海老沼 宏安 教授
エネルギーの安全保障と地球温暖化の防止のため、カーボンニュートラルなバイオマスの総合利用が推進されています。石油、石炭は、大昔の植物バイオマスから変化したもので、燃料、繊維、化成品の原料となっています。これらの製品は、バイオマスからも作ることができ、バイオ燃料、バイオファイバー、グリーンケミカルと呼ばれています。これがバイオリファイナリーです。再生可能なバイオマスの育成から利活用まで、世界中で技術開発が進められています。独自の植物ゲノム工学技術を用いたエネルギー作物の改良により、環境保全とバイオマス生産の両立を目指したバイオリファイナリー技術の研究開発に取り組んでいきます。
玉田 靖 教授
シルクは、繊維の女王として6000年以上前から利用されている優れた衣料用材料です。また、カイコという生物が生産する環境に優しい生物資源材料でもあります。シルクの衣料分野を超えた新しい利用技術の開発を中心に研究を進めています。絹糸は外科手術で傷を縫うときの糸として古くから現在も臨床で使用されています。また、最近の研究では、シルクから作った材料が、再生医療で細胞の足場として、良い性質を示すことが多く報告されています。研究室では、シルクの医療分野への活用を目標に、シルクの構造や性質を新たな観点で解析し、さらに、化学修飾、タンパク質工学、遺伝子組換え技術による機能性シルクの創出を目指しています。
林田 信明 教授
植物の形がどうやって決まっているのかは、まだ良くわかっていません。作物の形を自由に作り変えることができれば、農業の大革命になります。ところでハクサイやミズナやカブなどは、まるで形が違いますが実は同じ生き物です。同じ生き物なのになぜこれほど形が違うのかを調べることで、植物の形がどのように作られているのかを研究しています(図1)。
植物も病気にかかります。原因はウィルスや病原菌などさまざまで、この点でも人間と一緒です。農作物の場合には、同じ仲間が一カ所にたくさん育っているので、インフルエンザのように急激に病気が広まってしまう事があります。農薬を使わないで農作物を病気から守る究極の方法は、病気にかからない品種を作る事です。そのために必要となる、病気に強い植物の遺伝子の研究を行っています(図2)。
平林 公男 教授
このすばらしい信州の自然環境を、私たちの次の世代の人たちにより良い形で「どのように残していったらよいのか」、「そのためには今、何をするべきなのか」を常に考えています。「自然との共存」は大変なことです。自然のこと、生き物のことを良く知ることにより、その方策を見つけていくことが大切ではないでしょうか。
私は生命にとってとても大切な「水」環境に大変興味をもっています。水環境の変化をいち早く教えてくれる指標となる生き物、「指標生物」を用いて、環境からのシグナルを見落とさないように心がけています。現在、取り扱っている「指標生物」としては水生昆虫類が主なものです。トビケラ類、ガガンボ類、ユスリカ類など、大変興味深い生態をもっている生物群集が多いからです。
新井 亮一 助教
あらゆる生物に必要不可欠な生体分子であるタンパク質を主な研究対象として、「タンパク質を見る、調べる、創る、応用する研究」を精力的に展開しています。主にX線結晶構造解析法によりタンパク質の立体構造を原子レベルで明らかにするとともに、生化学、分子生物学、遺伝子工学的手法を駆使して、タンパク質の構造と機能の詳細を解明することを目指しています。また、タンパク質を創る、応用する研究として「タンパク質工学」研究を行っています。タンパク質を有用な生物資源ととらえ、基礎研究だけでなく、将来的に応用面でも社会に役立てていくことを目指して、タンパク質を変異・改良する研究や、人工タンパク質をデザイン・創出する研究に取り組んでいます。
繊維学部附属農場
繊維学部附属農場は、繊維関連動植物の保存・栽培・育成や、フィールドサイエンスに関わる分野の研究実習・教育を行っています。附属農場は、応用生物学系内のみならず、他系や他施設と連携を保ちながら、繊維学部の教育・研究を支援しています。当課程の特徴の一つとして、附属農場に属する教員、及び技術職員が、当課程の教育研究により密接に関与し、ミクロな実験科学の世界と実際の自然環境下における現象を紡ぐフィールドサイエンスの教育を実践しています(http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/textiles/farm/)。