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理学部 浅見崇比呂准教授の論文「カタツムリとヘビの進化競争」がNature Communicationsに掲載されました

2010年12月22日

 信州大学理学部生物科学科の浅見崇比呂(あさみたかひろ)准教授、東北大学大学院生命科学研究科の細将貴(ほそまさき)研究員、京都大学大学院人間・環境学研究科の亀田勇一研究員らの研究チームは、右巻カタツムリだけを食べるように進化したヘビに対抗し、食われる側が1個の遺伝子で左巻になり、適応的な種分化を遂げていることを発見しました。



 学術雑誌Nature Communications(12月7日)に発表した研究成果は、Nature News、Scientific American、BBC Earth Newsなどに速報・紹介されました(リンク先参照)。Nature(12月16日)は、Research Highlightsの欄で本件を目玉研究の一つに選んでいます。

 カタツムリは一般に、種ごとに右巻か左巻のどちらかに決まっていて、たがいに内臓の配置も左右反転しています。右巻の交尾器は首の右側にあり、左巻はその逆です。どちらの巻き方向に発生(成長)するかは、たった1個の遺伝子で決まっています。この遺伝子が変化(突然変異)して、逆巻の遺伝子になることがあります。逆巻の遺伝子を受け継いだ子孫の集団は、交尾器の位置も逆なので、周辺の集団とは交尾できなくなり、逆巻の新種になると考えられます。でも、逆巻の変異体は、突然変異で出現した段階で、多数派と交尾できずに淘汰され、逆巻遺伝子を受け継ぐ子孫が増えてゆくとは考えられません。このため、現実に見つかる右巻の種と左巻の種はどのようにして進化したのか-パラドクスをめぐる論争が続いています。東南アジアのカタツムリは、左巻の種が特に多いことで知られていますが、その謎にだれも挑みませんでした。

 

 東南アジアに分布するセダカヘビ類は、カタツムリだけを食べるとされてきましたが、よく調べると、巻貝に圧倒的に多い右巻の肉を抜いて食べるように顎の形も行動も特殊化(適応進化)していました。このため、セダカヘビは、左巻カタツムリをくわえることができず、食われる側は左巻になるだけで命拾いできることがわかりました。この生存上の利益が大きいので、左巻変異体は、たとえ交尾上は不利でも子孫を増やせるのかもしれません。そこで、世界中の左巻種を含むグループと右巻種を含むグループを数えたところ、セダカヘビの分布域では頻繁に、右巻から左巻に進化していることがわかりました。この進化史が正しいことは、分子系統解析の結果からも支持されました。一方、ヘビの側が、左巻をうまく食べられるように左右反転して進化しないのは、餌となる右巻の種がまだ圧倒的に多いからだと考えられます。

 カタツムリの左右を反転する遺伝子が生殖的隔離をもたらす種分化遺伝子であることは、浅見准教授らの先行研究でわかっていましたが、本研究により、世界で初めて、天敵の進化に対抗する共進化と種分化が、単一遺伝子で同時に達成されていることがわかりました。

 

写真上:タイに生息するタクミマレイマイマイ 
  (右側:左巻き、左側:右巻き)
写真下:カタツムリ専食のサザナミセダカヘビ

 

関連リンク先
論文(open access):

http://www.nature.com/ncomms/journal/v1/n9/pdf/ncomms1133.pdf

Nature, Research Highlights:

 http://www.nature.com/nature/journal/v468/n7326/pdf/468870a.pdf

Nature News:

 http://www.nature.com/news/2010/101207/full/news.2010.658.html?s=news_rss

BBC Earth News:

http://news.bbc.co.uk/earth/hi/earth_news/newsid_9264000/9264808.stm

New York Times:

http://www.nytimes.com/2009/11/24/science/24creature.html?_r=1

Biology Letters:

http://rsbl.royalsocietypublishing.org/content/3/2/169.full.pdf+html