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久保 浩義

久保 浩義

生物学コース

講座:植物分子生理学分野
職名:教授
略歴:
1958年 富山県生まれ
1977年 富山第一高校卒
1982年 京都大学農学部卒
1984年 京都大学大学院農学研究科修士課程修了
1988年 京都大学大学院農学研究科博士課程単位取得退学
信州大学理学部生物学科助手、講師を経て現職。
キーワード:植物の代謝
ホームページ:http://science.shinshu-u.ac.jp/~bios/PhysDev/kuboy/homepage/HOMEPAGE.HTML
SOARリンク:SOARを見る

植物の不思議を解き明かす

植物の色素合成を調節しているしくみの解明

私の研究室では、植物の代謝や形態形成などを遺伝子レベルで調べる研究をおこなっています。高校生物の教科書でいうと、「植物の反応と調節」が最も近い分野になります。実験材料には、シロイヌナズナやゼニゴケを使っています。シロイヌナズナは、どこにでも生えている何の変哲もない雑草で、ゼニゴケに至っては、じめじめした所にはびこり、どちらかといえば嫌われ者の植物です。なぜこのようなマイナーな植物を材料にしているかといえば、育てやすいとか遺伝子導入が容易といった実験材料としての有利な性質をたくさん持っているからです。また、シロイヌナズナのような高等植物とゼニゴケのような下等植物を比較することで、植物の進化についても調べることができます。

現在最も力を入れているのは、花弁や紅葉した葉などに含まれるアントシアニンという植物色素に関する研究です。アントシアニンは必要なときに必要な場所でのみ作られます。たとえばアサガオの花を見ると、アントシアニンはつぼみが成長して大きくなってきた段階で作られ始めますが、色素が作られるのは花弁だけで、その他の部分には作られません。また、秋の紅葉が鮮やかになるには、日によく当たることと、気温が下がることが大切だといわれますが、これはアントシアニンの生合成が光や温度によって調節されているためです。このようにアントシアニンをいつどこで作るかを調節している遺伝子に興味を持って調べています。また、アントシアニン生合成に関わる遺伝子のほかに、植物や菌類の形態形成や発生を調節している遺伝子についても調べています。

おもしろいと思うことを見つけて

植物はおもしろい
私が植物に興味を持つようになったのは、大学に入学した頃に、花を咲かせるホルモンの研究をしている先生の話を聞いて、おもしろいと感じたことがきっかけでした。植物は、動物には見られないさまざまな特徴を持っています。そもそも植物は、太陽光エネルギーを利用して、空気中の二酸化炭素と土の中の無機栄養分と水だけで自分の生育に必要なすべての物質を作ることができるすぐれものです。さらに、植物は動くことができませんから、周囲の環境情報を敏感に察知し、それに対処できる能力を進化させてきました。最もきわだっているのは光に対する応答で、光の方向、強さ、色、日の長さなどを、おどろくほど鋭敏に感じることができます。もちろん光だけでなく、温度、水分、重力などのいろいろな環境要因を認識し、自分の発育成長を調節しています。また植物は、動物を誘引したり、動物が忌避するようないろいろな代謝産物を蓄積したりします。その他にも植物はさまざまな興味深い現象を示します。いつもジッと動かず、一見生きているのかどうかもわからないような植物ですが、いろいろと生き物の不思議を教えてくれます。

理学部での研究
植物の研究といえば、病害虫に強い作物や栄養価を高めた食料作物、最近ではバイオエタノールなどと、応用面が注目されていますが、私のおこなっている研究は、すぐに応用されて目に見えるかたちで人の役にたつというものではありません。一般的に、理学部でおこなわれている研究は他の学部のものとくらべ、目的がわかりにくいのではないかと思います。「そんなことを調べてなにになるの」とよく聞かれます。しかし、そのような研究も、ながい目で見ると予想もしなかったところで役立っているということは多数あります。たとえば、フランクリンという人は、雷が静電気であることを確かめたことで有名ですが、フランクリンは電気を役立てようとか雷の被害を避けるための方法を考えようとして雷雨の中で凧をあげていたわけではなく、自分が興味を持ったことを確かめようとしていただけだと思います。しかし、私たちはフランクリンのような研究の積み重ねで、今日あるような便利さを享受しているわけです。「おもしろいと思ったことを自由に研究し、その結果が意図もしないところでいろいろな形で役立っていく」、理学部での研究はそのようなものであってほしいと思います。

大学に入るまでに
大学に入るまでにやっておくべきことは、まずは、基礎的な学力を十分身に付けておくことです。入学試験に通るためだけではなく、大学に入ってからも基礎的な学力がものをいってきます。大学ではレポートを書く機会が多くありますが、そういったレポートをきちんとした日本語で書けるようにしておくことが大切です。また、多くの専門書や論文は英語で書かれているので、英語力もとても重要です。さらに、高校レベルの化学や数学を理解しているかどうかで、大学での生物学の理解度がずいぶん変わってきます。このように、大学で生物学を勉強したいと思っている人でも、国語、英語、数学、物理や化学などの分野をしっかりと勉強しておくことは重要なことです。しかし、それだけだと、大学に入ってから何をやりたいかを見つけることができず、勉強に興味を失ってしまう場合がしばしば見受けられます。高校までは、なにをどこまで勉強するかがほぼ決められており、目標をたてやすいのですが、大学では必修科目以外は、なにをどこまで勉強するかはすべて自分で決めなければいけません。また、自分で興味を見出し、主体的に勉強することが求められます。そのような主体的勉強の習慣を高校の時から心掛けておくとよいでしょう。ブルーバックスや中公新書など一般向けの入門書を読んでみるのもよいと思います。いろいろと情報網を張り巡らし、おもしろいと思えることを見つけてみて下さい。

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写真:実験材料のシロイヌナズナ

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写真:実験材料のゼニゴケ