
1.実施方法
信州大学理学部では,2010年10月に信州大学大学院工学系研究科修了生に,大学院生活での満足度やカリキュラム内容の必要性,到達度評価についてアンケート実施した.これを利用して,地質科学科においても卒業生の意識調査として分析を行った.
実施方法としては,対象者として平成10年~平成14年に工学系研究科に入学した学生(98SA~02SA)及び就職先関係者を選び,卒業時に提出してもらった実家住所にアンケートを送付した.発送数は53通,そのうち未到着(大学に返送されてきたもの)は10通,回答があったものは12通(28%)である.上司など就職先関係者から回答があったものは7通(16%)であった.
2.個別の評価
(1) 修了後の生活と必要とする能力
☆修了後の生活に関して,それぞれ5段階で回答を依頼した.その中でも
・自分の能力を発揮できている.
・信大で学んだこと,経験したことが役だっている
・信大卒であることを誇りに感じる.
という回答に「強く感じる」と評価が多かった.
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☆一方,次の項目についてはそれほど高くないことがわかった.
・「工学系研究科修了」は有利
・信大の卒業生への発信
☆また,どのような能力が現在,特に必要と感じるかについては
・外国語の能力
・論理的思考力
・企画力
・プレゼンテーション能力
・対人関係能力
が特に必要性を感じるという結果になった.
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(2) 大学院で受けた教育について
大学院で受けた教育ついて5 段階評価で回答を依頼した.
当学科修了生は
・教員の講義・研究指導レベル
・研究に関する相談に教員の適切な対応
・学問分野の専門家として優れた教員がいた
・自習的な学習のための環境の整備
といった項目に高評価を得ている.
一方で,
・新しい分野の勉強ができる授業・セミナー
・外国語教育が十分か
・就職・進学の支援
といった点ではあまり良い評価ではなかった.
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また,大学院生活の中で,自身の知識や能力向上に大いに役立っているものについて,回答を得た結果,
・フィールド実習
・修士論文の作成
・指導教官の指導・助言
・先輩・友人からの助言
が特に役立っているという評価を得た.
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(3) 大学院で過ごした学生生活について
大学院で過ごした学生生活が人生・生き方を決める中で重要であったと回答した方がほとんどであり,学生生活に満足であったと感じる方が多かった.
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(4) 工学系研究科の魅力について(自由記述より)
a) 先輩から後輩まで仲が良かった.ゼミにお金がなく研究費は多くなかったが工夫する時間と自由があった.夢がある.
b) 各地方で活躍されている方が多いと感じる.いろんな所で(仕事関係)つながっていることが多く,信大出身であることでよかっかと感じます(つくづく).そこからさらに新しいつながりができたりして広がっていく.
c) 野外調査や室内分析を行うための環境が整っており,思うぞんぶん研究に打ち込むことができるところ.
d) フィールドワークの充実,自由な校風,フィールドワークを重視する点.学生・院生・教官などが気兼ねなく話せる点.大学内だけでなく,社会人と共に活動する場があり,様々な経験を積める点.
e) 大学からフィールドが近いこと.自然が豊かなこと.
f) 地質分野においてフィールドに恵まれている点.
g) 他の学科についてはわからないが,卒業した学科については非常に魅力的な場所だった.研究内容についても担当教官の研究そのものではなく,ある程度自由にさせてもらった.手法・進め方についても手取り足とり教えるのではなく,自分自身で調べ,考えさせ,その上で聞きに行けば丁寧に教えてもらった.なんでも教えてしまうのは大学生を育てるという点ではマイナスに働くと思う.また学科の特色なのか,他の研究室の学生(先輩・同期。後輩を含む)と相談したり,意見交換をすることで偏った知識だけでなく,ある程度広い視野が保てた.学部生から院生(修士・博士)・研究生まで,先生方も含めて気軽に話したり相談できるというのは他の学科・学部だけでなく,他の大学と比べても自慢できる点だと思う.
という回答を得た.
特に,フィールド実習が充実している点,学科全体で仲が良い点に関する回答が多い.
(5) 大学院教育についての意見・改善提案等(自由記述より)
a) 一定の学力レベルがないと修了できないようにしてほしい.就職予備校のようになってほしくない.公務員試験の勉強や就活ばかりしていても意味がないと思う.一方で将来の不安もある.産業連携を積極的に進めて学生の就職につながるようにしてほしい.
b) 集中講義は幅広い知識を得る機会だと思います.推進してほしいと考えています.
c) 集中講義の内容や講師の先生について学生側の希望を反映してくださるなど,ある程度学生の自主性を尊重した教育方針が良かったです.
d) 卒業後にも再度講義や実習に参加できるようにしてほしい.在学中には,現在就業しているOBの実務経験談を学生にもっと聞かせてほしい.
e) 当時は就職活動に関するバックアップはほとんどなかった.現在は改善されていると推察するが,今後も強化していってほしい.信大出身者が社会で活躍することで大学の評価が上がり,良い人材が入学するという良いサイクルを作りあげてほしい.英語およびコンピューターに関する教育が手薄である.Engineerの社会ではほとんど必須となりつつある分野なので力を入れてほしい.
f) これからも自然の中で学べる環境を守ってください.在学中はお世話になりました.
g) 授業で情報プログラミングを全く教えてもらえなかったことが残念です.
h) 義務教育の延長のような大学教育は不要だと思います.学生の意識が最重要だと思いますが,それらを受け入れる?受け流すような大学システムは甘い気がする.職業訓練所である必要はないが,実社会へつながる重要な過程のひとつであってほしい.
g) 少なくとも在籍していたときと同じようにしていれば問題ないのではと思う.学科の様子も少し変わって2つのコースができたりしたようで,わからない部分もあるが特色を出そうとしているのはわかる.小耳にはさんだことでは,入学者の倍率で学科の統廃合をするかもしれないということだがこれに関しては断固反対.倍率なんていうのは数字だけだし,逆に倍率を上げるのも数字のマジックでいくらでもできると思う.本当に必要なのはどんな生徒が入学したか,卒業したか,学んでいるのかということ.論文の数だけで教授査定をおこなったりするのもどれだけの労力がその論文にかかっているのかというところで他の分野とイーブンではない.卒業生が納得できるようなシステムを考えるべきだし,そうでないなら安易に進めないことを希望する.
などの回答を得た.
特に就職活動,また実社会に出てから必要となる能力に関しての意見が多かった.
全体を通じて
大学院を通じて重要であった事柄として,フィールド実習,修士論文の作成,指導教官の指導・助言,先輩・友人からの助言などが非常の多くあげられている.回答数は必ずしも多くはないものの,これまでのフィールドを重視した研究指導が評価を得ていると判断される.その一方で,新しい分野の勉強ができる授業・セミナー,外国語教育,就職・進学の支援に対してはやや取り組みが遅れているといえる.限られたリソースの中で,どの部分に注力すべきかは,様々な意見を聴取して検討する必要があるだろう.
文責;吉田孝紀