2012環境報告書
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博士論文環境への取組み2 2-1 環境教育 近年、世界的な蔓延が憂慮されている薬剤耐性菌に対し、消毒薬による医療環境の整備が行われている。次々と出現する薬剤耐性菌に対して使用される消毒薬による環境汚染が懸念され始めている。 現在、一般的に用いられている消毒薬とは異なる原理を有し、半永久的な持続効果を持ち合わせたセラミックス複合材である「Earth-plus」を用いて抗菌活性の評価を行なった。「Earth-plus」はハイドロキシアパタイト(HA)、酸化チタン(TiO2)、銀の3成分からなるセラミックス複合材であり、HAが細菌を吸着し、銀の触媒作用を利用してTiO2から発生するラジカルで細菌を殺菌する。尚、検討に先立ち「Earth-plus」からの溶出銀濃度は殺菌作用を示さない程の極微量であることを確認し、銀はそれ自体で抗菌活性を示さないことを明らかにした。 「Earth-plus」で加工処理した織布および不織布を用いて病院関連感染の原因菌となる黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌について定量的に抗菌活性の評価を実施し、いずれの菌種においても1~3時間後に1/10~1/1000以下の生菌数になり、経時的に増強する殺菌活性が確認された。 「Earth-plus」は、環境にも人体にも影響の無いよう、それぞれの構成成分が微調整されている。又、薬剤ではないことから環境汚染の危惧もなく、次世代の環境材料である。薬剤耐性菌が増加する近年、病院関連感染制御は非常に重要な分野であり、「Earth-plus」の更なる応用が期待されている。Bactericidal activities of woven cotton and nonwoven polypropylene fabrics coated with hydroxyapatite-binding silver/titanium dioxide ceramic nanocomposite “Earth-plus”春日 恵理子博士論文医学系研究科保健学専攻(博士後期課程)医療生命科学分野医療生命科学領域 修了 現在各地で異常気象が報告され、極端な気象の変化が観測されている。気象は我々の健康にどのような影響を及ぼすのだろうか。気温などの気象要因や二酸化窒素をはじめとする大気汚染物質と、死亡率、疾患の発症との関係については、近年になって研究が進んでいるが、これらを個々の疾患に分類して検討した報告や、気候因子の重要な一要素である気圧の効果について分析した研究が少なく、大気汚染物質の影響に関しても本邦における報告が特に少ないのが現状である。 今回2006年4月から2010年3月までの4年間に、伊那中央病院における救急外来を経由した緊急入院患者4355名において、気温、気圧などの気象要因、大気汚染物質と、個々の疾患における発症、特に各心血管疾患、各脳血管疾患との関連を検討した。 寒冷により、急性冠症候群と心不全(ACS and Heart failure)、脳出血(ICH)、脳梗塞(Cerebral infarction)による入院が増加し、気圧の低下により、脳出血(ICH)、心不全、大動脈解離と大動脈瘤破裂による入院が増加していた。(図1,2)心血管疾患よりも脳血管疾患が寒冷の影響をより強く受けていた。また、男性と75歳以上の高齢者では、寒冷による入院リスクの上昇が認められており、寒冷に特に注意すべきと考えられる。大気汚染物質では、NO2がくも膜下出血、SO2が急性冠症候群、Oxが大動脈解離および大動脈瘤破裂のリスクを増大することが示されたが、先行研究と必ずしも一致せず、今後のさらなる研究が必要と考えられた。Effects of weather variability and pollutants on emergency admissions forcardiovascular and cerebrovascular diseases堀 綾博士論文医学系研究科医学系専攻(博士課程)健康・社会医学領域 修了O2-OH�外膜ペプチドグリカン細胞質膜O2-OH�ヒドロキシラジカル(OH�)とスーパーオキシドラジカル(O2-)が細菌の細胞壁を障害する �TiO2( の細菌への作用イメージ図)殺菌原理殺菌原理25図1 気温(℃)と緊急入院数の関係図2 気圧変化(hPa)と緊急入院数の関係

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