2014人文
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09いやいや, もちろん, しっかり踊る授業もあります。といってもダンス経験のない人がほとんどなので, それをどう踊らせるか, というのが毎年の私の課題であり楽しみなんだよね。ジャンプをしたり, 音楽のリズムにのってないと, ダンスじゃない, と思う人もいれば, 街中で人が歩くだけの姿にダンスを見出す人もいる。つまり, ダンスってなんだろう? という疑問を持って, それぞれのアプローチで作品をつくろう, という授業をするの。なるほど。でも先生は実際に舞台作品を創っているんですよね。それと授業とどんな接点をもっているんですか ?実際の舞台って, ダンサーが踊れば済むか, というとそうではないんだよね。劇場, 舞台美術, 音楽, 照明, 衣装, 振り付けとそれぞれのセクションで共同作業をしていくんだけど, そこで関わる人すべてに, いかに自分の考えを的確に伝えるかが作品を左右する。最初は文章をつくって, それに基づいて話し合いをするんだけれど, 時には絵や写真, 音楽を使ったり, 読んだ本から引用したり, 身ぶり手ぶりで踊ってみせたりすることだってある。頭の中にある「自分マップ」から生まれる「伝えたいこと」を, 人がわかるようにアピールしなくちゃならない。何かを創作するって, あらゆる伝達ツールを使ったコミュニケーションの集積なの。大学では机上の勉強が多いけど, この授業では, 自分の考えを伝えるために, 実際に身体を動かして表現しながら, 他者と苦しいまでのコミュニケーションをとってもらう。「思っていることを伝達するのは意外とむずかしい」と感じながら, 独自の表現方法を見出して, 最後の「ダンスづくり」という地点にたどりつくわけ。コミュニケーションの技術を実践的に身につけていく授業とも言えると思うよ。ダンスをつくる, といっても, 身体をリズムにあわせて動かすっていう運動系の要素ばかりじゃなくて, もっと個人の意識や表現力を試される深いものなんですね。大変そうだけど達成感がありそう。今日はどうもありがとうございました。インタビュアー | 岡亜衣・石田愛(大学院生:インタビュー当時)北村?北村?

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