医学生豆知識
「仕事を任せられる」ようになるには?
医学生として臨床実習に出るのは,「一人の医師として仕事を任せられる」ようになるための第一歩です。では,どうすれば「仕事を任せられる」ようになるのでしょうか?
前提
①一人前になるにはきちんとしたトレーニングが必要
一説によると,どの業種でもエキスパートになるには「10年・1万時間」の「みっちりしたトレーニング」が必要とされています。みっちりとした,というのは,「簡単な仕事から始め,適宜フィードバックをかけてもらいながら徐々に難しくしていく」ということです。
臨床実習2年,臨床研修2年,専攻医研修3年,サブスペシャリティ2年,諸々のプラスアルファで数年と考えると,この10年という時間は医師にも割と合致するようにも思います。
・・・みっちりとしたトレーニングが積めていれば,です。
②「自主トレ」が必要
上記のトレーニングとは,決して受け身でいるだけではできません。適切なフィードバックを常にくれる指導医がいるわけでもありません。とすれば,自分で課題を見つけて,自己フィードバックをする「自主トレ」を行っていく必要があります。
じゃあどうするか
①指導医をよく観察する
指導医をよく観察して,「なにがどう優れているのか?」を一つずつ考えてみましょう。
次にその優れている点を「知識・技能・態度」に分けて,どういう能力と言えるのか,言語化してみます。こうすることで,自分がどのような能力を獲得すべきなのか,理解できます。
観察する相手は必ずしもはるかに年次の離れた真のエキスパートでなくても構いません。ほんの少し上の研修医であっても,「自分より優れている点」はたくさん有るはずです。
②「RIME」を意識する
医療者の様々な能力は「状況を理解し報告できる(Report)」→「解釈できる(Interpret)」→「治療・管理できる(Manage)」→「人に教えられる(Educate)」の順に上達すると言われています。略して「RIME」です。
①で認めた能力を「RIME」でいうと,自分はどこまでできるでしょうか。Mにあたる能力ができなくても,まずはR(例えば教科書レベルの知識)から修得し,次にそれを実際の患者さんを把握するのに使う・・・といった形で徐々に発展させていけば良いのです。
③ノンテクニカルスキルを磨く
上述の指導医から観察した能力のうちいくつかは,狭い意味での医学的分野にとどまっていないのではないでしょうか。実は,医療がうまくいかないときの原因の多くは,半分以上が,狭義の医学的知識・技術の不足ではなく,社会人一般に求められる能力(ノンテクニカルスキル)の不足であると言われています。つまり,ノンテクニカルスキルを磨くことも,「仕事を任せられる」には必要です。
質の高い業務を遂行するための主なノンテクニカルスキルとして,以下のようなものがあります。
・ただしく状況を認識する
・幅広い情報を収集し,問題解決(意思決定)できる
・チームの意見を収集し,協調する
・適切な情報伝達を行える
まずは指導医とこまめな「ほう・れん・そう」(報告・連絡・相談)を行い,自分は次に何ができるかを話し合ってみてはどうでしょう。
④自分を振り返る
簡単でもいいのでなにかの業務を行ってみて,どうだったでしょうか。
上手くいったところも,そうでなかったところもあると思います。
そして,それはなぜ上手くいった(あるいは上手くいかなかった)のでしょうか。
次に同じ事をするならどうすればいいか,さらにもう少し難しいことをするならどういうところを気をつければ良いか?考えてみましょう。
自分一人で考えても良いですし,指導医や同級生の意見をもらうことも有用でしょう。