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植物と動物から見る自然環境

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環境省によって絶滅危惧種に指定されているオモダカ Sagittaria trifoliaは,かつてはありふれた水田の雑草だったが,除草剤の使用,作業の機械化で今や見る影もない.

しかし休耕田を再び耕し,水を入れることでこうした絶滅危惧植物が再生することが分かった.身近な自然を管理・再生する適切な手法の開発に成功した.



私の研究室では,植物生態学を中心に,森林と昆虫の関係植生とノウサギの関係,その他,生き物を扱った生態系を対象に研究,教育をしています.

大学の研究室は,扱う対象の違いだけでなく,研究の進め方について,いろいろなスタイルがあります.例えば,ある教授が特定の分野の権威で,そこに所属した学生諸君はこぞってそれに関連する研究をする,というスタイルがあります.一方,研究テーマを学生諸君に自分で考えさせ,自由に研究を進めるスタイルの研究室があります.

私の研究室は後者,つまり,学生諸君に研究テーマを考えてもらい,それを大学卒業に見合ったレベルまで高めていき,自分の努力で成し遂げてもらいます.上記の森林と昆虫の関係,植生とノウサギの関係なども,実際に私の研究室の学生が取り組んでもらっているテーマです.

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湿原の植物は,立地の水分環境によって生育している種が異なる.この関係をきちんと把握しておけば,逆に植物からその場の水分環境を知ることが出来る.
また,今後湿原が乾燥していったときに,どの様な植物が消え,どの様な植物が多くなるかを推測することが出来る.
ここでは物理的環境を計測するのと同時に,植物をたくさん知ることが重要.



学生諸君にとっては,まず自分で研究テーマを見つけることが重要です.といっても,はじめから難しいことなんて分かりませんから,何が好きか,どこへ行きたいか,といったことが取っ掛かりになります.

スキー場の植生に取りくんだ学生の話をしましょう.この学生は競技スキー部に入って活躍しており,「何かスキー場でやれるものを...」と相談に来たのがきっかけでした.雪のない時のスキー場に対するイメージは,普通の人はあまりもっていません.私もでした.そこで近くのスキー場に実際に植生などを見に行きました.すると,スキー場というのはゲレンデだけでなく,それを取り巻く森林もあれば,ゴンドラ線の下などでゲレンデとは違う草刈りをしている所など,様々な環境が入り組んでおり,多様な植物が生育していることが分かりました.よし,ここで研究をしよう,と.テーマは,スキー場における異なる管理が維持する多様な植生の解明,です.

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スキー場は,ゲレンデの土壌浸食や雪の融解防止剤に使われる硫安などの悪影響が懸念されている.
しかしその一方で,定期的な草刈りが行われるため,現在では減少しつつある草原性草本植物の貴重な生育の場になっている.
こうしたことを明らかにすることで,適正な管理によって自然を守れる.
左はフタバムグラ(red plant),
右はアリノトウグサ.

その後は,どうやったらそうした多様な立地と,そこに生育する多様な植物を評価できるかを考えてもらいます.まず光環境ですが,魚眼レンズで全天写真を撮影し,植物の葉で被われている部分,空白の部分をコンピューターで解析し,それによって「どれだけ明るいか」の指標を作成しました.植物の種組成は,いわゆる植生調査を行います.また,草刈りの頻度が植物の種組成に影響がありそうなので,これをスキー場管理会社の方々に聞き,こうした立地別の組成の違いを調査しました. これによって,スキー場がもつ様々な立地環境,そして草刈りの頻度の違いが,貴重な草原植生を維持していることを明らかにすることができました.

取ったデータをまとめるには,統計処理をするために,これまで身につけてきた数学が役立ちます.また,関連研究をレビューするために英語の論文を読まなければなりません.こうした作業を通じて,これまで高校,大学と学んできた知識,経験をすべて生かして卒業研究をまとめることが出来るのです.

自分で問題点を見つけ,どう解決するかを自分で考え,自分で解決していく.そしてまわりの仲間と助け合う.こうしたことが,皆さんが社会に出て生きていく上で一番大切なことではないでしょうか.ですから材料やテーマは何でも良いのです.自分が興味を持って,情熱をもって取り組めば,どこの大学の研究にも負けない内容に仕上げることが出来ます.

皆さんには楽しみながらひとつのことを達成する喜びを見つけてほしいと思っています.

キーワード: 植物生態,植生,環境保全

島野 光司