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実務の感覚と学問の論理(2010.3.10)

著者
橋本規之准教授

『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子作,講談社)という作品をご存じでしょうか。 クラシック音楽の世界を舞台としたコメディであり,ピアノを学ぶのだめこと野田恵と指揮者を目指す千秋真一を中心に描かれた青春群像劇です。

本作品の啓蒙性が巷間高く評価されていますが,その意義は単にクラシック音楽の知識を親しみやすいかたちで普及したことではありません。それは,将来を嘱望される音楽家の卵たちの研鑽と交流を通じて,献身的な愛と憧れの対象となるクラシック音楽の姿を,まさに正攻法で示してくれたことにあります。人生を賭けて真摯に情熱的に取り組む姿勢が,読者の魂を鼓舞します。

直感的・感覚的に音楽を捉え,楽譜に忠実に演奏することの意味を理解しようとしないのだめ。 彼女の個性を最大限に尊重し,献身的にサポートする千秋。 この二人の関係から私が連想したのは,インド生まれの天才数学者ラマヌジャンとケンブリッジ大学教授ハーディの関係です。

「大学で正規の数学教育を受けていないラマヌジャンは,証明の必要性はもちろん,その概念さえよく分っていなかった。彼の発見した定理にハーディが厳密な証明を与え,論文にするという形の共同研究だった。次々に独創的な共著論文が発表された。 大数学者ハーディをして後に, 『私の数学界への最大貢献はラマヌジャン発見である』 と言わしめるほどだった」
――藤原正彦『心は孤独な数学者』新潮文庫,114頁。

千秋との出会いは,埋もれかけていたのだめの才能を開花させます。もっとも,これは,千秋についても同様です。のだめとの出会いが,彼の音楽性と人間性,そして指揮者としての未来を大きく広げることになります。天才と大秀才の組合せは,互いに補い合うところがあり,相性がよいのでしょう。千秋にとっては,「私のクラシック音楽界への最大貢献は野田恵発見である」ということになるのかもしれません。

経営大学院に籍を置く者の一人として,このような出会いは一つの理想です。実務の感覚と学問の論理。両者の関係を,決して相容れないものと最初から拒絶するのではなく,互いを高め合う補完的な関係として受け容れてみること。実りある成果を生み出す大きな一歩だと思います。


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