信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会

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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine


いわゆる有病者の歯科治療

6. 心臓弁膜疾患

2000.1.19 畔上 

 ◆定義

弁膜の構造上ないし機能上の異常により、弁膜を通過する血流を障害し、心臓のポンプ作用を阻害するもの。

  ◆障害の種類  

@狭窄症 (僧帽弁 大動脈弁 三尖弁 肺動脈弁)
A閉鎖不全症(逆流)

4カ所の弁の狭窄および閉鎖不全の組み合わせにより、多様な病型が考えられる。実際には左心側(大動脈弁、僧帽弁)の弁膜症が多い。

 ◆症状

   共通する症状は、呼吸困難、胸痛、心不全に伴う食思不振や易疲労感、不整脈など。

◆心疾患を有する患者の歯科治療をするにあたり

 |現症を正確に把握する

衷ヌ状の安定度
燈棊p薬の種類、用量、副作用
箔常生活の状況、制限の有無を把握(*1)
武l工弁移植を受けているか
  生体弁・・・ワーファリン服用の必要がない為、妊娠を希望する女性に移植されることがある。
  機械弁・・・一生ワーファリン服用の必要あり。
  凝固療法中であるカードを持っていることがあるので確認する。

 }救命に必要な器具・薬品を準備しておく

◆治療時の注意点

註S不全、不整脈、狭心症の悪化防止
 ・笑気吸入鎮静法や静脈内鎮静法の併用
 (わずかなストレスでも重篤な状態に陥りやすいため)
 ・局麻は緩徐に行い、使用量は最小限にとどめる
 ・持続的バイタルサインのチェック
 ・できる限り短時間の治療にとどめる

投エ染性心内膜炎の予防
 感染性心内膜炎を引き起こす可能性のある歯科治療

  外科処置          抜歯、膿瘍切開、歯周外科

  歯周処置          ポケット測定

                歯肉縁下歯石の除去

  補綴処置          クラウン形成

                歯肉圧排

                新義歯による褥瘡性潰瘍

  歯内処置          初回の感染根管治療

感染性心内膜炎を予防するための抗生物質の投与方法
 ・原因菌(緑色連鎖球菌・ブドウ球菌)に感受性のある抗生物質の使用。ペニシリン製剤が第一選択となる。
 ・観血処置を行ってる最中に抗生物質の血中濃度がピークに達している必要がある。しかも、高い血中濃度を持続させることが大切。

剥R凝固療法に対する出血対策
・休薬の基準:   PTが正常値(10.0~12.0 sec)の2倍以上であれば休薬
・休薬の期間:   ワーファリン(2〜3日前)   パナルジン (10~14日前)
【必ず主治医の承諾を得ること】
・局所止血処置(局所止血剤、縫合)を確実に行う
・下顎伝達麻酔禁忌(口腔底の血腫→気道圧迫)
・電気メス、腐食剤は使用禁忌

◆治療後                

    術後に発熱・感冒様症状・息切れなどの症状がでたら主治医に連絡を取る   

                

<参考文献> 病態生理できった内科学     医学教育出版社

       高齢者歯科医療マニュアル    永末書店

       有病高齢者歯科治療の実例集   クインテッセンス  


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