマーブレンド材料の研究も盛んに行われています。高橋研究室でもこのような研究を行って将来の高分子材料の発展に寄与したいと考えています。卒業生の多くは、化学系の企業に就職し、活躍しています。化学系の企業のほとんどは高分子にかかわっており、高分子を研究した学生に対する企業のニーズは高いといえます。こうした企業の場合、学部卒よりも大学院卒を採用する傾向があり、卒業後は大学院へ進学するのが望ましいようです。高橋正人准教授1986年工学博士取得、その後東京都立大学(現在の首都大学東京)を経て、1991年より現職。研究分野は高分子材料の構造制御(天然物多糖類の構造形成とその制御、ポリマーブレンドの構造制御、両親媒性高分子の構造形成とその制御など)。感性工学課程繊維・感性工学系研究から広がる未来卒業後の未来像カラギナンゲル(左)とカルシウムアルギン酸ゲル(右)。これらはいずれも多糖類であり、生体に対して無害である。ゲルは創傷被覆剤などとして生医学方面に利用できる可能性があるCaAlg gelCagtype1ポリマーブレンドの海-島構造(左)と共連続構造(右)、構造を制御することで様々な物性を持った材料を実現できる可能性がある細谷研究室見た目だけじゃない。データが裏付ける「心地よさ」を感じられるソックスを商品化何気なく選んでいるソックスにも履き心地の善し悪しがあり、それによって疲労度も変わってきます。そんな履き心地を数値化して考えているのが、細谷研究室。着用時の圧力の変化等を計測し得たデータは、メーカーがソックスを作る際に素材や形状、伸縮性等を決めるための重要な資料になっています。その成果は左右非対称で伸縮性に変化を付けた「疲れにくいソックス」として実際の商品に!他にもシューズやストッキングなどの商品を企業と開発し、いくつかの商品が旅立って行きました。今までにない心地良さを感じられるアイテムが、もっと増えていく予定です。感性工学課程繊維・感性工学系研究から広がる未来卒業後の未来像商品に付加価値を与える感性工学。身につける物以外にも、携帯電話のキーのタッチなど私たちが日々触れる物すべてに生かされており、求められる分野はまだまだ沢山あります。このような研究が進めば、人が自分に合う商品を選ぶのではなく、体温に応じて繊維の太さが変わって温度調節ができるシャツなど、商品のほうが利用する人に合わせて状態を変化させるといったことも夢物語ではありません。感性工学の知識を生かせる分野が広いので、学生の進路も多岐にわたります。アパレルはもちろん各種メーカーに就職する学生が多く、中には金融業界や広告業界に進み、「人と人・人とモノ」の関係性を探る学生もいるそうです。細谷聡准教授信州大学繊維学部助手を経て、2006年より現職。主な研究分野は感性工学、人間工学、スポーツ工学など。多くの企業と共に研究を進め、実際に商品化されたモノも多い。上は普通の靴下。下が商品化された、足の形状に合わせた靴下サイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦16.8cm心電図を身体に装着し、下着着用時のストレスをデータで解析サイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横14.9cm、縦16.8cmトレッドミルを使いソックスの衣服圧の変動を測定。足に圧力センサーを付け圧の変化で履き心地を数値化し、データを解析するサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦7.8cm

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です