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地質科学科
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地質科学科

カリキュラム改善の経過

応用地質科学コースの設立までの経過

 

1) 社会や学生の意見

(i) 卒業生アンケート

 平成7年の改組は、地質科学科の今後のあり方についてより柔軟に対応できる素地を作ったが、その具体的内容は今後の検討に委ねる形となった.学科ではまず、「地質科学」に対する社会的要請がどこにあるのかを、学科の卒業生へのアンケートによって知る作業をおこなった.アンケート用紙は1999年10月に600名以上の卒業生へ配布され、1年かけて総数145名からの回答を得た.

 アンケートの特徴は、第一に回答者の多くが、大別して地質コンサルタント・資源開発・建設・環境計測などの地質技術者と、小中高教員・大学教員・博物館学芸員などの研究・教育職に就いたものに大別されたことである.この比率は両者の就業実態よりも高率となっており、これら何らかの地質関連の仕事に就いた人たちがアンケートにより協力的であったことの反映である.それにしても、これまでの学科の卒業生の進出分野を示しているといえる.第二に、大学時代に自分にプラスになったこととしては、卒業研究をあげたものが非常に多く、今後もこれの充実が望まれる.第三には、地質の野外実習に関しては、圧倒的な回答が今後もこれを重視することを望むものであった.第四に、あったらよかった科目としては「応用地質学」が断然多いという結果となった.現状では、非常勤講師による集中講義で開講されているのであるが、これの重視が望まれた.ただし、卒業生の職種を考えると、そもそも広い範囲をカバーする「応用地質学」の中のいかなる部分が重要かということでは、たいへん多様であることが予想され、具体的な吟味が必要である.さらに第5は、卒業生が現在必要としている資格を尋ねたところ、技術士が群を抜いて多いという結果となった.なお、2003年現在、当学科およびその前身の学科の卒業生が勤務している地質・資源・建設・環境計測関連の企業名は別表に示す.

 

(ii) 新入生アンケート

 以上に次いで、次は2001年4月の地質科学科への新入生を対象に同年5月にアンケート調査をおこなった.学科に何を望んで進学したかを問うたものである.その結果、卒業後の進路に対して複数回答で答えを求めた結果が以下の表とグラフである.

 

 卒業後の進路希望(複数回答可) 人数

  1. 小中高教員( 6人:18.2%)
  2. 博物館勤務 (8人: 24.2%)
  3. 地質技術者 (13人: 39.4%)
  4. 研究者(大学教員など) (17人: 51.5%)
  5. 地質関連分野以外の企業への就職 (7人: 21.2%)
  6. 地質関連分野以外の職種の公務員 (5人: 15.2%)
  7. 自営の家業を継ぐ予定 (0人: 0%)
  8. その他 (6人: 18.2%) 

1999en.jpg

回答者数 33

 以上のアンケート結果から、少なくとも入学の動機としては、約半数が何らかの研究職をめざしており、一方約4割の新入生は地質技術者を目指しているという結果を得た.

 

2) 外部評価

 平成11年度(1999年)には、理学部はその教育活動に関して外部評価(外部評価とは組織の外部者によって行われる評価のことを意味する)を受けた.総体としては良い評価を受けることができたが、2年生の受けるべき科目は必修が少なく、学生自身が必要な学習を積んでいないという指摘を受けた.その後、3年生向けの科目の一部を2年生対象にするなどの修正をしたが、より本質的には、学生の就学動機に即したきめ細かい履修指導が必要であり、そのための学科の議論を積み上げるのが肝要であるというのが、評価を受けた後の学科内の大勢の意見であった.

 

3) 応用地質科学コースの設立

(i) 経緯とカリキュラム

 以上のような経過を経て、地質科学科の中に「地質科学基礎コース」と「応用地質科学コース」の2つのコースを作ることとなった.そのことにより、学生の就学動機に即した教育を目指すとともに、学科設立当初からの「応用地質学」の分野で活躍する人材を育成する伝統を発展させることを目指した.当初2002年4月にそのコース分けを決定した際には、「理学専修コース」と「地質技術者コース」という名称として、地質技術者プログラムの学習教育目標を学生に公表した.さらに翌年2003年4月にその修正バージョンを作成して公表した.しかしながら、2003年12月にコース名を再検討した結果、「コースの名称は、選択する進路を示すものであるよりも、むしろ学習すべき内容を示すべきである」という考えから、それぞれを上記の2つのコースの名称とすることを最終的に決定した.両コースの内容については、毎年4月に1年生から4年生までの全員に対して行うガイダンスにおいて周知している.また2つのコースのどちらを選ぶかについては、3年生の4月に選択させることにして、すでに2002年春の3年生からそのコース分けを実施している.

