素粒子理論分野

素粒子理論分野

「物が何からできているのか?」というのは古の時代から多くの人々が抱いてきた疑問です。素粒子物理学は,物質を形作っている最小の構成単位(素粒子と言います)を探求し,それらの間に働く力(相互作用と言います)を解明する学問です。分子,原子,原子核,核子,という具合に,より小さな粒子が見つかって来ましたが,現在ではクォークとレプトンを素粒子とする,素粒子物理学の「標準模型」と呼ばれる理論によって実験が非常によく説明されています。自然科学である物理学では実験と理論が両輪となって進歩して行きますが,高度に専門化した素粒子物理学では理論と実験の分業体制が取られており,私達の研究室は理論の研究室です。標準模型はこれまでの実験をうまく説明する非常に成功した理論ですが,これが究極の理論というわけではなく,大統一理論・超対称性理論・ストリング理論など標準模型を越える様々な模型が研究されています。LHC実験が開始され(高エネルギー物理学研究室のページを参照),そこでは新しい粒子の発見が予測され,それがまた理論の進展を促すことになるでしょう。

物理学は自然現象を扱うあらゆる科学の基礎となるものですが,素粒子物理学はその中でも最も小さな物(基礎的な物)を扱うので,自然科学の根幹をなしていると言えます。素粒子物理学の研究対象は極微の世界なのですが,その研究成果は,例えば初期宇宙の理論に取り入れられ,現在の宇宙がどうなっているかという予言に大きな影響を与えています。極微の世界の研究が極大の世界の研究につながっているのです。

私達の研究室には,川村・小竹・奥山及び教育特任教授の美谷島が在籍しており,ハドロン物理・標準模型・標準模型を超える理論・場の理論・超弦理論・数理物理などの理論的研究を行っています。配属となった4年生は卒業研究として,先ずは適当な本の輪講を行い,次に各自が選んだテーマに関して調べて卒業論文を作成します。素粒子物理学について更に学びたい・研究したい人は修士課程・博士課程の大学院に進学することができます。

私達の研究室と高エネルギー物理学研究室・宇宙線研究室が協力して,「今週の物理」というセミナーを毎週開いています。院生・4年生だけでなく低学年の人も是非参加してみて下さい。その情報やその他の情報に関しては素粒子論研究室のホームページを御覧下さい。

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小竹 悟
小竹 悟 Link 教授
研究紹介- 物理と対称性- 学問というものは自由なのです。興味を持った話題があればどこまでも進んで行って良いのです。
川村 嘉春
川村 嘉春 Link 教授
未知なる法則・理論を求めて旅しています! 基本的な粒子・構成要素が従う方程式はきっと美しいはずです。方程式の美しさを理解し,感動するのも物理学の醍醐味の一つだと思います。
奥山 和美
奥山 和美 Link 准教授
超弦理論-重力と量子論の統一を目指して- 我々が普段何気無く受け入れている「時空」という考え方は最終的な理論では捨ててしまったほうがいいのではないかということです。

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電子が10gのカブトムシとすると、クォークの中で一番重いトップクォークは次のうち、どれに相当する?

1. 約100gのリス
2. 約84㎏のヒト
3. 約3.5トンのゾウ
3. 約3.5トンのゾウ

ちなみにダウンクオークは約100gのリス、チャームクォークは約26㎏の子供、ストレンジクォークとミューオンは約2㎏のネコ、ボトムクォークは約84㎏のヒト、タウオンは約35㎏の子供に相当します。3種類のニュートリノ(電子ニュートリノ、ミューオンニュートリノ、タウオンニュートリノ)の質量については、アリの脚くらいの重さ(約0.001mg)だと推測されます。
基本粒子はヒッグス粒子との相互作用を通じて質量を獲得したと考えられていますが、「こんなにも質量が異なるのはなぜか?」は大きな謎(質量階層性の問題)で、その解明に向けて現在盛んに研究がなされています。この他にも、素粒子の標準理論は謎で満ち溢れています。

