医学教育学講座(寄付講座)

信州大学医学部医学教育学講座はJA長野厚生連様からの寄附金で平成27年3月31日まで設立されました。この講座は医学教育センターと一体として運用されました。教授は医学教育センター長が兼ね、専任教員1名が配置されていました。医学教育学講座の前身は医学教育・地域医療学講座です。この講座はJA長野厚生連様の他に、長野県赤十字病院連合会様、社団法人松本市医師会様、長野県医師会様、長野県病院協議会様からの寄附金で、平成17年12月1日から平成22年3月31日まで設置されました。
これらの講座を設置していただいたことにより信州大学医学部の医学教育は多いに発展しました。ご寄付頂いた関係機関と関係諸氏に深く感謝申し上げます。

講座設置の期間 講座の名称 専任教員
平成17年12月1日〜平成22年3月31日 医学教育・地域医療学 准教授 多田剛
(H17.12.1-H22.3.31)
平成22年9月1日〜平成25年3月17日まで 医学教育学 講師 森淳一郎
(H22.9.1-)
平成25年7月1日~平成26年8月31日まで 医学教育学 助教 黒川由美
(H25.7.1-)

ここでは信州大学医学部の発展に大きく貢献した4つの事例Team based learning (TBL)、試験問題作成システム、選択臨床実習、Advanced OSCEについてご報告いたします。

1.Team based learning (TBL)

Problem based learning (PBL)-tutorial は学生の自主的な学習意欲を引き出すことにおいては画期的な学習方法です。この方法で学生の理解度は大講堂でのレクチャーよりも深まります。しかし、これは大学を卒業した学生が日本の10倍以上の教員がいる医学校に入学するアメリカに適した学習方法です。本学では平成21年度までPBL-tutorialを行なってきましたが、平成22年度からはPBL-tutorialを改良したTBLという少人数学習を行っています。
本学のTBLの特徴は次の3項目です。

1)授業の冒頭にミニテストを実施する。
2)大教室で少人数の島を作らせてグループ学習を行う。
3)学習成果を全体会議で発表させて、学生間で相互評価させる。

これらの工夫によって、現在は満足のいく少人数学習ができるようになりました。この成果は第43回医学教育学会(O20-1「学生同士のピアレビューを組み込んだTBLの取組み」森淳一郎)で報告しています。

2.学内試験問題作成システム

医学科では1学年又は前後期毎に、その期間に履修した全科目を網羅した客観試験を実施しています。平成19年度より各教員が学内ネット上でこのシステムに問題を入力すると、学務係が問題冊子として出力できるようになっています。また、平成24年度より教員のために問題毎の識別指数や正答率の他に、出題者毎の平均識別指数や正答率も表示されるようになり、教員の問題作成能力向上にも役立っています。
このコンピュータシステムの開発前は授業に関係するすべての教員から集めた問題を学務係の職員が一つの問題冊子にまとめるたいへん手間と時間のかかる作業でした。この成果は第40回医学教育学会(O23-4「共通試験作成システムのIT化による評価の質向上と教職員の負担軽減」多田剛)で報告しています。

3.選択臨床実習

6年生は前期3ヶ月間に学内外のさまざまな診療チームに一人ずつ配属され、1コース4週あるいは3週間の参加型臨床実習をしています。平成18年にこのような臨床実習を先行実施していた三重大学やその教育協力病院を視察させていただき、本学の実情に合わせた制度を設計しました。その後、県内の30病院にこの新しい臨床実習の目的や仕組みをご説明し、全病院の全面的なご協力の下に平成19年度より信州大学医学部でこの新しい臨床実習を発足させることができました。毎年行っているアンケートでも、大多数の学生や指導する医師からこの臨床実習に満足しているとの返事をいただいています。

4.Advanced OSCE

現在の医師国家試験は技能や態度については正確に評価することはできません。そこで、本学では平成24年度より技能や態度の総括的評価としてAdvanced OSCE (Objective Structured Clinical Examination) を実施します。この実技試験で学生は模擬患者を相手に医療面接と診察を行い、示された症候から鑑別すべき疾患を考え、その診断に必要な検査を選び、その結果から診断と治療方針を示すことが求められます。

これまでの経緯
平成19年より数人の学生有志の協力を得て試行を始めました。
平成20年には兵庫医科大学のAdvanced OSCEを見学しました。
平成22年と23年には6年次全学生を対象に予行演習を行いました。
平成24年度よりこれに合格することを卒業要件としました。