医療機関の皆様へ

地域医療人育成へご協力のお願い

いくつもの盆地で形成される長野県は、全域にわたり300床以下の小規模の病院が点在しています。医学生が学べる機関は多様にあり、これまでの臨床実習でも信州大学医学部の大きな利点として機能してきました。また、県内の医師登録数のうち、信州大学卒業生や研修を受けた医師は6割にのぼり、各病院が信州大学の医学生を育てようという気風が根付いていることは、臨床実習の質を高めていく上で欠かせない要素となっています。
本プログラム「150通りの選択肢からなる参加型臨床実習」は、大学附属病院および県内各地の病院において、「世界標準の臨床教育を行う環境を整備すること」が前提となります。地域に密着した実習を行うことで、地域医療に従事する医師が増加することも、ねらいのひとつです。
ご協力いただく病院の先生方には、どうか普段通りの診療の姿を学生たちに見せていただきたいと考えています。また、学生に可能な限り先生方の仕事の一部を担わせていただくことが、医師への道を歩み始めたばかりの学生にとっては、大きなやりがいや喜びにつながっていきます。
長野県全体で医師を育てる文化が醸成され、地域医療がさらに充実していくよう、医療機関の皆様へご協力をお願いいたします。

参加型臨床実習の原則

  • 「1診療チームに1学生」
  • 「学生が患者を最初に診る」

教育協力病院からのメッセージ

独立行政法人国立病院機構 まつもと医療センター 院長 北野喜良先生

独立行政法人国立病院機構
まつもと医療センター
院長 北野喜良先生

独立行政法人国立病院機構 まつもと医療センター

松本病院、中信松本病院からなるまつもと医療センターは、平成27年に現在の松本病院の場所に統合・新設予定。松本南部から塩尻地域の中核として、さらに充実した医療機関となることが期待されている。
http://mmccenta.jp/index.html

松本病院
長野県松本市村井町南2丁目20番30号
TEL 0263-58-4567

中信松本病院
長野県松本市大字寿豊丘811番地
TEL 0263-58-3121

チームを生かし個性豊かなドクターを育てる

これからの医師の育成について、長野県内でも平成10年頃から、卒後臨床研修ワークショップなどで活発な議論が行われてきました。まつもと医療センターでも、教育学的なスキルを持った指導医を養成すると同時に、医学生のアドクリや研修医の受け入れに積極的に携わっています。
信州大学医学部の新しい臨床実習では、「1診療チームに1学生」という点に注目しています。医学教育の流れも変わってきて、上から下への一方的な指導ではなく、今は「教える側もともにが学ぶ」という認識が広がりつつあります。他の人に教えることは、自分にとって最も理解力が深まるし、考察力がつくんですね。いわゆる「屋根瓦方式」と呼ばれるもので、上級医が研修医に、研修医が医学生に指導する。さらに統括的な指導医がいて、看護師など他のメディカルスタッフと協力しながらチームをつくる。チームの中に若い学生が入ってくることによって、お互いに教えながら学ぶという効果的なスタイルが定着し、病院の総合力も上がるという結果が期待されるわけです。
複数の学生による見学型とは違って、1人で医療の現場に「参加する」というのは、学生にとっては厳しい経験になります。日本は徒弟制の時代が長くありますね。職人の世界など、教える方は「背中を見て学べ」、学ぶ方は「盗んで学ぶ」ということが伝統的に続いてきました。そういう徒弟制がどうかというと、案外いいものだと個人的には思うのです。いまの教育の現場は丁寧すぎるきらいがあって、その中で育つとどうしても打たれ弱くなります。言うまでもなく、医療の現場は大変です。死に直面している患者さんも少なくありません。そういう場で、あまり苦労をせずスムースにやってこれた人にとっては、対応が難しいこともあります。物事がうまくいかないときに医療現場ではどのように解決していくか、そうした経験を積むことも必要かと思います。自分で考えて自分で学ぶという基本的な態度を身につけることが大切で、今後医学教育全体で見直される必要があるのではないでしょうか。
「150通り」という、選択肢の多さから得られるメリットも大きいですね。多様な選択肢があることで、より自分に合った実習先を選ぶチャンスを与えられることになります。人間というのはそれぞれに考え方があって、個性があります。患者さんも一人ひとり異なるのですから、ドクターも個性豊かなドクターがいていいと思うんですね。これまでの教育は均一化する向きが強いですが、そもそも世の中は複雑で多様化しています。医学生もそれぞれ20年ほどの人生経験があるのですから、自分で選択した実習先でさらに自分の個性を磨き、現場に携わるなかで個性を発揮できるような医師が育つことが望ましいと考えています。

地域の総合医療を伝えていきたい

全国的にも、また長野県でも、医学生の多くは附属病院に並ぶ大病院を実習先に選ぶことになります。そこでは、選択した診療科目の中で急性期医療を学ぶことが中心となり、いわゆるプライマリケアがおろそかになりがちということが、長い間指摘されてきました。今回の「150通りの選択肢からなる参加型臨床実習」では、私たちのような中小規模の病院があらかじめ選択肢の中に組み込まれていることが、臨床実習の「質」を変える要因になると考えています。
では、中小規模の病院で学生は何を学べるのでしょうか。これは、地域医療とはなにか、ということにも関連しています。私たちの病院に実習に来ると、特殊な病気よりもありふれた病気が診察の中心となります。また、ひとりの患者さんの急性期だけでなく、リハビリから在宅ケアまで含めた包括的なケアに関わっていただくことになります。地域を支える医療機関では、専門医であっても総合医的な役割をすることが多くなってくるのです。大学ではどうしても専門性ばかりに目が行きがちですが、実際には、日本全国でこのような病院が地域を支えています。学生時代に地域の医療を知ってもらう、長野県の医学部にその機会があるということが貴重だと思っています。
(統括院長 井上憲昭先生)

臨床実習では、受け入れる側の私たちにとってもメリットは大きいのです。地域の病院では特に、同じスタッフが長年働いていますので、次第に高齢化が進み、どうしても活力が失われていきます。人間には教えたい、つなぎたいという気持ちが根底にありますから、若い学生さんが来ることによって、医師や看護師をはじめ、職員全体に活気が生まれ、病院全体の雰囲気が明るくなっていくのが分かります。教えようとすると知識を整理しなければならないので、受け入れる一人ひとりにとって良い刺激になるのです。 これまでも機会があるごとに研修医や医学生を受け入れてきましたが、中小規模の病院では、実習先として認知してもうらうこと自体が難しいという状況が続いていました。地域医療の現状と、そこでのやりがいを知ってもらえるということから、今回のプロジェクトに期待しています。
(院長 安達亙先生)

富士見高原医療福祉センター富士見高原病院(上)統括院長 井上憲昭先生(下)院長 安達亙先生

富士見高原医療福祉センター
富士見高原病院
(上)統括院長 井上憲昭先生
(下)院長 安達亙先生

富士見高原医療福祉センター富士見高原病院

富士山や八ヶ岳をのぞむ絶好のロケーションで地域の医療を支えてきた富士見高原病院。古くは結核療養所として多くの患者を受け入れ、高原のサナトリウムとして全国に知られてきました。
http://www.lcv.ne.jp/~kougen/

JA長野厚生連
富士見高原医療福祉センター
長野県諏訪郡富士見町落合11,100番地
TEL 0266-62-3030(代)
jinji.ka@fujimihp.com
(研修についてのお問い合わせ)