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生物の共生と共進化を探る

動物と植物の共進化

私の興味は、生物と生物が互いに関わり合うことが、生物の性質の進化にどのような影響をおよぼすのかを探ることにあります。

1. 植物とアリの共進化
植物は動物に食べられないためにいろいろな性質を進化させています。例えば熱帯のオオバギという木は、幹の内部に凶暴なアリをすまわせています。このアリは植物を食べに来る昆虫を撃退します。そのお返しに植物は栄養体とよばれる粒を分泌してアリに与えます。さらに、アリは巣内でカイガラムシという昆虫を「放牧」しており、それが排泄する甘露も餌にしています。

この三者のDNA 解析から、オオバギ植物29 種、共生アリ17 系統、共生カイガラムシ6 系統は種と種が緊密に関係しながら、約1600 万年にわたって進化・多様化してきたことがわかってきました。

私たちは、なぜ生物がこのように多様で複雑な相互関係をむすぶように進化してきたのか、また、似たような種が、互いに競争排除することなく狭い地域内で共存していられるのはなぜか、といったテーマに取り組んでいます。

2. アリ-アブラムシ、アリ-チョウの共進化
アリは生態系で非常に重要な役割を果たしています。このため地球上にはアリと友好関係をむすんだり、アリに寄生したりする生物がたくさん進化してきました。例えばアリに甘露を与えるアブラムシ類や、アリの巣へ入り込んでアリの幼虫を食べるチョウの幼虫などです。

私たちはこれらについて、信州を中心としたフィールド調査、DNA シーケンサーを用いた分子系統解析、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いた種間認識物質の化学分析、量的遺伝解析などの手法を組み合わせてその共進化のメカニズムにアプローチしています。

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アリ植物をめぐる共生系

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「ボディガード」として植物に住みこむ共生アリ

好きなことにこだわって!

みなさんは今、自分がどんな道に進むべきか、ぼんやりと(?)考えているところではないでしょうか?そんなみなさんへの私のメッセージは「好きなことにこだわって!」です。得意なこと、好きなこと、やりたいこと、知りたいことが今ありますか?ない人は心配しないで。大学で見つければいい。でも好きなことがある人はぜひそれにこだわって下さい。

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コマツナギの花を訪れるミヤマシジミ(幼虫はアリ共生性)

1. 「理学部な人」とは?
世界史の教科書を読み始めると10 分後には寝てしまうけれど昆虫図鑑なら何時間でも眺めていられるあなた。古文は苦手だけど動物園の動物なら1 日中見ていても飽きないあなた。そんなあなたをわれわれ(信大・理・生物)は待っています。 同じ生物系でも、理学部、農学部、獣医学部、医学部、薬学部など、いろいろあります。その中で理学部は、就職に直結する知識・技能の習得という点では、ひょっとしたら目立たないほうかもしれません。しかし、本当に生き物が好きなあなた。とことん彼らの生きざまを調べたいと思っているあなた。生物とは何かをつきつめて知りたいあなた。そんなあなたにとって理学部での4 年間は替えがたいものになるにちがいありません。

2. 私の高校-大学時代
私の高校時代はどちらかというと灰色でした。それは中学まで大好きだった昆虫採集や飼育をセーブして「勉強」に専念したからかもしれません。しかしはやる気持ちは抑えがたく、時間を見つけては採集旅行に行っていました。いま思えば、やりたいことを熟成させる「サナギ」の時期でした。 好きなことをやれる大学に入ったら「羽化」しました。日本の山へ登りまくり、ハチの観察をし、植生調査に加わり、3 年生の終わりには念願のボルネオ行きを果たしました。

3. なぜ信州か?
生物好きのあなたに信州大学をすすめる理由。その一つは、近場でさまざまな面白い生き物に出会えることです。しかも「稀に」ではなく「ごく普通に」。面白い行動・生態をもつ生物が身近に生息していることは、野外研究をすすめる上で大きなメリットです。

もう一つの理由は「そういう信州」を選んだ仲間たちがこの地に集結しているという点です。私も大学へ入るときに「集結」したかったクチですが、第一志望の大学にたまたま合格してしまったため、ここへ来るのが少し遅れました。いずれにしても信州には、大学の内外を問わず「とことんやりたい人」、そして「ナチュラリスト」が集まってきていると実感しています。

4. 大学で何を学ぶか?
「ナチュラリスト」として入学して、同じ「ナチュラリスト」として卒業するのなら大学へ入る意味はありません。では理学部で何を学ぶのか。

それは「論理力」と「批判的思考力」だと思います。
ゴチャゴチャしていたものを整理して仮説をたて、それを実証してみせることによって人を納得させる論理の力。そして、他人の論理に対して疑問をもち、議論し、検証していく批判の力。この二つによって「ナチュラリスト」から「サイエンティスト」への脱皮が可能になると思います。

5. より詳しく知るには...
学生の研究テーマなど、私の研究室の詳細についてはホームページを見てください。また、私の授業については[信州大学 シラバス]でグーグル検索して信大シラバスへ入り、その中で検索すれば行き着けます。 なお、信大の多くの授業は時期を決めて無料公開されています。またそれ以外に、有料の市民開放授業もあります。[信州大学 授業公開]で検索してチェックしてみて下さい。

市野 隆雄