2013繊維学部研究紹介
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金井研究室五感を科学して製品の付加価値を向上「ハッ」と目が覚めるような黒のスーツを身にまといゴージャスな大人の雰囲気を感じたい。お風呂上がりには「マシュマロ」みたいな肌触りのルームウェアに包まれていたい。金井研究室ではそんな消費者の素直な要求を満たす「幸せのためのもの創り」を実践しています。何本もの細い繊維を束ねて糸を創り、それを経緯に組み合わせて創られた布はテキスタイルと呼ばれ、フィルムや紙と比べてしなやかで強く、軽くて空気をたくさん含む魅力的な素材です。このテキスタイルを消費者の要求に合わせて効率よく創りあげる方法を研究しています。ユーザフレンドリを満足させるものづくりの方法論を実現するためには、人間の心理、生理反応を計測し数値化して、消費者のニーズを正確に把握することから始めます。まさに「ヒトを測ってそのヒトを知る」のです。この技術を応用すれば、宇宙飛行士や消防士など危険な作業をともなうヒトの状態を知ったり、心地よい香りをかぐことでどのくらいリラックス効果が得られたかを知ることもできるのです。ユーザーフレンドリを満足させる技術は、繊維製品に限らず身の回りのあらゆる製品(車、インテリア、文房具など)で求められています。「心躍る製品を創ってユーザーを感動させたい」という夢を持っている人が社会で活躍できる学問です。金井博幸准教授信州大学繊維学部を卒業後2003年より繊維学部助手、2007年より助教、2009年より講師、2011年より現職。研究分野は感覚計測工学、生体機能計測工学。布の光反射を測定してヒトが感じる「深み」や「艶やかさ」などの印象を数値化できる装置。布の美しさを数字で評価できるスーツを着たヒトの筋肉の活動(筋電図)を測ることで、そのスーツがどれだけ動きやすいかを知ることができる写真サイズ高さ2.65cm×幅3cm配置位置横0.5cm、縦7.42cm先進繊維工学課程繊維・感性工学系研究から広がる未来卒業後の未来像坂口研究室「せんい」ー日本における、このキーワードの未来を考える「せんい」、主に紡織技術(糸や織物を作る技術)に関する仕事をしています。特に、そのための機械やシステムについて研究しています。関連分野は機械工学、電子工学、コンピュータ技術、ロボット工学等多岐にわたりますがこれらの技術を「せんい」に取り込んでいきたいと思っています。このような試みはこれまでも行われてきており、たくさんの高性能な繊維機械はすでに市場に出回っています。しかし高性能化、高速化してきた多くの繊維機械は進化の袋小路に入ってしまった感があります。そのようなことから、新しい発想の生産システムが必要と考えています。これまで、携帯電話に付加的な機能を付けるためにマイクロコンピュータを積んでアプリケーションを動かしていました。しかし今のスマートフォンは全く発想が違います。ポケットサイズのコンピュータを作っておいてアプリの一つとして電話機能を搭載しています。このような発想の転換を繊維生産システムで実現したいと考えています。そこにこそ日本における繊維産業の活路があるのではないでしょうか。同じ力のエンジンを積んでいてもレーシングカーとブルドーザーでは得意な仕事は全く違います。高校までの勉強はレーシングカータイプ、大学での研究はブルドーザータイプの人が向いていると思います。卒業後は両方求められます。坂口明男助教長野県上田市生まれ。信州大学繊維学部卒。信州大学大学院繊維工学専攻中退。信州大学繊維学部教務員、同助手を経て現職。現在の専門は繊維工学。高速・高性能な繊維機械の一つ「エアジェット織機」産業革命以来連綿と続く技術開発の偉大な成果スマートフォンは単に高性能ではなく電話を超えたものである「せんい」の未来のヒントかここにあると考える先進繊維工学課程繊維・感性工学系研究から広がる未来卒業後の未来像

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