 

(ii) 応用地質科学コースの理念

 上述したように設立した応用地質科学コースの理念は以下のようなものである.現在の社会において地質科学を社会に応用するということの目的は「人類が地球環境と共存しながら継続的に利益と安全を享受できるように」することであり、そのためにこそできるだけ多くの「地質現象に対応できる」ことが重要であって、そのための人材を育てることをこのコースの理念とした.そしてそのことを応用地質科学コースの学習・教育目標の前文に書き込んだ(資料:学習・教育目標).

 私たち地質科学科のスタッフが、このコースに臨む決意は以下のようなものである.

 

  1. 卒業研究をこれまで以上に重視する.このことは自立した技術者となるために今の学生が最も欠けている部分を補うことを可能にするからである.何らかのテーマに1年間取り組む過程で、自分の力で解を得るための道筋を考えて年間計画を作成し、自主的に学習しながら仕事を進め、限られた期限内に仕事を終わらせるという一連の作業は、まさに人間改造ともいうべき効果をもたらしている.諸外国の技術者教育プログラムにはこの卒業研究にあたるものはあまり見られない.そのことはそれらの国では、すでに初等中等教育においてそうした教育がなされていることの反映であると考えられ、日本の高等教育を受ける学生には最初から不足している部分であろう.であるからこそ,この面での教育が一層重要である.
  2. 野外実習をこれまで同様に重視して取り組む.信州大学の立地の最大の利点は野外の自然に極めて近いことである.そのおかげで、簡単にアプローチできる範囲内において多くの地質体や地質現象を観察することが可能である.このことはとりわけ日本のような複雑な地質構造の場所においては重要なことであろうと考えられる.このような実地主義を信州大学地質科学科の最大の特色としていきたい.
  3. 「応用地質学」の内容を教室全員で教えていく.卒業生アンケートなどにあるように「応用地質学」を教えることの社会での期待は高い.しかしその内容は極めて広い.学科では非常勤講師による集中講義で「応用地質学」と「資源地質学特論」を隔年に交互に開講している.それらの科目でまず基礎と原理を教え、現場の技術者の話を直接聞くことによる問題意識の醸成を計ることとする.しかしより広範囲の内容については、常勤教員がその担当する講義の中で、応用地質学において問題となる部分について教えていくということにより、この課題に応えていきたいと考えている.例えば、「地質学序説実習」において地滑り地の見学を行う、「地質調査法実習Ⅰ」においてボーリングコアの記載や活断層トレンチ調査現場を見学する、「構造地質学」において岩盤力学の初歩を教える、「火山学」で法規の内容も含めた災害科学の内容を教える、「資源地質学」において資源探査とその社会的重要性を教える、「情報地質学」においてGISの初歩的取り扱いを教える、などという具合に工夫をこらしている.同様にして技術者倫理に関しても専任教員が理解を深めながら教育していくことを基本とする.また、それらのためにふんだんにファカルティデヴェロップメント(大学教員たちの教育・研究能力の開発向上を目指すこと)のとり組みを進めていく.そのとり組みとして、2002年度には全国地質調査業協会連合会専務理事・事務局長の矢島壮一氏による「期待される技術者像と職業倫理」の講演会を全教員参加のもとに行った.また、2003年度には林 義隆氏(太田ジオリサーチ)を講師として「神戸・台湾の震災復興に地質土木技術者として関わった経験」という講演会や、江川良武氏(現日本工営技術顧問、元国土地理院地殻調査部長)の「東信地域の地表・地殻変動」という講演会を企画した.
  4. 国際的なレベルの教育をする.なによりも現場における実習を最大の特徴として、できるだけ多くの地質体・地質現象の見方・調査方法を実地で教育していく.日本のような複雑な地質の場においてこのことは最も重要であると考えており、また、この訓練は多くの外国においても重要である.さらに、日本の石油技術者が火山砕屑岩や花崗岩体から石油や天然ガスを採掘していることなども、できるだけ広い地質学的視野が重要であることを教えていると考えている.日本の初等中等教育においては,自立した立案能力や自学の能力の育成の機会が少ない.地質科学科のカリキュラムでは,コロキウム(3年次)や卒業研究(4年次)において十分な時間を取り,この能力の育成に努力している.