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やっぱり数学が好き!!

現在の研究テーマ:関数の仲間に注目して...

数学の授業で,次のような練習問題に出会ったことはありませんか?

問題1
1次関数\(y=mx+n\)のグラフが,2点\((0, 1)\),\((1,3)\)を通るとき,係数\(m\),\(n\)の値を求めなさい。
問題2
2次関数\(y=ax^2 + bx + c\)のグラフが,3点\((-1, -1)\),\((0, -1)\),\((1, 1)\)を通るとき,係数\(a\),\(b\),\(c\)の値を求めなさい。

これらの類題をいくつか解いていると,次のことに気づくと思います。

実は,これらの内容には,私の研究の基になっている「関数解析学」の考え方が含まれています。それを説明しましょう。

(1)では,1次関数という関数の種類を,(2)では,2次関数という関数の種類を取り上げています。1次関数とは, \[ y = 2x \mbox{,} \quad y = -x +1 \mbox{,} \quad y = \frac{1}{\,4\,} x - \frac{1}{\,2\,} \] などの関数の仲間です。そして,2次関数は, \[ y = x^2 \mbox{,} \quad y = 2 x^2 - x + 1 \mbox{,} \quad y = -x^2 + 1 \] などの関数の仲間です。(1),(2)では,関数の仲間に共通して成り立つことがらを述べています。このように,ある種の関数の仲間を取り上げ,その「仲間に共通する性質」を調べるのが,「関数解析学」の考え方です。

さて,「仲間に共通する性質」は,日常会話でもよく出てきます。たとえば, \[ \mbox{『日本人は勤勉だ』} \] という話題。これは,日本人という仲間集団についての性質を述べていますね。人は十人十色で,個々の日本人はすべて勤勉なわけではないけれども,全体的に見て勤勉な印象があったのでしょう。大雑把な観点ではありますが,日本人の勤勉な特質を意識して活かしていくことは大事なことです。ものを個々に調べるだけでなく,ある仲間集団としてとらえることも有効だという例です。「関数解析学」は,このような考え方を,数学の世界で利用したものです。

中学校・高等学校の数学には,数学の奥深い考え方が潜んでいます。また,それは,日常的な考え方にもつながっています。そんなお話を通して,私の専門分野である「関数解析学」の考え方を紹介させていただきました。

研究領域:関数の空間(スペース) / 関数の環

数の学問「数学」では,種々の数が登場します。私の専門分野の「関数解析学」では,実数と複素数が重要な役割を果たします。ここでは,実数についてお話しましょう。実数とは,数直線上の点で表される数と考えてください。数直線は,見た目は一本の直線にすぎませんが,いくつか大切な性質をもっています。3つ紹介します。

1つ目の性質は,数直線の上で, \[ 1 + 2 = 3 \mbox{,} \quad 3 \times 4 = 12 \] というように,たし算・かけ算などの演算ができることです。このような演算に着目して,抽象的な枠組みを作っていく数学の分野を,「代数学」といいます。私たちの学科の数理構造講座には,代数学の専門家がいます。その先生方のページをご覧いただくと,代数学の素晴らしさがわかると思います。

2つ目の性質は,数直線において, \[ 1 \lt 2 \qquad \mbox{(1は2より0に近い)} \] といった大小(遠近)関係があることです。大小(遠近)関係は,距離(あるいは位相)の考えを生みます。このような考えからも,きれいな抽象理論が展開できます。この方面の研究は「幾何学」と呼ばれます。私たちの学科の空間構造講座には,幾何学の専門家がいます。その先生方のページをご覧いただくと,幾何学の素晴らしさがわかると思います。

3つ目の性質。それは,数直線が,ものすごくたくさん点が密に連なったものであるということです。このことを,数学の言葉で「実数の完備性」といいます。完備性は,幾何学的な概念ですが,「解析学」に近い要素もあります。ここで,3つ目の数学の分野「解析学」が登場しました。「解析学」は,簡単には「関数」を研究する分野といえ,非常に広範囲です。私たちの学科の数理解析講座には,解析学の専門家がいます。その先生方のページをご覧いただくと,解析学の素晴らしさがわかると思います。

さて,「関数の仲間」を研究する「関数解析学」は,その名のとおり,「解析学」の一部です。そして,「関数の仲間」には,上に述べた「代数学」の枠組みや,「幾何学」の理論をあてはめることができるのです。そうすることで,いろいろな問題に挑戦できるようになります。当然,問題の種類によって,考える「関数の仲間」は変わります。そのときどきの「関数の仲間」は,尽きない興味から,宇宙空間(space)のような広がりが連想されるからでしょうか ――「関数空間」(function space)と呼ばれています。私は,この「関数空間」について研究しています。とくに,その関数の仲間集団がより緊密な輪をもっている「関数環」と呼ばれるものに興味があり,その理論展開を基にした研究をすすめています。最近,「関数環」の研究グループでは,若手の研究者も増えてきています。私は,この方面の研究が発展していくよう,貢献していきたいと思っています。

これまで,数学のいろいろな分野の名前が出てたので,図にまとめてみます。

\[ \mbox{数学} \supset \mbox{解析学} \supset \begin{array}[t]{c} \mbox{関数解析学} \\[-2mm] \cup \\[-2mm] \mbox{ 関数空間論} \\[-2mm] \cup \\[-1.5mm] \mbox{ 関数環論} \end{array} \left. \begin{array}{c@{ \ }l} \swarrow & \mbox{代数学} \\ \!\! \leftarrow & \mbox{幾何学} \\ \nwarrow & \mbox{解析学} \end{array} \right\} \mbox{数学} \]

図からわかるように,私の研究分野「関数解析学」は,「数学」のほんの一部ですが,「数学」を構成する3分野「代数学」「幾何学」「解析学」のどれにも関連があり,それぞれの素晴らしさが凝縮されて詰まっています。だからこそ,おもしろいのです。たぶん,私は,数学が好きなのでしょうねぇ。

さらに,上の図を発展させると,「数学」自体,「自然科学」の一部だということに思い至ります。私は,信州の大自然の中に身をおくと,その美しさと壮大さに感動し,心が豊かになります。それは,数学の美しさと壮大さにつながるからでしょうか?間接的にですが,私は,信州の大自然からも力をもらっている気がしています。

信州大学のある長野県は,美しい大自然に恵まれています。また,理学部 数理・自然情報科学科は,「代数学」「幾何学」「解析学」のスタッフ構成が充実しています。「関数解析学」の研究をすすめる私には,たいへん望ましい環境です。同じように,数学や自然が好きな方には,信州大学 理学部 数理・自然情報科学科は,またとない環境といえましょう。

問題の答 ---------------------
問題1. \(m=2\), \(n=1\). \(\quad\) 問題2. \(a=1\), \(b=1\), \(c=-1\).

高木 啓行