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花里 孝幸

花里 孝幸

山岳科学研究所

講座:水生生態系研究部門
職名:教授
略歴:
1980 - , 国立公害研究所(現:国立環境研究所) 研究員
1991 - , 国立環境研究所 主任研究員
1995 - , 信州大学 理学部(附属臨湖実験所) 教授
1996 - 2001 , 信州大学 理学部(附属臨湖実験所) 所長
2001 - , 信州大学 (山地水環境教育研究センター) 教授
2001 - , 信州大学 (山地水環境教育研究センター) センター長
2006 - , 信州大学 (山岳科学総合研究所) 教授

キーワード:ミジンコ
ホームページ:http://www.water.shinshu-u.ac.jp/~hanazato/toppage/Top.html
SOARリンク:SOARを見る

プランクトン生態学・生態毒性学

湖は閉鎖的な環境を持つため、そこに作られる生態系は他の生態系と区別しやすい。また、湖の生態系の主役はプランクトンである。プランクトン群集には、生産者である植物プランクトン、一次消費者(植食動物)であるミジンコやワムシ、二次消費者(肉食動物)である捕食性動物プランクトン、そして分解者であるバクテリアがいる。すなわち、生態系の全ての構成員が揃っている。しかも、プランクトンは湖内で比較的均一に分布するため、一定の体積の湖水を採ってその中のプランクトンを調べることで、定量的なデータを得やすい。そのため、湖内の環境の変化に伴う生物群集の変化を捉えることが比較的容易にできる。それにより、環境と生物群集との相互関係を見ることができる。そして、それに及ぼす人間活動の影響を解析できる。湖は、生態系に及ぼす人間の影響を解析するには理想的な場所なのだ。

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イカダモ(緑藻)

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ツボワムシ(0.2mm)

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ニセゾウミジンコ(0.5mm)

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ノロ(捕食者:5mm)

諏訪湖 (標高759m, 湖面積13.3km2, 最大水深約6.5m) 研究室は諏訪湖畔にある。目の前にある諏訪湖は地域のシンボル。1970年代に水質汚濁が著しく進み、汚れた湖として全国的に有名になった。その後の努力の結果、今は顕著に水質浄化が進んでいる。ところが、それに伴って生態系が大きく変化し、新たな問題も生じている。研究室では、水質の変化に伴う生態系構造の変化を追い、そのメカニズムを解析している。諏訪湖は環境問題を考える絶好のフィールドだ。

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諏訪湖での調査風景

捕食者と被食者間の闘い
マギレミジンコは捕食者(フサカ幼虫)が放出する匂い物質に反応して頭を尖らせ、食べられ難くなる。これにより、捕食者は捕食速度を下げることになり、または他の餌生物を食べるようになる。すると、食物連鎖を介した物質の移動速度や経路が変わり、生態系が変化することになる。

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(左)通常の個体(右)尖頭を持つ個体
マギレミジンコ(0.4~1.3mm)

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フサカ幼虫(10mm)

水槽を用いて生物群集への人間影響を調べる
プランクトンの多くは休眠卵で越冬する。春になると一部の休眠卵からプランクトンが発生するが、多くの休眠卵は湖底の泥の中でそのまま眠り続けている。これが生物群集の実験的解析を容易にしてくれるのである。湖の泥を採ってきて水槽に入れておくと、様々なプランクトンが休眠卵から発生し、水槽の中にはプランクトン群集がつくられる。この水槽に農薬を投与したり水槽内の水温を上げることで、有害化学物質汚染や温暖化に対する生物群集の反応を調べることができる。プランクトンは、生物群集の研究をするのにもとても便利な生き物なのである。

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温度と光環境をコントロールした部屋で行われている水槽実験

バイオマニピュレーションによる水質浄化
近年、魚が湖のプランクトン群集を変え、水質に影響を与えていることがわかってきた。そこで、人為的に生態系構造を変えて水質浄化を図る新しい方法「バイオマニピュレーション」の研究も重要なテーマである。この方法では、ミジンコを食べる魚を減らし、水質汚濁の原因となる植物プランクトンを食べる大型ミジンコを増やす。

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花里孝幸の著書

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ミジンコ:その生態と湖沼環境問題
名古屋大学出版会(1998)

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ミジンコ先生の水環境ゼミ
地人書館(2006)

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ミジンコはすごい!
岩波ジュニア新書(2006)

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ネッシーに学ぶ生態系
岩波書店(2008)