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尾関 寿美男

尾関 寿美男

化学コース

講座:物理化学分野
職名:教授
略歴:
1976年 名古屋大学理学部化学科卒業
1981年 名古屋大学大学院理学研究科化学専攻修了,理学博士
1981年 千葉大学理学部化学科助手
1986年 同講師
1991年同助教授
1997年 信州大学理学部化学科教授;現在に至る。
1989年-1990年ワシントン大学(セントルイス)化学科博士研究員。
キーワード:磁場
ホームページ:http://science.shinshu-u.ac.jp/~pcmag/wp/
SOARリンク:SOARを見る

磁場や光であやつる物質の構造や性質

現在の研究テーマ:磁場の中での物づくりと物の性質や生命への磁場の影響

材料科学の進展はめざましく、自己集合で自然にあるいは意図的に生まれる物質の構造、性質、機能だけでは対応できなくなっています。ミクロ単位でもつ特性を平均化によって失わせず、マクロな単位で発揮させることが必要です。 これらを実現する手段の一つに外場があります。流れ、摩擦、重力、光,電場などが利用され,特性の向上や新しい機能が付与されています。磁場も物質・材料開発の有用なエネルギーであることが確かめられつつあります。あらゆる物質は電子に由来する磁性をもつからです。

磁場は物質透過性のため物質の表面から深部まで同じように磁場効果を及ぼすことができる、極めてやさしく、クリーンなエネルギーです。磁場は量子力学的効果、熱力学効果、力学的効果を及ぼします。化学反応の速度や生成物は孤立電子の対へ磁場が作用して変化します。物質は磁場中で磁気エネルギーをもちますので、磁場は物質の状態に影響します。しかし、磁気エネルギーは、有機物などの非磁性体では10Tの磁場(地磁気0.00005T; 掲示用磁石0.1T)中でさえ室温の熱エネルギーよりも遥かに小さいので、磁場の影響は通常現れません。一方、磁場中で動くイオンや電子や勾配磁場中の粒子は力を受け、濃度変化や対流などに思いのほか大きな変化が現れます。

そこで、磁場を利用して、(i) 磁場中での物質合成による構造制御、(ii) 物質の磁場による構造-物性制御,(iii) 磁気処理による構造規制と機能誘導を目指して、無機および有機低分子から高分子・ゲルに至る弱磁性物質,水素吸蔵合金などの磁性物質、高温超伝導体のようなセラミックス、光半導体などの微粒子や物体の構造および物性の磁場制御を試みています。有機ゲルや脂質集合体の体積変化、脂質膜でのトンネル電子移動、低温でのトンネル反応、大腸菌の殺菌、花粉管の伸長を磁場によって制御することに成功しています。

継続的にコロイド・界面化学の分野で研究してきており、水や石鹸水の構造、吸着による大気や水の浄化、有害物質の分解・排出制御、水素利用、などを研究しています。これらの伝統的な化学に磁場を導入して、磁場下での界面科学を例として、新しい"磁気科学"を確立することを目指しています。

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ゼロ磁場               10T

溶液中のイソプロピルアクリルアミドゲルに10Tの磁場をかけると収縮し、磁場を除くと元に戻る様子

高校生へのメッセージ

化学の道に進んだ理由
中学2年の頃だったか、原子価を徹底的に教わりました。これがその後の化学を面白くしてくれました。しかし、大学に入ったときに最も望んでいた道は化学ではありません。将来は数学か生物学、それをできれば文学をやりながらと考えていました。教員も視野に入れていました。それで、大学は学部募集している大学を選びました。入学後にすべて試してみて、その短い検証の結果化学の道に進みました。名著と噂されている本を読み、自主ゼミにも参加しました。生物学教授に発生学を教わりに行き、そこで、生物物理に出会いました。研究としての数学には演習問題を解く力とは違う才能が必要と感じ、生物学には複雑に絡み合う事実を解きほぐすための根気強さや鋭い洞察力が必要と感じました。2年生になる頃には物理が面白く、思いの外理解もできるようになっていましたが、研究者として物理学の発展に寄与できるかを考えると自信が持てませんでした。
当時、化学科は「鬼の化学科」として恐れられており、人気がありませんでした。徹夜が続くとか、留年が多いとかが理由です。化学でなら発見もできるのではないかと思い描いて、研究室は物理化学研究室を選びました。人気のない研究室でしたが、生物物理化学に魅かれて選びました。
教育実習は面白かったですが、修士学生のとき非常勤講師をして、教員は断念しました。また、化学科の3人で同人誌を作るためにノートに書き溜めていましたが、化学との両立は難しく、定年まで封印すると思い定めました。

大学進学へのアドバイス
上に述べたことは一つの例ですが、少々の才能を発揮するためには環境作りが必要です。大学生活にはそれを実現するための時間、仲間、チャンスがあります。自分の適性の見極めや、何をやるか、今準備すべきことを、タイミングを逃さず実行しなければなりません。将来がわからなければわからないほど、多くを準備しなければなりません。今を楽しみ過ぎないようにしたいものです。未来の楽しみのために。

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磁場中でできたCu(pzdc)(pyz)•ClO$_4$
pzdc: ピラジンジカルボン酸; pyz:ピラジン

私の研究室
准教授と助教と3人で運営しています。挑戦的なテーマを発掘して、新しい方法・装置と物質を用いて世界最先端の研究を行うことを目指しています。必要な装置は設計して手作りします。プログラムも書きます。足らない装置は外注したり、共同研究によって補います。やらねばならないことは何とか実現するように努力しています。教育方針でもあります。研究者である前に人として必要な資質を磨くことを求めています。

私の夢
教科書に載るような発見がしてみたいですね。長く残る現象や学問領域を確立したいものです。

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メソポーラスシリカの六角柱状の穴(6nm)の方向を強磁場で並べることに成功。