
2006年10月に信州大学理学部地質科学科の卒業生が就職した企業の人事担当者あるいは直属の上司宛に,当学科の教育目標やカリキュラム内容の必要性や,卒業生の到達度評価についてアンケート実施した. 過去5年間の当学科卒業生の就職先の中から,資源・地質・環境関連企業30社を抽出し,16社から回答を得た(そのうち2社では卒業生本人から).
企業が実務上求める能力・素養と,実際の卒業生の能力・素養の評価について,それぞれ3段階で回答を依頼した.
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企業側からは,
・科学的・論理的な思考力
・地層・岩石を見分ける能力
・技術者・研究者としてのモラル・倫理観
・日本語によるコミュニケーション能力
・自発的に継続して学ぶ力
・社会の要請に応えるための問題解決能力
といった能力・素養が強く求められている. これに対して,卒業生が持つこれらの能力・素養についての評価も比較的高く,企業側の求める能力に応えられていることがわかる.
一方,次の項目については企業の要求はそれほど高くないことがわかった.
・国際的に通用する語学力
この項目については,必要性が低いためか,卒業生の能力・素養についての評価も高くはない.
まとめ
全体として,地質・環境関連企業に就職した卒業生は,当学科の学習・教育目標に沿った素養を習得しているようである.語学力についての社会的要求は未だに高くはないが,将来を見据えた基礎的素養として,着実な習得を目指すべきであろう.
当学科の卒業生の印象について5段階評価で回答を依頼した.
当学科の卒業生は,企業側からは
・積極的
・責任感が強い
・個性が豊か
・探求心に富んでいる
・実行力に富んでいる
といった印象・評価を得ている.また,
・チームワークを発揮する
・基礎的な幅広い知識を持っている
・判断力に優れている
といった点も評価されている.一方,
・国際的な視野をもっている
・リーダーシップを発揮する
といった点については,やや評価が低い.
総評
印象としての評価であること,入社して5年以内の卒業生の評価であること,卒業生個人の性格が強く反映することなどの,複雑な要素が介在するため,一概に総評を述べることは難しい.しかし,概ね「責任感が強く,地道だが積極的」な印象を得ていると考えられる.
(3)自由記述から
業種によって,要求の程度に差があるが,地質関連企業からは
・フィールドワーク・野外調査重視の指導を続けて欲しい
・専門知識や価値観をしっかりと習得させて欲しい
との希望が圧倒的に多い. また,環境関連企業からは
・基礎的な教養教育にも価値がある
といった専門教育以外の教育についての要望もあった.また積極的なインターンシップ教育を望む声もある.
概ね,当学科の実施する「野外実習を重視した教育」や,学習・教育目標に謳われている「基礎的知識と教養」「地質科学の総合化能力」を習得させる教育が要請されているようである.
今回の企業アンケートは,当学科の卒業生を通して見た教育カリキュラムの妥当性についての意見・印象を尋ねたものである.回答数は必ずしも多くはないが,地域性を生かした「野外実習を重視する教育カリキュラム」は十分な評価を得ていると判断される.「語学力」に関しては特段の意見がなかった.しかし,「国際的な視野」の育成のための基本的な素養の一つとして,今後注力すべき分野でもある.同時に,「国際的な視野」「リーダーシップ」といった素養を講義や実習内でどのように養うか,は今後議論が必要である.