1間(けん)は約180cmで,畳は1間×$\frac12$間の長方形です。
$\frac12M$間×$\frac12N$間($M,N$は自然数,$M$は偶数)の長方形の部屋に畳を敷き詰めます。

初級問題:$M=2$では敷き方は何通り?(例:$N=1$ → 1通り,$N=2$ → 2通り)
上級問題:一般には敷き方は何通り?(例:$M=4,N=3$ → 11通り)
初級問題: $\displaystyle \frac{1}{\sqrt{5}}\Bigl(\bigl(\tfrac{1+\sqrt{5}}{2}\bigr)^{N+1} -\bigl(\tfrac{1-\sqrt{5}}{2}\bigr)^{N+1}\Bigr)$, 上級問題: $\displaystyle \prod_{k=1}^{\frac{M}{2}}\prod_{l=1}^{[\frac{N}{2}]} 4\Bigl(\cos^2\!\tfrac{k\pi}{M+1}+\cos^2\!\tfrac{l\pi}{N+1}\Bigr)$

畳の敷き方と物理学に何の関係があるの?と思われた事でしょう。物体表面への気体の吸着,特に二原子分子で金属表面(平面)を覆う話題を考えると,二原子分子が畳に,金属表面が部屋に相当します。分子などの粒子が非常に数多く存在する系を記述する熱力学をミクロな立場から捉える統計力学では,状態の数を数える事が求められます。状態の数をまとめ上げた分配関数という量を計算すると,それから自由エネルギー,比熱などの様々な物理量が導かれます。統計力学だけでなく私の専門とする素粒子論や数理物理学においても,ある条件を満たす状態が幾つあるのかを数え上げる事が重要となる事がしばしばあります。

初級問題は高校生の知識で解く事ができます。$N=n$の場合に$a_n$通りあるとします。横長の部屋の左側から畳を敷いていくと,右端で最後に敷く畳は,縦にした畳を1枚敷くか横にした畳を2枚敷くかのいずれかなので,$a_n=a_{n-1}+a_{n-2}$ $(n\geq 3)$が成り立ちます(フィボナッチ数列と同じですね)。この3項間の漸化式を初期値$a_1=1$, $a_2=2$の下で解けばよいのです。答は一見$\sqrt{5}$を含む無理数に見えますが,二項定理を使えば$\sqrt{5}$が打ち消される事が見て取れます。上級問題を解くには大学生の知識が必要で.答の式の$\prod$は積を表し($\prod\limits_{k=1}^na_k=a_1a_2\cdots a_n$),$[x]$は$x$を越えない最大の整数を表しています。これは整数値になっている筈ですが,有理数値である事すらピンときませんね(関数電卓で数値計算をしてもらうと確かに整数に近い値が返ってくる事は確認できますが)。吸着時のエネルギーを割り振って分配関数を計算すると,畳の配置と順列を巧みに対応させる事でパフィアンという量で表される事が分かり,あとは大学の線型代数で学ぶ行列式の計算を実行すればよいのです。状態の数を数える際に色々な数学を利用するので,様々な数学を学んでおく事をお薦めします。

水素原子は陽子と電子からできていて、それらの間には静電気力と万有引力が働いていますが、どちらの力が大きい?

1. 静電気力のほうが大きい
2. 万有引力のほうが大きい
3. 2つの力の大きさは等しい
1. 静電気力のほうが大きい

陽子と電子の間に働く静電気力と万有引力を比べると、静電気力のほうが万有引力より圧倒的に大きいのです。そのため、原子の性質を調べるときには静電気力だけ考えれば十分で、陽子と電子の間に働く万有引力は近似的に無視して構いません。しかし、自然界にある色々な力を調べる素粒子理論の分野では、なぜ万有引力が静電気力などのほかの力に比べて非常に小さいのかが大きな謎になっていて、その理由を探ることが万有引力の秘密を解き明かす鍵になると考えられています。