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Construction of Functional Organic Molecules

現在の研究テーマ:新規芳香族化合物の合成・反応と物理化学的性質に関する研究

芳香族化合物というと6角形のベンゼン誘導体がおなじみですが,私は7角形と5角形が縮環した新規芳香族化合物の1つである『アズレン』という化合物の合成や物性に興味を持って研究を進めています。アズレンは\(C_{10}H_8\)の分子式で表され7員環と5員環が縮環した10π電子系の化合物であり,6員環同士が縮環したナフタレン(\(C_{10}H_8\))の異性体ですが,その色調はナフタレンと大きく異なり,ナフタレンは無色の化合物であるのに対し,アズレンは非常に美しい青色を有しています。

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ナフタレン                  アズレン



またアズレン誘導体の中には抗炎症作用や抗潰瘍活性など薬理活性を示すものが数多く存在し,近年では抗腫瘍活性を示すアズレン誘導体も見出され医薬品や化粧品等に幅広く用いられています。また近年では材料化学分野への応用も期待されており,液晶性を示すアズレン誘導体も見出されています。そのため新規なアズレン誘導体の合成と物理的性質の解明は,医薬品の開発や機能性材料を作るうえで重要な課題であると考えています。そこで私は新規なアズレン誘導体を合成するための反応開発と合成した化合物の物理的性質の解明を行い,医薬品や有機材料などの機能性分子の構築を目指して研究を進めています。

現在行っている研究テーマの1つに,アズレン環の酸化還元活性と荷電状態における色調の大きな変化を利用した多段階酸化還元系の構築と有機エレクトロクロミズム系の構築が挙げられます。これまでの有機化合物を利用した有機エレクトロクロミズム系においては,生成するラジカルイオン状態の安定性に問題が残り,電気化学的還元条件下においては色調の変化を示すものの可逆性の点では課題が残っていました。当研究室では,発色団としてアズレン環,酸化還元活性団としてテトラシアノブタジエンをπ共役系に複数個配置することで,新規な有機エレクトロクロミズム系の構築に成功しています。次ページに示した化合物を合成し,この化合物の多価イオン状態をサイクリックボルタンメトリー法により検討を加えた結果,置換したテトラシアノブタジエンユニット数に比例した電子数を持った可逆な還元波が観測されました。

またエレクトロクロミズムについては電解スペクトルにより検討を加えた結果,大きな色調の変化を伴った多電子の酸化還元系として機能し,多段階に色調が変化する有機エレクトロクロミズム材料への応用が期待できるということが明らかになっています。

高校生へのメッセージ

化学の道に進んだ理由
研究職に就きたいと思っていましたので,理系に進むことを決めていました。化学科と生物学科のどちらに進学しようか迷いましたが,世の中に新しいモノを生み出したいという思いから化学科へ進学したと記憶しています。

大学進学に向けてのアドバイス
大学受験を控えた皆さんは大学に合格するために必死に勉強に励んでいることと思います。しかし「受験科目でない科目は勉強しない」ということはお勧めしません。大学では,どんな学問分野を選ぼうと,その分野の理解を深めるためには他の分野も学ばなくてはならなくなります。そのためにも(時間は無いかもしれませんが...)高校生時代から幅広い分野に興味を示し,勉強することは重要です。

私の研究室
人類が直面している環境やエネルギーの問題を解決するには,問題点を自然科学の立場から把握することが大切です。化学は科学の中心的立場にあり,原子や分子のレベルから解き明かして行きます。

化学の中でも私が専門とする有機合成化学は『ありふれた原料』から『付加価値』のある物を合成する,いわば錬金術のような研究分野です。特に資源の乏しい日本では廃棄物を出さずに『付加価値』のある物を合成する研究や技術は不可欠です。当研究室ではこのような技術を確立するための知識や考え方を研究を通して学んでいきます。

私の授業内容
3年生の有機化学実験,有機反応論を担当しています。有機合成化学は有用な機能を示す複雑な構造の有機化合物を,簡単な有機化合物から数段階で作り出す方法を開発する学問分野ですが,1つ1つの反応を理解していなければ有用な化合物を作ることは出来ません。そこで有機反応論では,有機合成化学の基礎となる有機反応を講義と演習を通して学んでいきます。

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庄子 卓