2012環境報告書
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◎特集1◎ 震災への取組み山間の被災地・栄村の復旧・復興持続的集落再生のモデルケースに 2011年3月12日、長野―新潟県境で発生した震度6強の長野県北部地震は、周辺地域に甚大な被害を与え、下水内郡栄村では秋山地区を除く全村804世帯2042人が全村避難にまで至りました。それは、3月11日の東日本大震災・福島第一原発事故と共に、地球環境と現代社会、技術と人間のあり方を問い直さないわけにはいかない歴史的大災害でした。 あれから早くも一年半が過ぎますが、信州大学では、その間、全学を挙げて被災地の復旧・復興支援に協力し、大災害を超えて人々の安全・安心の暮らしを支えるための学問研究に取組んできました。これもまた、信大が進めてきた環境教育の一つの成果であり、到達点だとも言えるでしょう。 このような視点から、本特集の第一のテーマとして、全学部横断の中山間地域プロジェクトの取組みと、山岳科学総合研究所の長野県北部地震災害調査研究をクローズアップしました。 震災を越え、子どもの声が響く集落を被害が大きかった栄村青倉地区。被災直後中山間地域プロジェクトと長野県北部地震災害調査研究 震災から1年4カ月が過ぎた2012年7月4日、栄村の復興計画策定委員会は「震災をのりこえ、集落に子どもの元気な声が響く村を」を基本目標とする復興計画の骨子をまとめました。 東北地方の被災地の中には、2011年中に復興計画をまとめ、国の支援を受けられるようにした自治体もありましたが、山間の豪雪地帯であり、震災以前から過疎化・高齢化が深刻な栄村では、復興計画づくりが遅れていました。しかし、それをのりこえ、三つの前提として「安全環境の確保」「地域資源の有効利用」「地域資源の積極的な活用」「集落ごとの特色ある復興」、そして三つの基本方針として「暮らしの拠点・集落の復興・再生」「農業を軸に資源を活かした新たな産業振興」「災害に強い道路ネットワークの構築」を掲げた計画を作成し、実行して行こうとしています。 この計画策定委員会には、農学部の木村和弘名誉教授(農村計画学)が委員長として、また人文学部の村山研一教授(地域社会学)が委員として参加しており、村民の方や村内の各種団体の方と議論を積み重ねてきました。 木村名誉教授は、震災以前から栄村を長年訪ね続け、教育研究のフィールドとして村民の方々にご協力いただいてきた経緯があります。その経験を活かして、豊かな自然環境と農村景観を持つ栄村を、それを緑豊かな栄村(2012年7月)7

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