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サイトカインによる免疫システムの制御機構の解明とその破綻によ免疫疾患発症機序の研究
本研究室における研究の一つの柱は、サイトカイによる免疫システムの制御機構の解明とその産生、シグナル伝達制御機構の破綻によるアレルギーや自己免疫性炎症疾患の発症機序の解析であり、主としてノックアウトマウスを用いて研究を行っています。主たるテーマは(お互いに密接に関係していますが)、以下の4つに分けられます。
1. ヘルパーT細胞サブセットTh2の分化機構、特に好塩基球の機能の解明
2. インターフェロン-/シグナル制御機構の破綻としての炎症性皮膚疾患の発症機構
3. NK、NKT細胞の分化のメカニズム
4. 樹状細胞サブセットの分化機構


1. ヘルパーT細胞サブセットTh2の分化機構の解明

 免疫応答の制御の中心であるヘルパーT細胞(Th)はいくつかの機能の異なるサブセットに分けられることが知られています。これらのサブセットのいずれが優位になるかは、アトピーやアレルギーにかかりやすいか、結核菌感染に抵抗性か否か、などを決める極めて重要な要素です。

本テーマに関して、現在進めている計画:

・好塩基球のTh2分化や寄生虫感染におけるはたらきを支える細胞内シグナル伝達機構の解明。特にIL-3シグナルによるIL-4産生誘導とその制御機構、好塩基球活性化制御の分子メカニズムを、様々なノックアウトマウスやT細胞受容体トランスジェニックマウス等を用いて追求します。
・IRF-2ノックアウトマウスに見られるTh2分化亢進機構の解明と好塩基球機能。特に、好塩基球の増殖におけるIRF-2の抑制作用の分子機構の解明。

文献:

Hida, S. et al (2009) Nature Immunol. Published online December 21, 2008. [PubMed]
Hida, S. et al (2005) Blood 106 (6): 2011-2017.[PubMed]
Taki, S. et al (1997) Immunity 6: 673-679. [PubMed]


2. インターフェロン-/シグナル制御機構の破綻としての炎症性皮膚疾患の発症機構

 転写制御因子IRF-2は、非感染状態においても微量に産生される抗ウイルス性サイトカイン、インターフェロンの生体に害をなす作用を抑制しています。この転写因子をノックアウトしたマウスでは、そのため重篤な自己免疫様皮膚炎症が自然発症します。このマウスは、免疫系の恒常性を保つために、サイトカインシグナルの負の制御がどのようにして行われているか、を明らかにする好適なモデルです。

本テーマに関して、現在進めている計画:

・IRF-2ノックアウトマウスで発現量の変化している遺伝子の同定(DNAミクロアレイ法)と機能解析、とくにそれらの皮膚炎への関与の機構の解明
・疾患感受性を支配するmodifier遺伝子の同定(IRF-2とは異なる染色体上の未知の遺伝子)

文献:

Arakura, F. et al (2007) J. Immunol. 179:3249-3257. [PubMed]
Taki, S. (2002) Cytokine Growth Factor Reviews 13: 379-391.[PubMed]
Hida, S. et al (2000) Immunity 13: 643-655. [PubMed]


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3. NK、NKT細胞の分化のメカニズム

ナチュラルキラー(NK)やNKT細胞は、ウイルス感染細胞やがん細胞に対する免疫監視機構に重要な働きを担うだけでなく、NK細胞は異系骨髄移植に対する拒絶にも、またNKT細胞は、様々な免疫制御に関わっている事が知られています。本研究室では、既にIRF-2欠損マウスにおけるNK細胞分化停止ステージを同定しています。

本テーマに関して、現在進めている計画:

・NKおよびNKT細胞の分化およびその機能に関わるIRF-2の機能とその標的遺伝子の探索。NK細胞分化を支える骨髄微小環境の実体解明。

文献:

Taki, S. et al (2005) J. Immunol. 174: 6005-6012.[PubMed]
Ogasawara, K.
et al (1998) Nature 391: 700-703. [PubMed]


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4. 樹状細胞サブセットの分化機構

樹状細胞(DC)は、免疫応答を開始するためだけではなく、その方向性を決定することにおいても極めて重要な細胞種です。DCにはいくつかのサブセットがあることが知られていますが、その分化機構や機能の差異に関しては十分な理解が得られていません。

本テーマに関して、現在進めている計画:

・IRF-2欠損マウスにおける過剰インターフェロ・ンシグナルを原因とするCD4+DCサブセット分化異常のメカニズム解明

文献:

Ichikawa, E. et al (2004) Proc.Natl.Acad. Sci., USA. 101:3909-3914.[PubMed]


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 基本的に免疫システムの制御に関わる研究であれば、特に制限を設けずに積極的にとりあげていきます。個別の現象を解析しつつも常に普遍的な原理に思いを馳せることが重要だと考えます(「部分への執着と全体への意志」ということでしょうか)。素朴な疑問をいつの日にか解決しようと考える諸君の参加を歓迎します。

★当研究室で使用可能な技術、材料など:
cDNAクローニング、PCR、DNAシークエンスの決定、DNA/RNA/タンパクブロッティング、細胞培養、ELISA、蛍光抗体法(フローサイトメトリーを含む)、ノックアウトマウスを用いた個体レベルの免疫実験、モノクローナル抗体など

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